最高の計画だと思ってました。
知恵美市役所内、慌ただしく走り回る集団がいた。
その集団は、外から見れば明らかに不審者であり、周囲の視線を強く引きつける。
「コルラアアァァァ!!!待てお前ら!!こんな事してタダで済むと思うとるんかああ!!!バウバウ!!アイツらを捕まえろ!!」
現在、走る幸達を後ろから物凄い剣幕と勢いで追いかける人間がいた。それは、市役所内常駐の警備員だ。
警備員は、相棒のピットブルであろう番犬バウバウという名前の犬を連れて走ってきていた。
バウバウは口から大量のヨダレを出して、今にも人をこ〇すような表情で幸達を補足していた。
「パ…パパー!!?ど、どうするのこれええ!!!ハァハァ…。私…達、捕まったらヤバいよ…!!」
全員全力疾走で走っている為、癒奈は焦りつつも疲労が見え始めていた。
ノノカは、みんなに追いつけないので幸の背中におぶさられている状況だ。
「これは!!これはぁあ!!予想外だああ!!普通あんな脅されたら、従うでしょ!!だって全部事実の事だよ!?それなのに警備員呼ぶなんてええ!!ちきしょう!!!」
数刻前、幸は市長室で視聴に自分たちに従うように伝えたが、市長は幸の予想とは裏腹に大声で警備に当たっていた警備員を呼びつけた。
一同は突然の事に驚き、捕まるとまずいと察した幸の合図と同時に外に飛び出した。
「お前ら!!私に脅しなんかが効くと思ったか?!ガキが!!!全員もれなく牢獄にぶち込んでやるからな!覚悟しやがれ!!」
「こんのクソジジイがああ!!覚えてやがれ!!!!」
そして、現在に至る。
現在は、市役所内部を歩く市民の中を掻い潜りながら可憐に避けて警備員からの追跡から逃れようとしている。
「竹取!!!アイツら俺達にピットブルを離そうとしてるぞ!!このままじゃ、捕まっちまう!どうする!?」
「そこの男!ノノカ様を守ろうという奴が情けないぞ!あんな駄犬ごときを恐れるな!!私なら、あんなヤツ瞬殺出来る!!あの人間もついでに始末してやる!!竹取幸、私に任せろ!!」
ネンネは、振り返ると警備員とバウバウと対面しようとする。毛は逆立ち、牙を向き出しにして完全に臨戦態勢だ。
しかし、幸は完全に臨戦態勢を取ってたネンネを引っ張って走るように促す。納得のいかない様子のネンネを説得しながら逃げ続ける。
「竹取幸!!なぜ!!!」
「落ち着け!!俺にこういう時の為のプランが幾つかあるから、試させてくれ。」
そういうと、幸はおもむろにどこから出したのか分からないが、丸い掌サイズの薄いゴムに包まれたような半透明な黄色いボールを取り出す。
ボールの中からは、うっすらと羽音のような音が聞こえた。
「さちさち!なにそれー!!ボール?いつ買ったのー?」
呑気なノノカがボールに触れようとすると、幸は全力でボールをノノカの手の届かない位置まで手を伸ばした。
「ノノカ!これは危ないから触ったらだめだ!石作ー!!これを持てー!表面薄いから気をつけろよ!!」
「あぁ!!?なんだそれ!おい!ちょっ!!待て!!!」
手に持っていたボールを石作に優しく投げた。
石作は急に幸からボールが飛んできたことで、体制を崩してしまう。
その影響か、変に身体に力が入ってしまい、強く握ってしまった事で表面を破いてしまった。
パァァァンンン!!!!
