第3話 異世界の扉を開けて、ニホンに到着!
次の瞬間、リリィはまるで宇宙の中を漂うような感覚に包まれた。
次元の壁を越えたその先には、見たことのない光景が広がっていた。
「うわぁ……これは……本当に別の世界!?」
目の前に現れたのは、チラシに描いてあった人間の世界の風景。
それが紙で見るよりずっと分かりやすく伸びている。
見渡す限り高層ビルが立ち並び、空には飛行機が飛び、電車が走る街が広がっていた。
「ここがニホン、だ……!」
未知の文明、未知の土地、そしてチラシに僅かに残っていたのと同じ空気。
リリィは興奮を抑えきれず、しばらくその場で立ち尽くしていた。
そして、その瞬間に気づく。
「……あれ、あの建物は……もしかして、万博の会場?」
導かれるように歩いていく。
彼女の目の前には、巨大な万博会場が見え始めていた。
まさか自分がこの世界に来るなんて。
リリィは胸が高鳴るのを感じながら、会場に向かって進んでいく。
「この世界には、どんな未来が待っているんだろう!」
リリィは異世界に足を踏み入れ、新しい冒険が待っていることを確信した。
歩きながらリリィは夢中で周囲を見回した。
目の前に広がる景色に、エルフの村では絶対に見られないような物がたくさんあった。
通りには、広告の看板があちこちに立ち、歩いている人たちは不思議そうにリリィを見ていたが、リリィはそんなことにも気づかず、興奮しっぱなしだった。
「これがニホン……!? すごい! ピカピカしてる! 本当に、まるで夢みたいだよ!!」
リリィは目をキラキラさせながら、大きく息を吸った。
今までの人生で、これほどまでにワクワクしたことはなかった。エルフの村では感じたことのない「新しい世界」の息吹を感じて、心が踊る。
リリィはその道中で、日本の街並みを新鮮な気持ちで眺めていた。
人々の服装、車のデザイン、そして道に響く音。全てが新しい。全てが魅力的だった。
あまりにも珍しそうに見ていたからだろうか、すぐ近くから声を掛けられた。
「お姉さん、何してるの?」
初めて異国で声を掛けられたのに不思議と言葉が分かる。これもあのチラシに残っていた魔力の影響かもしれない。
リリィが驚いて振り向くと、小さな女の子がこちらを見ていた。
その子は、リリィの奇妙な服装や姿に驚きつつも、好奇心旺盛に近づいてきた。
どうやら話すまで離れてくれそうにない。ここは思い切って行動だ。
「えっと、わたし、ニホンは初めてで……ここはニホンで合ってるんだよね?」
話しかけると女の子は目を輝かせて、リリィを見上げた。
「うん! ここは日本の大阪・夢洲だよ! お姉さん、エルフの人? すごい耳だね!」
リリィはその言葉にびっくりして、自分の耳に手を当てた。
長い耳――エルフ特有の耳が出ていることを改めて実感し、少し恥ずかしくなった。
「えっと、うん、エルフの一族だよ! ここに来るために次元を越えたんだ。万博っていうところに行きたくて!」
「次元を越えて万博に来たの!? すごい!」
女の子は大きな目をさらに大きくして驚いた。
「お姉さん、すごいんだね! それで、万博はどこから回るの?」
リリィは少し考えた後、顔を明るくして答えた。
「うーん、そうだなぁ、具体的には決めてないんだけど、未来の技術とか、すっごく楽しいって聞いたから!」
「それなら、おすすめの場所を教えてあげるね! あたしは全部見たいんだけど、お母さんが言うには、万博はすごく混んでるから無理なんだって。良かったら後で感想を聞かせてね!」
リリィはその言葉に心が弾んだ。
「教えてくれてありがとう! おすすめの場所を参考にしてみるね!」
リリィは手を振る女の子と別れ、不安も楽しさも入り混じった気持ちで、万博会場に向かう道を歩き始めた。
「これが、ほんとうに未来ってやつなんだ…!」
リリィは心から、未来を感じられる世界に来たことを実感し、わくわくしていた。
そして、ついに到着した。
目の前には、広大な万博会場が広がっていた。
周囲には、色とりどりのブースや未来的なデザインの建物が並び、エネルギッシュな雰囲気が漂っている。
「わぁぁぁ……これが、日本の万博かぁ!」
リリィは目をキラキラさせながら、周囲を見回した。
彼女が目にした光景は、エルフの村とはまったく異なる、全く新しい世界。
空飛ぶ車やハイテクなロボットが行き交い、人々が笑顔で歩いている。
「これが……本当にニホンの世界なんだ……すごい!」
興奮気味に歩いていると、突如、前方からあの不思議な花の生物が現れた。その名はミャクミャク。
ミャクミャクは大阪万博の公式マスコットで、その怪しげな風貌から親しげな足取りで、リリィに向かって歩いてきた。
「にゃにゃ~♪ お姉さん、こんにちは~!」
こいつ喋れるのか。怪しいモンスターのように見えるのに。
リリィは驚きの声を上げ、目の前のミャクミャクを見つめた。
「え、えぇっ!? こ、これは……?」
もしかして着ぐるみ? と思ったがその想像はすぐに払われる。
ミャクミャクはその顔ににっこりと笑みを作って、赤い花の房を振りながらリリィに近づいてきた。
「にゃんだ、あなた、エルフさんかな? すっごい耳してるにゃ~!」
リリィは少し戸惑いながらも、嬉しそうに答えた。
「う、うん、わたしはエルフのリリィ。次元を越えて、ここの万博に来たんだ!」
「にゃー、すごい! それじゃ、万博の案内が必要にゃのか?」
「うん、実はちょっと……おすすめは教えてもらったんだけど、どこから見て回ればいいのか、やっぱり全然わからなくて……!」
ミャクミャクは満面の笑顔で、お尻をふりふりしながら言った。
「それなら、私が案内するにゃ~! お姉さんにとって、この万博はとっても楽しめるにゃ! いろんな未来の技術がいっぱいだよ! 見たことないものもたくさんあるし、絶対に面白いにゃ!」
リリィはその言葉に胸を躍らせた。
「ほんとうに!? でも、迷惑じゃない?」
「大丈夫にゃ。万博を楽しめるように案内するのがミャクミャクの仕事にゃ~」
「ありがとう、ミャクミャク! じゃあ、早速一緒に回ろう!」
ミャクミャクはリリィの手を引きながら、万博会場を案内してくれた。
リリィは歩きながら、次々に目を奪われるような展示物やテクノロジーに興奮し、目をキラキラさせて周りを見渡した。
「これ、なんだろう……? すっごく光ってる! あ、あれは何かを作ってる機械かな?」
「にゃんにゃ~、あれは新しいロボット技術の展示だにゃ! こっちには、未来の家電や、もっと驚くべきものがたくさんあるにゃ!」
リリィはミャクミャクと共に、万博会場を楽しみながら歩いているうちに、ふと気づいた。
「ミャクミャク、これ、全部本当に現代のニホンの技術なの? 魔法じゃないの?」
魔力は感じないが魔法としか思えない技術もある。
ミャクミャクは、にっこりと笑って答えた。
「もちろんにゃ! これからの世界を作るために、新しい技術やアイデアが集まってる場所だから、不思議に見える物もいっぱいにゃ! ここは技術の祭典にゃ!」
リリィはその言葉に深く頷き、さらにワクワクした気持ちを抑えきれなかった。
未来の技術、そしてミャクミャクとの冒険が、これからどんな展開になるのか、楽しみでたまらない。