カクリコに活気を!!
倉持との約束から1週間が経った。
学校の終わりに、3人はカクリコゲームセンターに寄っては、ゲームを少しプレイして、周辺地域への宣伝活動を行っている。
チラシや声掛け、様々な事をやっていたが現在までに、集客への効果は微々たるものだ。
「全然…人集まんないね…。どうしたらいいんだろう…。」
「ここら辺の人、このゲームセンターの名前だしたら、みんな微妙な反応するんだよなー…。つまんないって。私達がどれだけ勧めても、乗り気になんないし。悔しい。」
「I'm annoyed…なんなのよ。たしかにここには何にもない。ゲームも古臭いし、全体的に暗いし、建物も古い!!だけど、思い出の地じゃない!!そうでしょ!!!」
3人は一生懸命に頑張ってた分、結果に結びつかない現状に悔しさを滲ませていた。
倉持については、もはやイライラが止まらないようで、ずっと貧乏ゆすりをしたり、指でゲーム台をトントンと鳴らしたりしている。
そして、倉持の悪意のないカクリコゲームセンターへの評価が、オーナーの心をエグり続けた。
(あぁ!あぁ!!!もうやめたげて!!遠くで聞いてるオーナーにその言葉の槍が突き刺さって、オーナーが変なポーズ取ってるって。プルプル震えてるって!!も、もうオーナーのライフポイントはゼロよ!!)
3人とオーナーを交互に見ながら、幸1人だけオーナーの心配をして、崩れ落ちたオーナーの背中をさすって上げていた。
3人が悩んでいる時、また紫が幸の元にやってくる。
紫は、モジモジしながら何かを言いたそうだ。
「…?どうした?紫。」
「…。パパ、私達どうしてもここの場所に人を集めたいわ…。だから…。」
「だから…?」
「私達に協力して。パパ。パパの力が必要なの。」
紫は、真剣な目をしていた。
実は今日カクリコゲームセンターに来る前に、紫は癒奈にカクリコゲームセンターについて相談をしていた。
人が集まらない、でも潰れてしまうのをどうにか止められないか?と。
癒奈はそれを聞いて、何個か案を提案をして、もしもそれが上手くいかなかった時は、幸を頼るようにと言っていたのだ。
(ママは、パパの事信頼してた。パパならきっと私達のために動いてくれるって。そして、きっとカクリコを盛り上げてくれるはずだって!!)
紫のお願いを聞いて、これまで我関せずだった幸はノノカ達の方を見つめた。
ノノカは、ゲームセンターを助けられない事を幼いながら察しているのか、涙目になって俯いていた。
それを見た倉持が、ノノカの頭を撫でてあげながらノノカを励ましているようだ。
「パパ…お願い。」
紫の目もよく見たら、少し涙目になっているように見えた。
幸は軽くため息をつくと立ち上がり、紫の肩をポンポンとたたいて、ノノカ達の方へ向かった。
「2人とも落ち込んでるとこ悪いが、俺に考えがある。もしも成功したら、ここのゲームセンターは何とかなるかもしれない。確証はないけどな。どうする?ノノカ。」
ノノカは幸の声に耳を傾けると、涙目から一気にキラキラと輝く目をした。その目には希望が詰まっており、ノノカの幸への信頼が見て取れた。
「さち…!!!おねがい!神子ちゃんを助けて欲しいの!わたし、神子ちゃんのおともだちだから。神子ちゃんが悲しむのは嫌なの!!」
ノノカの反応とは裏腹に、倉持は疑う素振りを見せる。
これまで非協力的だった幸がここにきて急に協力してきて、自分なら救えるかもしれないと言われたって信じられるわけがないからだ。
「私達が何したって集まんなかったのに、アンタに集められるわけ?無理に決まってるわ。冗談はよして。」
少し突っぱねるような事を言う倉持に、ノノカは幸を庇うように、「そんなことない!」と倉持の言葉を一蹴りした。