「「あっ…」」
その瞬間、ボールからは大量の蜂蜜が溢れ出してきて、中からは見たこともないほど巨大な蜂が3匹出てきた。
3匹はボールから出ると、目前にいる石作目掛けて攻撃を仕掛ける。
「ぎゃあああああああ!!!」
蜂たちの猛攻撃は、瞬く間に石作を見るも耐えない姿へと変えるに至った。
その様子を見たネンネは、竹取をジト目で見つめる。
「……。」
「いや、これは本当はハニーボール作戦っていう作戦でさ、相手に投げつけたら怒り狂った蜂の猛攻撃で時間稼ぎが出来るっていう代物だったんだけど、予定が狂ったみたいだ…ね。」
「だぁげぇとりぃぃぃ!!!てべぇぇぇ!!!」
「石作すまねぇえ!!!お前のことは、忘れない!!」
もはや再起不能となった石作を背に幸達は、警備員から逃げる。
それから、また次の作戦を幸は実行した。
その名も、(お菓子の差し入れ作戦)だ。内容は、警備員に寄り添う形でお菓子を急に差し入れしたら見逃してくれるんじゃないかというのを見越した作戦らしい。
「あんの〜…すいません。追いかけているところ悪いんですが、これ僕からの差し入れになります。もしよかったら食べてください。いつもお仕事お疲れ様です!」
「おつかれさまでっっす!!」
「ありがとう。じゃあ、とりあえず2人に拘束具付けるから、一旦事務所まで着いてきてね。」
「わぁ、さち!!なにこれー!!」
結果は、お菓子を上げに行った幸とノノカがあっという間に拘束されるという結末。
「…って!!竹取幸!!何捕まってるんだ!!貴様ァァァ!!!」
捕まった瞬間、ネンネがツッコミながら、警備員に攻撃を仕掛けて、その場から2人ともまた逃げられた。
「貴様ァァ!!ノノカ様に、なんてもの付けさせるんだ!!ぶちのめすぞ!!このボンクラがああ」
ノノカが拘束具を付けられそうになっていた事がネンネをブチ切れさせる。
ネンネは幸に猫パンチを連発すると、幸も、あっという間に見るも無惨な姿へと変貌した。
「すびばぜん…でしあ。」
「次やったら、こ〇すからな!!」
ネンネの剥き出しの怒りの感情に幸はションボリしながらも、幸は、さらに奥の手があるといい、どこかに連絡を始めた。
「あ、もしもし!あのー、昨日ご連絡させてもらった探偵なんですが、海市長の件でご連絡で…はい、えぇ。はい。」
電話にて、何かを話すと市役所に数分後、ある人物が来る。
ある人物は、市役所にて施設内を走る幸達の集団を見つけると、走ってその集団の方へ向かってきた。
「あ!!ハァハァ…!!ここです!!奥さん!!ずっと追いかけられてて!!この警備員をどうにかしてくれませんか!!!」
「大変お世話になっております。お電話いただき誠にありがとうございます。あの人たちを止めて来ればいいんですね。お任せ下さい。」
幸から奥さんと呼ばれていた人物は、幸達から一旦離れると警備員の前で止まる。
「私、知恵美市市長坂元海の妻でございます。坂元千千と申します。あの方達と何があったのか存じませんが、追いかけ回すのを辞めて貰えますか?」
警備員は千千にも襲い掛かりそうなピットブルを抑えながら、驚きの表情をする。
「はい?奥様?!いやいや、信じられません。どうしてこんな所に?あなたが市長の妻だと言う証拠はあるんですか?」
警備員は妻を見たことがないらしく、全く信じる様子がなかった。それどころか、話すうちに「どけ!!どかないとこの犬のエサにするぞ!!」と脅しはじめる始末だ。
しかし、妻である千千も強い人だった。
いくら脅されても、一向にどこうとしないのだ。
「どきません。あの方は、私の恩人です。それに、あなたが信じまいと私は市長の妻です。その事実に変わりもありません。」
そうやって、警備員と妻がお互いに引かない状況で硬直していると、海市長が走ってかけつけてきた。
「千千!!どうしてこんなところに!?職員からお前が来てるって教えられて飛んできたぞ!一体なにしてるんだ?なぜ、あの犯罪者集団を庇っている?」
海市長は覆面集団である幸達を庇う妻が理解できない。一体彼らにどんな繋がりがあるのか全く知らないからだ。
千千は、最初少しの間黙っていたが、次第に答え始める。
「あの人は、私の恩人なんです…。それに、私達の子供も救われたことがあるんですよ。あなたが仕事に追われてる間にね。」
「は…?」
それから、幸と千千は過去について語り始める。




