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現代における魔法の定義  作者: 揚羽常時
ザ・ワールド・イズ・マイ・ソング
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ザ・ワールド・イズ・マイ・ソング08

 水月とセナはセナの金で先進都市クルールの中心に立っているクルールゴールドホテルのスイートルームにチェックインした。


 最上階は予約制だったため断念したが、その階下に部屋を取ったのだった。


 当然水道も電気も通っているため高所から見下ろす夜景は見事なモノ。


 街明かりが蛍の群勢のように地平線の向こうまで続いている。


 そして調度品は全てが規格外。


 あまりに贅を凝らした部屋の中で水月は圧倒されるのだった。


「いいのか?」


 水月がそう問うと、


「何が?」


 とセナが問い返す。


「こんなスイートルーム……生半可な値段じゃないだろう?」


「五百万ケトルよ。他のプレイヤーにはわからないけど私にしてみればはした金ね」


 そもそもにして十億ケトルが相場というリターンスフィアを複数個持っているだけでもセナの経済事情が推し量れる。


 そしてセナが言うのだから本当にはした金なのだろうと水月は確信するのだった。


 食事が終わった後、水月は温水プールなみに広いヒノキ風呂に入ってゆっくりと体を温めながら宝石洞窟のマップを確認するのだった。


 マップの道順を確かめながらクリスタルドラゴンまでの最短距離を把握し、ポップするモンスターを調べ上げる。


 と、


「…………」


 途端に沈黙する水月だった。


 理由は簡単。


 水月の視界に新たなウィンドウが現れたからだ。


 それは水月にセナの混浴の可否を問うウィンドウだった。


「チャット、セナ」


 とボイススキップでチャットを行使し、


「水着着用厳守のこと」


 とコメントして肯定をもらった後、水月は許可を出した。


 先の混浴と違い花柄のビキニにパレオを身につけたセナが浴場に現れる。


「どう……かな……?」


 パレオをつまんで水月に問うと、


「よく似合ってるぞ。俺はもうちょっと清楚な方が好みだがな」


 困惑することもなく平静に水月はそう言い、視界内にのみ映る宝石洞窟のマップに視線を戻す。


 そして指をタクトのように振るってマップの検分を始めるのだった。


「もうちょっと恥ずかしがってくれても……」


 セナは不満そうだった。


 水月はその気持ちの起因となるモノを把握していたが、


「面倒くさいから」


 という理由で黙っているのだった。


 セナは水月のすぐ隣に入浴して水月の腕に抱きついて、それから問うた。


「何をしてるの?」


「宝石洞窟の検分」


「共有して」


「マップ、セナと共有」


 ボイススキップで水月はセナとマップウィンドウを共有した。


「何を思ってる?」


「雑魚モンスターについては張り合いが無さそうなこと。それからクリスタルドラゴンの未知性に対する確認」


「ドラゴンブレスは厄介だからね」


「いや。それは正直どうでもいい」


「何で?」


「メニューのルールでも確認したがドラゴンブレスは結局魔法だ。ならアンチマジックは利くしタイミングには問題が無い」


「攻撃型アンチマジックをそこまで使いこなせるのはあんたくらいよ」


「問題は肉弾戦だな。ボスフロアが何処まで広いかが問題になる」


「ああ、広くないと躱せないってこと?」


「逆。狭くないと迎撃できないってことだな」


「意味がわからないんだけど……」


「気にするな。そういやボスキャラはノックバックしないらしいがそれは本当か?」


「本当。ていうかノックバックしたら戦闘にならないでしょ」


「まぁ弓兵についてはそうだな」


「マジで攻撃一点に絞ってクリスタルドラゴンを攻略するつもり?」


「適当にやるさ。それにお前もいるだろう?」


「……っ。まぁ……それはそうだけどね」


 セナの顔が風呂に浸かっていることと関係なく頬を朱に染める。


「後は臨機応変に対処すればいいか。マップ、オフ」


 宝石洞窟のマップを閉じると、水月は話題を変えた。


「そう言えば……」


「何よ」


「レリガーヴのセナって構ってきたチンピラが言ってたな……」


「言ってたわね」


「有名なのか?」


「私はともかくレリガーヴはね」


「なんか特殊な武器なのか?」


「ゲームによくある……いわゆるところの伝説の武器って奴よ。ガーヴシリーズって呼ばれてて五つしか存在しない幻の攻性装備アイテム。レリガーヴはその一つ。最強の攻撃力を持つバトルアックス」


「なるほどね……。伝説の武器か。ま、ゲームの世界だしな」


「あんた……水月は魔術師なんでしょ? 現実世界には伝説の武器とか無いの?」


「基準世界にもそりゃあるさ。俺も前まで一つ保有してた」


「何?」


「大通連って日本刀」


「知らないわね」


「ま、マイナーだからな。所謂マジックアイテムは世界中に存在するさ。ただし魔法検閲官仮説がある以上一般人が目にすることはないがな」


「魔法検閲官仮説?」


「なんでもにゃ。ともあれ、伝説の武器もありはするって事だけ覚えていればいい」


「ふーん」


 何気なさそうにそう言ってセナはギュッと水月の腕に胸を押し付けた。


 しかして水月は平然としている。


「今日は一緒に寝ようね」


「一緒もクソもダブルベッド一つしかなかったろうが」


「別の意味で寝てもいいわよ?」


「勘弁」


 水月は空いている方の手でセナの額にデコピンをした。

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