その言葉に少し驚いたのか、倉持は黙ってしまう。
「しょうがない。よし!アンタ、俺の娘達からのお願いだ、いままでの悪口は一旦忘れてやるよ。協力してやるから、来週の金曜の夜にここに集合だ!!作戦会議をするからな!」
「…。」
こうして、古く廃れてしまったカクリコゲームセンターを救済しようとする者たちの最後の抵抗が始まるのであった。
それから金曜日の放課後になると、早速幸による作戦会議が始まった。
幸は、既にプランが決まっているようで、ゲーム台に作戦の書かれた用紙を広げる。
ほかの3人は、その用紙の中身を見て驚いていた。
「「「これ、本気!??」」」
その紙に書かれていた内容は、かなり非現実的な内容だ。
①カクリコのある市の市長の場所へ行き、市長の命令でゲームセンター大使というものを作り出してもらい、市全体に広報してもらう。
②カクリコゲームセンターへ、市内の学校の生徒を自由学習という授業項目で、来させてゲームをプレイするように学校と契約を結ぶ。
③SNSでカクリコゲーマーズというチャンネルを設立して、生配信でゲームを配信を行う。
④定期的に、世界的に有名な格ゲーであるブレイク・ハンスルーの世界大会を実施する。
⑤軌道に乗り出したら改修工事を行い、元の形を保ちつつも、明るく、大衆向けのゲームセンターへ変更して、新たなゲームの設置を行う。
「バカバカしい!!そんなの成功するわけが無いわ。モンキーの考える事に少し期待してた私が馬鹿だった。やるだけ無駄よ。」
作戦用紙を広げているゲーム台から離れて、近くの椅子に座る倉持。
ぶっとんでいる作戦を見て、やる気を失ったらしい。
するとノノカと紫は、また目を輝かせて幸のことを見つめていた。
「さすがパパだ!!!✨️天才だわ!!ね!お姉ちゃん!!」
「うんうん!!さちは、いつもすごいんだもん!!早く作戦をはじめたい!」
幸は2人のノリノリな様子に満更でもないようだ。
勝ち誇ったような表情で倉持を見つめると、明日の朝に早速作戦を開始すると伝えた。
カクリコゲームセンターには時間が無い。1日でも早く売上を建てられなければ借金が膨らんでいくばかりだ。だからこそ、早い作戦の実施が必須だった。
作戦予定日は平日だったので、幸は予め学校に仮病の連絡を行っている。
当然癒奈の反対もあった、ゲームセンターの為に学校を休むなんて許せない、ましてや仮病を使うなんて!と猛烈な批判だ。
しかし、幸は癒奈に必ずこの日の分の勉強の埋め合わせは行うと誓って、ようやく承諾を得た。
作戦決行日の朝、市役所の市長室は荒れていた。
「あの件の書類はどうなってる?なに?あの件については、承諾したぞ!!書類の紛失?!馬鹿!!個人の情報だぞ!?今すぐに捜索に取り掛かるんだ!!!急げ!!」
市長室の部屋に座って、声を荒らげながら電話をしている人物は、カクリコゲームセンターのある知恵美市の長、知恵美市市長 坂元海(40)、その人だ。
彼はエリート市長として名を馳せており、その手腕は他の市長とは別格と言われている。
「……ったく。秘書、今日のスケジュールをすり合わせしたい。今、口頭でいつも通り全部読み上げてくれ。把握する。」
「かしこまりました。海市長。ではこの後20分後の最短のスケジュールから読み上げます。」
彼らがスケジュールの打ち合わせをしていた時、突然市長室の扉がバンッッ!!!という大きな音を立てて開く。
何事かと、正面の扉を見つめる市長。
視線の先には、クルクルの模様をしたメガネをかけて帽子を深く被る人間が4名と、覆面をつけた子供が1人、そして更に覆面を付けた獣も居た。
「やっほぉーー!!目立ちたくない検定1級持ち!普通の子供の竹山光ですー!どうぞよろしく!!!!」
その場には、変な空気が流れる事となる。




