愛し方もわからずに。
どうしようも無いくらい好きだった。
子どもな俺は愛し方も判らずに君を傷つけてしまった。それなのにごめんの一言も言えずに……
今なら言える。
「今までごめん。渚のことずっと好きだった」
でももう遅くて。
君は別の男と付き合いだした。
切なくて。
悲しくて。
苦しくて。
俺の中で後悔だけが残っている。どうしてあの時もっと素直になれなかったのか。子どもだった自分が憎かった……
ーー△ーー△ーー△ーー
渚とは小学校の頃から仲が良かった。あの頃はただ純粋に渚が好きだった。でも中学に入ってすぐ、渚がいじめられだした。最初は心配で、無くなったものを探してあげたり悪口を言われた渚を励ましたりしていた。
俺を頼ってくれるのが嬉しくて、俺だけの渚でいてほしくて。
そんないじめ、いつでも止められた。でも止めたくなかった。
いじめられていたら渚は俺の下から離れていかないと思ったから。
そのうち俺が渚を好きだと噂が流れた。渚に知られるのが恥ずかしくて、
「あんな奴好きじゃない。いじめられてなく姿を見るのとても楽しいよ」
そう誤魔化した。
いじめていた奴は楽しそうに笑い俺の肩に腕を回した。そいつと仲良くなり親友になった。
すべては好きという気持ちがばれないために。
中学校を卒業し高校へ入った。
渚と俺と親友は同じ高校へ進んだ。
そこでも渚へのいじめは続いた。あの転校生が来るまでは。あの転校生が来て渚は変わった。いつもは決して泣かなかった渚が涙を流した。
ああ、俺は何をしているんだろう? 誰よりも大切な渚を泣かせて。自分のことばかりを考えて。本当にばかだな。
「やっと気がついたか」
不意に後ろから声がして振り向くとあの転校生がいた。
「なんのことだ」
「素直にならなければ……まあ、時期に判るさ」
ふ、と唇の端を上げ笑った。
風がふき、気がつくとあの転校生は何処かへ消えてしまった。
ーー△ーー△ーー△ーー
それから数ヶ月。
渚に彼氏が出来たらしい。いつ告白しようと悩んでいた矢先の出来事だった。相手はなんと俺の親友。
急いで俺はだめもとで告白をした。渚は困った顔で俺をみた。
「冗談に決まってるだろ? 俺が渚を好きなわけないじゃん」
そういうしかなかった。そして渚は安心したように微笑んだ。
ある日渚が泣きながら俺の下へ来た。どうやら彼氏が浮気をしたという噂を耳にしたらしい。泣きながら事情を話す姿をみてこのまま別れてしまえばいいと密かに願う。
渚と別れて親友の下へ向かった。
「どうしよう。そんな気は無かったんだ……友だちの家で酒飲んで酔った勢いで女と寝ちまった。渚、きっと許してくれないよな」
なんだお前ら、ちゃんと両想いなんじゃん。すれ違ってるだけか。
「渚はそんなことで怒ったりなんかしないさ。大丈夫。ちゃんと話し合えば判ってくれる」
心にも無いことをいう。そんな俺にありがとうと言い、渚の下へ急いで行った。走っていく親友の後ろ姿をみて胸が苦しくなる。
知らないうちに涙が頬を伝い地面に後を残す。
「ははっ、情けねぇ……」
数日後仲直りが出来たと二人から報告があった。
もう我慢の限界だ。俺は渚を呼び出した。
「どうしたの急に?」
無邪気に笑う渚の唇を塞いだ。急なことに渚は目を開き驚いていた。少ししてやっと状況を理解した渚が俺を力いっぱい突き飛ばした。
「どうして?」
涙を目に浮かべて訊ねてきた。
やっぱり俺じゃあ泣かせることしか出来ないんだ……親友が羨ましい。愛しい人をすぐに笑顔に出来る親友が。
「好きだ、今更だけど……今まで傷つけてごめん」
「また冗談でしょ?」
そういい笑う。俺は無言で首を横に振る。それを見て笑顔が固まる。
「もう答えは判ってる。俺はアイツの代わりにはなれない。俺のことちゃんとフッてよ」
そう言って無理矢理笑う。渚はそんな表情の俺に冗談ではないことに気付いたようだ。
「……優介はいつも私の中でスーパーマンみたいな存在だったよ。いつもいつも私のピンチを救ってくれたね。自分でも気付かないうちに優介に惹かれていったんだよ。でもね……哉太と会って、私は優介よりも哉太が好きになったんだ。今は優介のこと友だち以上には見れません……ごめんなさい」
俺たち両想いだったんだ。俺に勇気があれば、今とは違う未来だったのかな……?
「ありがとう」
渚の頭を優しく撫でた。渚はじゃあ、もう行くねと言い出て行った。
ああ、あの時アイツが言っていたことはこのことだったのか……
ん? アイツって……誰だったっけ? まあいいか。
頬と伝っていく雫がアスファルトにシミを作っていく。
「俺いつからこんなに泣き虫になったんだっけ? まったく……情けねぇ」
最後まで読んでいただいて、ありがとうございました。
誤字・脱字がありましたらお手数ですけどご報告宜しくお願いします!
平成23年5月4日(水)
本麻 香