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現代における魔法の定義  作者: 揚羽常時
ザ・ワールド・イズ・マイ・ソング
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ザ・ワールド・イズ・マイ・ソング09

 次の日。


 早朝。


 水月はセナに叩き起こされると豪華な朝食を有難味もなく事務的に嚥下して、それから水月とセナはホテルをチェックアウトした。


「くあ……」


 と水月は大きな欠伸をしながらふらふらとクルールのアスファルトの地面を歩く。


「しょうがないわね」


 セナはうんざりすると自販機で缶コーヒーのブラックを買って水月に渡す。


「うむ……。うむ……? 自販機とかあるのかこの街?」


「先進都市だけよ」


「へえ」


 水月は缶コーヒーを受け取って飲む。


 クルールの街を出る頃には水月の中の睡魔もさっぱりと消え失せるのだった。


「さて……」


 と呟いて、


「「装備オン」」


 と水月とセナはボイススキップで武装する。


 水月は装飾装備である着物に簪という男の娘スタイルに腰に帯剣している日本刀の二刀流。


 セナは装飾装備である着物に巨大な戦斧。


「…………」


 水月は結界を張ってピリピリとしている。


「ちゃんと起きてるみたいね」


 そんなセナの皮肉に、


「寝ていいなら寝るぞ」


 水月も皮肉で返す。


 そんなこんなで摩天楼群を背中にして宝石洞窟へと向かって歩いている途中で水月はセナに聞いた。


「その宝石洞窟ってところまでどれくらいかかる?」


「そうねえ……正味二日ってところかな?」


「二日ね」


「テントは無数に持ってるから大丈夫よ」


「宝石洞窟までワープすることは出来ないのか?」


「ワープはあくまで都市限定。面倒くさいけど歩くしかないわよ。それから私の前に出ないでね。宝石洞窟ならまだしも外の世界では他に助けは入らないから」


「どういう意味だ?」


「まぁその辺は経験で語るとしよ……」


 セナは悪戯っぽく言う。


 段々と森が深くなっていき、クルールの摩天楼も見えなくなった後、


「……っ」


 数分もしない内に水月の結界に反応するものが現れた。


 それから少し遅れて水月とセナの感知スキルが敵性信号を鳴らすのだった。


 森を伐採してつくられた山道を塞ぐように現れたのは人型のトカゲ……リザードマンである。


 手に剣と盾とを持ち鎧を着こんでいる。


「この辺のモンスターはそれなりに強力だから気を抜かないでね」


「強力って……どれくらいだ」


「平均レベル20ってところね」


「なら何の問題もないだろ」


「私はいいけどあんたなら即死よ?」


「攻撃を受けなきゃいいだけだろ」


「それはそうだけど……」


 セナは、


「それでも納得できない」


 と表情で語るのだった。


「ともあれ、戦闘は私に任せて。あんたはてきとうに逃げてればいいから。経験値はグルメンに均等に配分されるからその辺の心配は無用よ」


「別に低レベルでも構わんがなぁ」


 水月はホケッと言いながらガシガシと後頭部を掻いた。


「ともあれ、そう言う方針で……っ」


 そして巨大な斧……レリガーヴを振るってリザードマンに襲い掛かるセナであった。


 一撃必殺。


 レベル80のセナにはレベル20の野良モンスターなど十把一絡げでしかなかった。


 ポップするリザードマンの群れを断ち切って道を切り開く。


 水月はというとそんなセナの後ろをついていくだけである。


 バーサーカーと揶揄できそうなセナの狂乱の暴れっぷりに対して、


「なんだかなぁ」


 としか思わない。


 そんなわけで水月はセナに戦闘を任せてチョコチョコと追従するのだった。


 そうしたことが二日続いた。


 当然ながら夜はテントで非戦闘区域を作ってゆっくり休む。


 テントを張ると水月とセナの間にはゆったりとした時間が流れるのだった。


「なぁセナ……」


 水月はセナに問いかける。


 森から小枝を拾い基礎魔法ファイヤーで火を点け、セナの持っていたレッドドラゴン肉を焼いて食べながら、である。


「何よ?」


「この準拠世界……ああっと……」


「ツウィンズ」


「そう。ツウィンズ。この世界のプレイヤーで一番のレベルって誰なんだ?」


「リベアってプレイヤーね。最強の槍リリガーヴを持つレベル92の存在。ちなみに高レベルギルド……マーチラビットの団長よ」


「マーチラビットっていうと先にお前に絡んでたソードマンとアーチャーとマジシャンのギルドか?」


「そ」


 レッドドラゴン肉を噛みちぎりながらセナは肯定する。


「何でお前はソロプレイしてたんだ?」


「前にも言ったでしょ。基準世界……だっけ? とにかく現実世界からツウィンズに巻き込まれた本物のプレイヤーかどうかわからなかったからよ」


「別にいいんじゃねえの? ノンプレでも思考が人間レベルみたいだし……これはお前が言ったがプレイヤーとノンプレの区別なんてつかないんだろ?」


「それは……そうだけど……」


 ムスッとするセナだった。


「でもあんたは確かに現実世界から来た。それが私にとっては大事なこと。それだけは譲れない。だから私はあんた以外のプレイヤーには心を開かないわ」


 そう言ってプイと水月から視線を逸らしてテントの中の寝袋に入るセナだった。


 水月はくつくつと皮肉っぽく笑うだけに留めた。

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