#1
─かつて、私達は1つの生命だった。
─かつて、私達は完璧な存在だった。
─かつて、私達は唯一無二だった。
だけどある日、私達はバラバラになった。
原因は、わからない。
2つから始まり、10、100、1000、10000と、私達はバラバラに砕けた。
砕けた私達は1つに戻ろうとしない。
それぞれ個として完成してしまったから。
個として意識の芽生えた私達は、もう1つだった頃の名残はない。
これが、この世界の形。
気付けばここにいた私は、そう教わった。"この世界"に。
地面に浮き出たその文字は、明らかに人工的な物だと思えない。
宝石のように煌めく色とりどりの地面からそんなものが浮き出るなんて、流石に有り得ないだろう。
「わ、たし、は...」
ただ、そんなことより。
どんな未知な物よりも。
私には、歩んでいた世界があった。
仲のいい人がいた。
恋人が...いた。
「ど...して...?」
あの世界で、幾度も死を経験した。
その度に私は"戻って"やり直した。
思い出せ、最後に見た光景を。
考えろ、今ここにいる原因を。
「あ───」
ここにいる前、最後に見たのは...最愛の人の死。
未来を決意して、どんな時だって二人でなら。そう誓った瞬間に殺された愛しい人。
「...まさか、絶望したから別の世界に飛ばされたとでも?」
流石に、有り得ない。
いや...有り得ない方がいい。と言った方が正しいだろう。
もしそれが本当なら。
いや、本当でなくても...
「今すぐ、消えてしまいたい。」
あの人の後を追って。
あの人ともう会えないなら私に生きる意味はない。
「どうしたの?」
目の前から女性の声がした。
反射で前を向くが、目の前には誰も_そう思った刹那。
ふわりと『天使』が舞い降りた。
「あ、れ?貴方は...核を持たない生き物、なの?」
上から言葉が放たれる。
けれど、私には返事をするような余裕も気力も無い。
ただ、黙りこくるだけ。
「言語がわからないの?」
気にかけてくれているのはわかっている。
だが、何も出ない。
言葉が見つからない。
「…大丈夫?」
背中をさすって、顔を覗き込まれるが、今は誰の顔も見れる気がしない。
誰を見ても最愛の人しか思い出せそうにない。
だから、目を瞑って必死に顔を背ける。
「ここにいたら、危ないよ。」
心配そうな声が私の耳に届くと同時に、地面が…割れた。
ピシ…ミシミシミシッ。ガラスがひび割れるときのような音を奏でて丁度私の居た場所から崩れ落ちる。
「あぶ、ないっ!」
このまま落ちていってしまおうか。そんな事を考えた私がいたのに、いつの間にか私は浮いていて。
あとから遅れて女の人に抱えられて飛んでいると理解する。
「あ…」
女の人を見ると、ふわふわのサーモンピンクの髪に、金色に光る瞳を持っていて。
なによりも特徴的なのは今必死に地面から浮いて飛んでいる純白の翼。
それは、片方しか無かった。
『片翼の天使』_そんな存在が私を護ってくれていた。




