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ひろしのだるまさん魔改造記  作者: 蘭鍾馗


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2/5

【魔改造の2】だるまさんが浮かんだ。

わしは、だるま弁当のカラ。

この物語は、蜜柑山みかんやま家の一人息子ひろしが、わしをいろいろと魔改造まかいぞうして面白がるという話じゃ。つまり、冒険ぼうけんするのは、いやさせられるのはわしじゃ。ひろしではないぞ。

「あなたが落としたのは、この金のタイヤですか、それともこの銀のタイヤですか?」


 秋晴れの空をながめながら公園の池にうかんでいるわしに、こんなたわけたことを言うのはだれだ。


「どっちでもないわい。わしが落としたのは黒いゴムタイヤじゃ。」

「あなたは正直なだるまですね。では、あなたにはこの金と銀とゴムの全てのタイヤを差し上げましょう。」

「いらんいらん。金のタイヤなんか取り付けられたら、ガタガタゆれてわしはこわれてしまうわい。」


 ……………


 はっ。


 ゆめを見ておった。

 だが、秋晴れの空だけはゆめではないようじゃ。わしは今例の公園の池の水面にうかんでおる。ひろしがラジコンバギーを池のふちの石にぶつけて、わしはそのまま池にダイブさせられたのだ。おかげでシャシーはバラバラになり、プラ板のゲタははずれて飛んだ。重いシャシーはしずんで、わしはプラ板のゲタといっしょに、こうして池の水面にういて、秋の空をながめておる。

 あーあ、どうするんじゃ父ちゃんのラジコンバギー。けっこう高かったと思うぞあれ。


 そのうちに、虫取りアミがわしの方へのびてきた。これでわしをすくうつもりか。気をつけろよひろし。池に落ちると大変なことになるからな。

 池からなんとすくわれたわしは、リュックに入れられて、ひろしといっしょに家に帰るする。ひろし、観念かんねんして父ちゃんにおこられて来い。


 だが、これくらいでおとなしくなるひろしではない。


「ホバークラフトを作る。」


 今、なんと言った?

 ひろしは、手に発泡はっぽうスチロールの小さな箱をもっておる。これに船をうかすプロペラと前に進めるプロペラを2つずつつけて、ホバークラフトにしてしまうつもりらしい。今回はわしの出番はなさそうじゃな。良かった。


 発泡はっぽうスチロールの箱をひっくり返して、底のところにに2つ丸いあなを開ける。そして、そのあなに、船をうかすためのプロペラをつけたモーター下向きに取り付ける。モーターはあなのまん中に取り付けることになるから、取り付け方にちと工夫がいるぞ。ひろしはペットボトルの底の部分を使ってうまくとりつけた。なかなかやるではないか。


 で、船を前に進めるプロペラはどうするか。ひろしは箱の後ろのはしに、プラ板でコの字のステーを作ってとりつけた。前の方を少しななめにカットすると、飛行機の垂直尾翼すいちょくびよくみたいでかっこいいではないか。で、電池は箱のまん中の左右に置いた。今回はラジコンではないので、走らせたあと回収(かいしゅう)できるように、細くて長いひもをとりつけた。


 さて、わかる人にはもうわかるじゃろうが、このホバークラフトには、大きな欠点が2つある。


 ひとつは発泡はっぽうスチロールの船体じゃ。このままだと、わずかな波でも水面との間にすきまができてしまい、せっかくプロペラで船体のなかに送り込んだ空気がもれてしまう。

 もうひとつは、後ろのはしとりつけた、船を前に進めるためのプロペラ。モーターと合わせるとけっこう重いので、船体が後ろにかしいでしまう。で、前の方がういて、やっぱり下から空気がもれることになる。

 父ちゃんに相談しろひろし。父ちゃんはああ見えてエンジニアじゃ。


「お父さん、ホバークラフトがうまく進まないんだけど。」


 父ちゃん、もちろんひと目でこの船の欠点を見ぬいた。

「いいかひろし。ホバークラフトは船体の中に送りこんだ空気の圧力あつりょくで浮くんだ。だから、水面と船体の間から、できるだけ空気がもれないようにしないといけない。ひろしのホバークラフトには、スカートがついてないだろ?」

「スカートって、女がはくあれか?」

「ひろし言い方。いやちがうけど、形がにてるからそうよぶんだよ。ビニール袋を10センチくらいのはばに切って、発泡はっぽうスチロールの箱のふちに、ぐるっと一周、すきまなくはりつけてごらん。そうすると波が来ても空気がもれにくくなる。」

「うん、さっそく作る!」ひろしはさっそく自分の部屋にもどろうとする。

「まてまて。もう一つやることがあるぞ。」

「ひろしの船は、船を前に進めるプロペラが後ろのはしについてるだろう?それだと水にうかべた時、後がしずんで前がういてしまう。そうすると前の方からまた空気がもれてしまうぞ。」

「どうしたらいいの?」

「プロペラを船のまん中にとりつけてごらん。」

「えーかっこ悪いよ。どっちが前かわかんなくなるじゃん。」

「じゃあ、前の方には運転席をつけてみたらどうだ?ただし重たいのはだめだぞ。つけても真ん中が一番重くなるように、何か軽いものを考えてごらん。」

「うんわかった。ありがとうお父さん。」


 何か思いついたようじゃな。

 部屋にもどったひろし、いきなりわしをつかんで、船の前の方においた。

 おい?

「軽いもの!」

 わしかーい!

 だが、まっすぐに立てると何ともかっこ悪いし、それなりの重さにもなる。そこでひろしは、フタだけをつけることにした。それも、推進用プロペラの取り付けステーにななめに立てかけるようにしてとりつけた。もちろん目の赤いLEDは光らせるが。


 うん、たしかに前後の区別はつくようになった。かっこうは、まあなんとかさまにはなった。

 でも、わしはまた走らされるのか。今度は大丈夫じゃろうな?


 さて次の日、試作2号の進水式しんすいしきじゃ。


 プロペラのスイッチを入れ、わしの目のLEDもスイッチを入れて、公園の池にうかべる。

 今度はちゃんとうき上がった。そして、前に進む。

 大成功じゃ。


 赤い目をチカチカさせながら、何やら恐ろしげでこっけいなホバークラフトが走る。


 走る。


 走る……


 そろそろ池のはしに着くんじゃが……


回収(かいしゅう)用のヒモ、つけ忘れてたー。」


 なんじゃとおおー………。


 どーん。



 ……………



「あなたが落としたのは、この金のプロペラですか、それともこの銀のプロペラですか?」


 秋晴れの空をながめながら公園の池にうかんでいるわしに、こんなたわけたことを言うのはだれだ。























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