第5期
「貴様、あまりなめるなよ、俺が、ここに来たら、そりゃ俺のもんに決まってるだろうが!!」
魔王が放つ、声に乗せた魔力の塊は、風に質量を持ち、かまいたちとなって、浩二に向かうが、
「傷は、付けさせない。」
桃花が前に立ちはだかり、障壁を作る。
「ふん。それぐらいの事で傷だのと、言われても困る。」
「うるぁああああ!!」
しづるが、お構いなしにエクス・クラインで斬りつける。
「ぐぅおおおぉお!!」
「きゃっ!!」
切りつけているしづるを、叩き落とす。どうにか体を捻って、着地するが痛み分けの形になる。
「よくも、俺の翼に傷つけやがって!!」
魔王は右手から、転移魔法を展開。
大きな片刃の斧を、手に取る。
その斧は、赤色の光を帯びていて、
「あれは、魔武器・・・?」
しづるの知識の中で、呪いを帯びている武器には、確かに周りの魔素を吸う武器があるが、あれは余りにも赤すぎる。私が魔法展開してもあそこまでの光は出せない。
「この街に来る前に、もらった代物だ。試し切りさせてもらうぞ!!」
魔王は、しづるにめがけて斧を投げつける。
しづるは、とっさに桃花が展開したのと同種の障壁を展開するが、隣から、叫ばれる。
「だめだ!!」
◇
時間が、無かった。
しづるちゃんは、あれを呪いの系統の一種だと思ったみたいだけど、そんな優しいものじゃ無い。
あれは、『神殺し』の一種。人ではなく、太古に生き、死んでいった神々の遺産の一つ。
僕は、これから先起こる展開をわかっていたけれど、しづるちゃんを助ける為にしづるちゃんを弾き飛ばした。
斧は障壁を無かったかのように、突っ込んで来て僕の右腕を切りつける。
それを見ていた桃花ちゃんが、瞳孔が開いていくのも確認する。
◇
光が、光が、光が、桃花を包む。
虹色の光が纏い、踊り、桃花を一種の幻想を形にしたかの様な存在へと昇格していく。桃花は、一瞬、光になったかと思うと、浩二の目の前に現れた。
「傷を。」
「大丈夫だよー。」
浩二はそう言うが、腕からの出血は相当量になっている。
桃花は黙って、唇を傷口に当てる。
腕に光が纏い、癒しを、救済を与えてくれる。
「お見事ー。」
浩二の腕はわずか3秒で、元通りになった。傷ついていたことの方が夢であったかのように。
「お前、私のマスターを、傷付けた覚悟は出来ているんだろうな!!」
普段、温厚な桃花は怒りを顕に、光を撒き散らす。その声にすら光は震える。
「よそ見してんじゃねぇぞ!!次は、お前だよ!!」
魔王は、『神殺し』の斧を投げつける。
「エンデ・リリト」
桃花の一口で、影は大きな獣の口となって、斧を喰らう。その神気ごと。
「お前は、なんだ・・・?これじゃまるで「お前が話していい時間は、終わった!!」魔王をも、
獣は喰らう。一口で。最初からそこに居なかったかのようにあっさりと。
「もう、いいよ。」
浩二の一言で、桃花を纏っていた光が空に消えていく。
泡のように。
「ん。魔王、倒したけど。本当に、手、大丈夫?」
「うん、大丈夫大丈夫。」
浩二は右手で、桃花を撫でる。
「しづるちゃんは、大丈夫?」
「え、えぇ。だいじょうぶです。」
「そっか、ならミッション終了だね。」
浩二は、空を見上げる、月は満月を欠けて、なお美しい。
「まとめてんじゃないわよ!!」
睦月が夜に紛れて、もどって来る。
「あんた、私、忘れてたでしょ。」
「ん、私は忘れてた。」
桃花のちゃちゃに 睦月が、ツっこむ
「あんたじゃないわよ!!」
「宿題は、忘れてたけど、睦月ちゃんは覚えてたよー。」
睦月はどこかほっとしたと思ったら、少し気まずそうになって、
「・・・それならいいのよ。私、先に帰るわよ」
「?どうしたんです、睦月さん、一緒に帰ればいいのに。」
しづるの疑問に、
「この街は、止まってたから。宿題しなくていーやって、しないでそのままにしてたんだよー。」
「ん。浩二の分は、もう私がやっておいた。」
「わー、偉いぞー。」
わしゃわしゃと撫でる。
「偉くなんかありません!!自分の宿題は自分で・・・・・・え?学生なんですか!?」
「「うん」」
二人は、ハモって答える。
今宵も更けゆく。
わんだーふぉれすとです!
桃花ちゃん無双となってしまいました。
彼らの学生生活とは!?次話にご期待ください!!
・・・後書きというより少年漫画の次回予告みたいになりましたね。