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ノノカ誘拐事件

(あの人達!! 火をつけてるの!? こんな空間で!? まずい!! どこか、出口を見つけないと!! 通路はもう歩けない……水中から抜け道を!)


癒奈とノノカは、兵士達が通るたびに水中に潜って隠れていた。

しかし、気がつけばふたりが走ってきた通路はオイルにまみれ、天井まで届く炎に覆われていた。


「ケホッ、ケホッ!! すごい煙……! 空気の流れがないから充満してる!! 息をするたびに肺が……!」


「ママ! ……ママ!! ケホッ……あそこの下、水が流れてるところが……あったよ……ケホッ……ケホッ!! あそこから出られないかな……!」


ノノカは、先ほど潜った水中の少し先を指差す。

よく見ると、確かに水の流れがそちらへ向かっている。


「あそこね! ノノちゃん、ありがとう!! はぁ、はぁ……ちょっと潜って確かめてくる! 少しだけ一人で待っていられる?」


「……うんっ。ノノ、待ってるね……」


炎が轟々と燃え盛る中、癒奈は水中深くまで潜り、排水口を探す。

やがて、ノノカが示した通り、人が一人通れるほどの排水口を見つけた。


(これね! 通れれば逃げられる……でも、この鉄格子が邪魔で――!)


鉄格子は固く接着され、癒奈が全力で引き剥がそうとしても微動だにしない。


(だめ……ッ! ここからは出られない! 一旦ノノちゃんのところへ戻らないと――)


そう思った瞬間、癒奈は異変に気づいた。

ノノカが力なく水に浮かび、ぐったりしていたのだ。


「ノノちゃん!!!」


ノノカの顔は青白く、生気を失っている。

下水道は炎と煙に満ち、大人でも数分で意識を失うほどの一酸化炭素が充満していた。

幼いノノカにとって、それはあまりにも過酷すぎた。


(まずい……! 一酸化炭素中毒を起こしてる!! このままじゃ――!)


癒奈は必死にノノカを抱きしめ、水中を泳いで炎の少ない場所を探す。

だが、どの通路も火に包まれており、水をかけても炎は勢いを増すばかりだった。


「ノノちゃん!! しっかりして! お願い、死なないで!! ……ゴホッ、ゴホッ!!」


炎と煙の地獄で、癒奈自身も大量の煙を吸い込み、次第に意識が朦朧としていく。


(……ま……ずい……意識が……ノノ……ちゃ……)


限界はすぐに訪れた。

視界が真っ暗に閉ざされ、癒奈は完全に意識を失う。


力なく水中を漂う母子は、その後、何者かに引き上げられた。

そして癒奈が目を覚ますのは、一時間後のことだった。


「全作戦の成功を報告。直ちに本国へ帰還します。」


(……!!!?)


意識を取り戻した癒奈は、ソメリカ軍の医療テントのベッドに横たわっていた。

身体を動かそうとしても力が入らず、激しい頭痛と声の出せない感覚に襲われる。


(ここは……どこ……? 私……一体……)


混濁した記憶の中で天井を見つめていると、金髪の女性が近づき、癒奈を覗き込んだ。


「……! 起きたのね! よかった。」


女性は癒奈の脈を測り、バイタルチェックを行う。

癒奈は声も出せず、ただその様子を見つめていた。


「そういえば、あなたの連れの子達……重症の子もいたけど、なんとか大丈夫そうよ。よかったわね。」


(重症の……子? ……まさか竹取くん!? ……そういえば、私はなんでこんな所に……!! ノノちゃんは!? ノノちゃんはどこ!!?)


記憶が鮮明になると同時に、癒奈は必死で身体を起こそうとする。

女性は慌てて鎮静薬を打ち込んだ。


「おうまいがー! ちょっと! やめなさい!! あなたも重症なのよ! 無理に動いたらダメ!!」


癒奈は必死に伝えようとするが声にならない。

女性は気づき、ペンとメモ用紙を手渡した。


震える手で癒奈は文字を綴る。

――「私の抱いていた子供はどこですか。ノノカと言います。」


「……あぁ、あの子ね。」


女性は一瞬言葉を選び、低く告げた。


「あの子は侵略宇宙人よ。あなた達は騙されていたの。でも、もう安心して。すべて上手くいったわ。」


(……何を……言ってるの? 上手くいった? ……ノノちゃんが侵略宇宙人?)


理解できない。

癒奈の頭は怒りと混乱でいっぱいになった。


(突然現れて、私達の日常を壊して、ノノちゃんや皆を傷つけて……それで“上手くいった”? そんなこと――!!)


「ノ……ノ……ど……ご!!! ……ど……こ……!!!」


眉間に皺を寄せ、必死に叫ぶ癒奈。

女性は慌てて兵士を呼び、癒奈の手足を抑えさせ、多量の鎮静薬と睡眠薬を投与した。


(ノノちゃん……! みんな……! 身体が……動かない……また……意識が……ノノ……ちゃん……!)


そして癒奈の意識は再び途切れ――次に目を覚ました時、そこは自宅のベッドだった。

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