悩める幸
「なに…?紫、もう1回読んでくれないか?ちょっと理解が追いつかない。なんだって?」
カクリコゲームセンターを救ったあと、倉持神子によって渡された謎のメモ。
現在、幸達は紫にメモを渡して、メモの内容の確認を行っていた。
しかし、1度しっかり読み上げた内容を聞いても、頭が理解出来ないのか、理解したくないのか、脳内に響かなかったのでもう一度紫に読んでもらおうとした。
「わ、わかった。パパ、ママ。でもどうしよう!これ本当ならヤバイよ!?お姉ちゃんが…!!!」
「とりあえず読んでくれ!もう1度!!」
「うん……。恐らくこれを読んでいると、ものすごく驚くと思うから覚悟して読んで欲しい。ソメリカ合衆国は知っていると思うけど、あの大国がね、今ある計画を推し進めているの。そして、その計画の最重要人物が、あなた達の目の前にいるノノカちゃんなの…。」
(まず、ソメリカはノノカちゃんが宇宙人だと言うことを知っているわ。それに、ノノカちゃん関連の情報を全て把握している。実は私もこの計画に絡んでたの。ずっとあなた達の事を監視していたのよ。ごめんなさい…)
手紙の内容には、ソメリカによる全クロノア人の抹消およびクロノア人の技術の吸収を計画しているということが記されていた。そして、その計画を実行するために、ノノカを捕縛して人体実験やクロノア人をおびき寄せる為の奴隷とすると言った非道な内容も書かれていたのだ。
(以上がやつらの計画している内容よ。実行日までは知らされてない。だから、早く住んでいる家から立ち去りなさい。)
「はぁ!!?ふ、ふざけんなよ!!アイツ敵じゃねーか!こんなの嘘に決まってる!ありえねぇだろ…。こんな酷いこと、人道に反する行為じゃないか!!」
「竹取くん。落ち着いて!!とにかく今は早くここを出た方がいいと思う。こんなこと許されない。多分ソメリカの人達は、ノノちゃんの事を人間と同じように見ていないわ!」
あまりにも非道な内容と作戦についての記載に、幸は取り乱す。
もしも、これが全て事実であり、実行されるのであれば幸達もタダではすまない。それに、なによりノノカは恐らく実験体にされた挙句、殺される可能性が高いという結末が待っているからだ。
「夢坂さん、こんなデマを信じるのか?!アイツは俺の事が嫌いだからって適当書いてるんだよ!そうに決まってる!」
「…私は嘘だとは思わない。あまりその人の事は知らないけれど、こんな酷い嘘をつくメリットがないじゃない。もし本当だとしたら、取り返しのつかない事になりかねないよ。」
幸と癒奈が言い合いをしていると、先程まで食事に夢中になっていたノノカの手が止まっていた。
紫が読んだ内容に自分の名前が出てきたことで、不安な気持ちに駆られてしまっていたのだ。
「さちー?ママー?ノノはどうなっちゃうの?さちたちと離れたくないよお…。」
今のノノカは、まだ幼い子供だ。
恐怖心は幸達よりも色濃く感じてしまう。ノノカの表情にはそれが顕著に現れていた。
(ノノカ…。心配そうな顔してるな…。そりゃそうだよな。怖いよな。ノノカは顔に出やすいから、すぐに分かっちまう…。)
幸はノノカの表情を毎日見ているうちに、その時にノノカがどういう感情で考えているのかをよく分かるようになった。
だからこそ、今のような怖がる表情をさせてしまっている事に後悔した幸は、冷静さを取り戻した。
「…よし。とにかく信じていないが、とりあえず3日間くらいは旅行がてらキャンプに行く!そしたら、ここから離れられるし良いよな?」
「さち…ノノ怖いよお…。」
「ノノカ…。大丈夫だよ。皆でここを出ようぜ!そしたら、万事解決さ!皆いつも一緒だ!」
幸はノノカの頭を撫でて、心配するなとニコッと笑った。
「でも、どこに行くの?キャンプって」
「えっと…目指す場所は決まってないけど、幸い、家には家族用のキャンプのテントと道具がある!これで、外で生きられると思う。だから、とにかく遠くをめざして行こうぜ!県外とかな!」
ノノカ達は急遽緊急でキャンプをすることを決めると、食後に急いで各々が支度を済ませ、後日、石作も含めて全員で家を出ることとなる。
キャンプに出発した一行は、順調に進んでいき、6時間程を休みながら歩き続けた。
「ふぅ〜。もうかなり歩いたよな。」
「うんうん!もう違う県に入ってるもんね!このペースで行けば、かなり離れられると思う!」
気づけば幸達の住む県から、既に別の県に入っており、どこを見渡しても見覚えのない景色となっていた。
辺りは自然が豊かであり、数多くの田んぼなどが並んでいる。
「パパ〜、私疲れたあ〜!お腹すいたあ〜、喉乾いたあ〜。もう動けないいい!」
とにかく歩き続けた幸達の後ろから、紫がとうとう音を上げる。
最初は順調に歩いていたが、流石に限界のようで、フラフラしている。
「紫様!ノノカ様も限界のようだ。竹取!今日はここらで一旦停留しても良いんじゃないか?」
「竹取幸、私もそう思うぞ。焦る気持ちも分かるが、皆の体力がついていけていない。」
よく見るとノノカは既に歩けなくなり、ネンネの背中に横たわっていた。紫も、もう流石に歩くのがしんどそうだった。
「よし!まぁ、ここまで来れば、ある程度は大丈夫か!念の為に向こう側の茂みで今日はキャンプしよう!」
もう少し先をいきたかった幸だったが、状況的に不可能だった為、彼らの歩く道の脇の多くの木々や草が茂っている場所でキャンプをする事にした。




