ごめんな。
幸達は、多くの兵士達から追いかけられている。
ソメリカ軍第4部隊は、ノノカ達が居る付近のインフラを停止、交通規制による半径3kmに渡っての包囲網を展開していた。
包囲網は徐々に間隔が狭くなっており、ノノカたちが捕らえられるのも時間の問題だ。
上空では軍用ヘリコプターまで飛んでおり、もはや戦争と変わらない状況だ。
「ソメリカどんだけ本気出してるんだよ。それにこんな事になってるのに、あのクリオネロボットは何してるんだ!ノノカに何かあってもいいのかよ!」
幸達は茂みに隠れつつ、マンホールを見つけると下水道に降りて逃げていた。
現在は、下水道内部を警戒しながら逃げている。
「さちぃ、ここぐざいね。ノノ息できない。」
「パパ、ママ、ごごなに?よく鼻つままなくても行けるね?鼻取れそうだわ。」
下水道の中は、とても臭かった。ドブのような匂いがプンプンと漂っており、ノノカと紫はずっと鼻をつまんで歩いている。
「臭いよね!確かに、私もそれどころじゃなかったから、今になって感じてきた!」
みんな、臭いにやられそうだ。
幸は苦笑いしながらも、前に進む。携帯の光を頼りにしながらとにかくこの道を通って遠くまで行く他ない。
「この下水道はどこまでつながってるんだろう。奴らに捕まる前に、とにかく遠くまで逃げないと。皆、離れるなよ!暗いから足元も気をつけて!」
幸の服をそれぞれ3人は摘むと、離れないようにしっかりとくっついて歩いていく。
歩き進めて15分頃が経った時、後方よりものすごい数の足音が迫ってくることに気づく。
「…!!まずい!奴らが来た!!みんな、走るぞ!!ノノカは抱っこしてあげるから、きて!!」
幸はノノカを抱き抱えて二人と共に走る。
後ろから聞こえてくる足音は、徐々に距離が近づいてきており、追いつかれるのも時間の問題だった。
そんな時、暗闇で足音の段差に気づかなかった紫が転倒してしまう。
「……ぐっ…!!いったぁ…。」
「紫!大丈夫か!!」
紫は、思いっきり地面に足を擦ってしまっており、左足からはかなり出血してしまっていた。
なんとか立ち上がるも、先程までのように上手く走ることが出来ず、足を引き摺っている。
「痛い…。うぅ…パパ達は先に行って!私は大丈夫だから。あいつらの目的はお姉ちゃんでしょ!?きっと大丈夫!だから行って!!」
「そんなの出来るわけないだろ!何かされたらどうするんだよ!!ほら!肩につかまれ!!頑張って!!」
「紫!ノノ達はいつも一緒だよ!置いていかないもん!」
なんとか、幸に支えられながら走っていると、後方からとうとう声が聞こえてきてしまった。
「この足跡…。居たぞ!!奴らだ!!!追え!追え!!!soc!soc!こちら第4部隊!!ターゲット下水道にて確認!直ちに拘束します!」
「…見つかったか!!くそ!!しつこいんだよ!!」
部隊は暗視ゴーグルを着用して下水道に入ってきており、追いかけてくる際の走る動作にも全く影響はなかった。
このままでは捕まってしまうと察した幸は、ノノカを癒奈に託して、先に逃げるように伝えた。
「さち!!やだよ!!ノノ、さちと一緒に居る!!ママ!離して!!や!!!ネンネともお別れしてる!みんないなくなっちゃう!!やぁぁ!!」
「ノノちゃん!お願い言うこと聞いて!!このままだと皆捕まってしまうの。ノノちゃんを守る為に言うこと聞いて!」
幸と離れたくないノノカは、癒奈の胸の中で暴れる。ノノカの気持ちは理解していた。
しかし時間がなかった幸は、ノノカを軽く小突くと叱りつける。
「こら!ノノカ、わがまま言うな!また一緒に居れるんだ。離れるのは今だけだろ?ママの言うこと聞くんだぞ!」
「うううぅぅぅ!!!さちのバカ!!アホ!!」
涙目でノノカは幸に向かって悪口を吐くと、癒奈の胸に顔を埋めて黙って泣く。
その様子を見て、癒奈と幸はお互いに黙って頷くと、癒奈は幸達を置いて走り出した。
(後は頼んだぞ、夢坂さん!!)
数分後、幸と紫に追いついてきた第4部隊は2人に手を挙げて止まるよう命ずる。
「お前達、抵抗はするなよ。今から私の問いかける質問に対して、正確な回答をしろ。1つ!娘はどこにやった?」
「知らねぇなぁ。娘ってなんだよ。俺はまだ高校2年の子供だぜ?なんの事だか分からないなぁ。」
幸は答えない。数十人のソメリカ兵に銃を突きつけられても恐れることはなかった。すると、質問に対して正確な回答をしなかったとして、幸は兵士2名に殴られてしまう。
「ぐっ……がはッッ!!!うっ!!!」
「オラオラ!!ちゃんと答えろ餓鬼が!!!死んじまうぞっ!!オラァァァ!!!」
「や!やめて!!パパ!!パパ!!!酷い!!なんでこんなことを!!おねがい!やめて!!!」
紫は泣きながら懇願するが、ソメリカ兵は止めない。
しばらく殴り続けて、再度質問をした。
「さて、もう一度聞く。次はお前だ、女。1つ、娘はどこへやった?ちゃんと考えてから回答しろよ。」
「………ヒュー……ヒュー……ガハッ……ハァハァ…知らねぇよ。娘なんて居ねぇんだからな。その子に聞いたって何にもならねぇよ。諦めろ、おっさん。」
「パパ!!!」
「………。」
パァンッッッ!!!!
「…ッ!!うァ”ァ”ァ”ッ!」
質問していた兵士は、持っていたハンドガンで幸の太ももを撃ち抜いた。
太ももからは大量の出血があり、幸は痛みから意識を失ってしまう。
(…くっそ…痛ってぇ…。ごめんな…。ノノカ、俺は…ここまで…みたい…だ…。)
「いやぁぁぁ!!!パパ!!パパ!!!しっかりして!!…あんた達よくもッッ!!よくもォォッッ!!!」
「大佐!これ以上は!!いくらなんでも酷すぎます。相手は子供ですよ!?」
ハンドガンを手に、さらに発砲しようとした大佐を別の兵士たちが止める。
紫は、半狂乱になりながら幸の元に駆け寄り、血走った目で兵士達を睨んだ。
「…フン。生意気な餓鬼共が。コイツらは使い物にならない、もういい。全員散開しろ、下水道内を隈なく捜索せよ。絶対逃がすなよ。」
大佐は、全隊員にノノカ捜索の命令を出す。




