第6回
ここ数日、停止していた日々は、やはり夢の中だけであって。
普通の人は、ただ昨日を終えて、明日という今日を迎えている。
知らないことは、それだけで幸せなのだろうか。
知らないことは、それだけで罪なのだろうか。
僕には、判断できないけど今手元にあるノートから分かることはある。
「睦月ちゃん・・・。」
「な、なによ。」
強気な、だけどどこか怯えた様子の彼女。彼女も誤りに気づいているのだろう。
「古文を、英語でごまかそうっていうのはやばいよ。」
「ふ、ふん。私は過去に縛られないのよ。」
「いや・・・ハニートーストは絶対、昔無かったよ・・・。」
「ボブの好物なのよ。」
睦月ちゃん・・・。
古文担当でありながら担当のおじいちゃんがせめて英語を知らないほうが幸せなのだろう・・・。
◇
今日の、学校の始まりを告げるチャイムが鳴る。
朝のSHRを始めようと、担当が入ってくる。
僕らの担当は、やたらSHRが長い。ぼうっと窓の外の空に目を向ける。
今日も、いい天気だなぁ。
「浩二さん。先生のSHRが退屈なのは分かりますが、放棄するのは関心しませんよ。」
「あ、すいま・・・せん?」
僕は夢をまだ見ているのだろうか。僕の担当は確か昨日まで年配のおじいちゃんだったはずだ。
それが一日の内に。タイムトラベルしたようだ。見積もりでは40年は若返って・・・「違うわよ。」
睦月ちゃんがつっこみを入れる。
「・・・やっぱり、違うよねぇ。」
「ちょっと何言ってるのか分からないので、浩二さん。後で職員室に来なさい。」
「あ、はい。」
あれ・・・?おかしいのは僕?他の生徒は皆あのおじいちゃんを忘れたかのように。
最初から、あのおじいちゃんは居なかったように・・・。
◇
職員室の、隣の部屋で二人きり。
「それで、あのおじいちゃん先生は、どこに連れて行ったのかな?」
「眠ってもらいましたよ。世界的に。」
新(?)先生は、あっさりとそう言った。
「あぁ、やっぱり存在を歪ませたんだ。」
最初からこんな芸当のできる日本人を、僕は一人しかまだ知らない。姿が変わっているがすぐに分かる。
「えぇ、私がここに居る間は"居なかったこと"になっています。」
「また相変わらずご大層なことをするんだねぇ。」
「まさか、貴方達が昨夜・・・といえばいいのかな。に関わっているとあっては、一大事ですからね。」
人を危険人物みたいに、扱ってくれる。
「危険人物も何も、睦月さんは普通にリスト入りしてるじゃないですか。」
「大丈夫だよー。睦月ちゃんは人を襲ったりはしないよー。」
「えぇ、まぁ。彼女は人を襲いはしないでしょう。しかし、"神殺し"の一つを入手した今は危険度を1つ上げるのも必然でしょう?」
なんで、知ってるんだろう。
「あの魔王に、斧をあげたのは君なの?」
「昨夜までいた魔王・・・アウレリウスという名前の方なんですけど、我々のレッド指定(危険指数:A)だったんですよ。なぜ我々が、渡すのです?」
「それじゃ、一体誰があんな忘れ形見をあげたの?」
と、チャイムが鳴る。
「それは、我々にも分からないですが、一つ分かることは。持って欲しくなかった貴方達が今、持っているということです。」
僕がまた口を開こうとすると。
「そろそろ、シリアスなお話をやめて授業に戻りましょうか。」
「読者も退屈してしまうでしょう?」
誰に言ってるんだろう。そう思いながら僕も、教室に戻る。
駆け込みセーフ。ワンダーフォレストです。
何時も予約してたんですが仕事でぐたーってしてて、慌てて上げました。
次も3日後に会えると信じて。
次予定:12/21