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第2話 次元を超える発明

「やっぱり! チラシから次元を超える微細な魔力の残滓が出ている!」


 リリィにとっては未知の魔力だが、だからこそ自分たちの知っている普通の魔法とは次元が違うものだと理解ができた。


「それにこの匂い、これが異世界ニホンの風なのだろうか」


 リリィは万博のチラシを手に取って、不思議そうにその紙を近づけたり遠ざけたりして眺めていた。

 普通の人間の印刷物から魔力を感じ取るなんて、エルフの才能を持つリリィだからこその特技だ。


「それにしてもこの目の多い花のような生物はなんなんだろう。一見不気味なように見えるけど人懐こそうに招いているようにも見える。お前が私を招いているの? 行けば分かるか」


 リリィは起き上がると小さな机の上に散らばっていた魔法の材料と、冒険に使う道具を広げた。

 手元の道具を使ってこの「魔力」を引き出す準備を始める。

 バラバラに散らばった部品から、目を光らせて組み立てるのは、リリィが得意とする発明の力だ。


「ここにチラシの魔力を増幅させて、次元を超える装置を作る……!」


 その発明は、まるで一見不可能なことのように見えるが、リリィには確信があった。

 魔法と発明の融合。これはエルフの里に伝わる技術でもあり、彼女の得意分野でもある。


 リリィは細心の注意を払い、チラシの端に残された微細な魔力の痕跡を魔法の結界装置に組み込んだ。

 その魔力を吸い込ませるように、発明の機械がピリピリと振動を始める。


「よし、動け! お前の来た世界へ戻る通路を開け、装置よ!」


 瞬間、発明の機械が輝きだした。

 リリィが手をかざすと、光の渦巻きが広がり、周囲の空間が歪んでいくのが感じられた。

 次元の壁を越えるための、魔法の「扉」が開こうとしていた。


「いける……! これで、別世界の『ニホン』に行けるんだ!」


 リリィがそう歓喜の声を上げ、光の渦巻きが広がった瞬間。

 エルフの村の長老たちがその異変に気づいた。


「な、何かが起ころうとしている……!」


 長老が、村の中心に響く魔力の波動に敏感に反応した。

 その音と光は、普通の魔法の儀式ではない。

 異世界への扉を開けるような力を、村のエルフたちはすぐに察知した。


「これは……次元を超えようとしているのか?」


 他の大人たちも集まり、リリィの小屋へと駆けつける。


 その頃、リリィはすでに装置の中で暴れる光に包まれ、次元の壁を超える準備を整えていた。

 それはあの不思議な花の生物の招きなのだろうか。リリィには不思議と恐れの感覚は無かった。


「凄い本当に出来ちゃった。今会いに行くからね!」

「待って、リリィ! 今すぐその装置を止めなさい!」


 踏み出そうとした瞬間、突然声が響いた。

 リリィは驚き、装置の光が一瞬だけ揺らぐ。振り返るとそこには村の長老たちが立っていた。


「リリィ、何をしている!?」


 エルフの一人が、厳しい目で彼女を見つめる。

 リリィは装置の前に立ち、少しだけ躊躇うものの、すぐに答える。


「私は、未来を見に行くんだ! 人間の世界、"ニホン"ってところ! 万博っていう、すっごく楽しい場所があるんだって! 私、行ってみたい!」

「それは危険だ、リリィ!」


 もう一人の大人が声を荒げる。


「魔法や発明の力を使って、次元を超えるなど、古来のエルフの掟に背く行為だ!」


 リリィはその言葉に少し驚いたが、すぐに決意を固める。


「でも、私、森の中でずっと何も変わらない毎日を送るのは嫌だった。人間の世界には、もっと素晴らしい可能性が広がっているんだよ!」

「可能性?」


 別のエルフが冷ややかな目を向ける。


「お前が行こうとしているのは、エルフの文化から遠く離れた場所だ。エルフの存在を忘れ、伝統を捨てることに繋がるかもしれない」


「でも! 私、エルフの力を持っていることは誇りに思っている! でも、未来の技術、世界の可能性、いろんなものを見たい! それに、戻ってきたときには、もっとすごい発明を作ってみせる!」


 リリィの言葉に、長老たちは一瞬黙り込んだ。

 その後、深いため息が漏れた。


「リリィ……お前の情熱はわかる。しかし、エルフの里を離れ、人間の世界に足を踏み入れることには、大きなリスクが伴う。それを理解しているか?」


 長老の深い慈しみの言葉にリリィは少し考えた。


「もちろん、リスクがあることはわかってる。でも、私はそれを越える力を信じている!」


 長老たちは言葉に詰まり、しばらく静かにリリィを見つめた。

 そして、最年長の長老が静かに口を開いた。


「リリィ……お前がこれほどまでに決意しているのなら、私たちももう止めることはできない。しかし、次元を超える力は、そう簡単に扱っていいものではない。行くなら、気をつけて、戻ってきたときには何かを学んできてくれ」


 リリィの顔に、決意と期待があふれた。


「ありがとう! 絶対に戻ってきて、みんなにすごいものを見せてあげるから!」


 装置の光が再び強くなり、長老たちの言葉を背に受けながら、リリィは装置に飛び込んだ。

 その瞬間、光の扉が開き、次元を越えたリリィは新たな世界、ニホンへと足を踏み入れる。

 そこでは何が待っているのだろうか。リリィの冒険が始まった。

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