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カクリコ盛り上げ隊

「閉店の時間だよ。ゲームは楽しかったかい?」


オーナーの角里さんが、手をパチパチと軽く叩く。

店内には、いつの間にか閉店の音楽である蛍の光が緩やかに流れていた。

ずっと放置されていた幸は、格ゲーエリアの隣のベンチで寝ていたが、オーナーの拍手で飛び起きる。


「今日は、神子ちゃんと嬢ちゃん達のおかげで、ゲームセンター内が騒がしくて、懐かしい感じだったよ。店を畳む前に良い景色を見せてくれてありがとうね。」


ここ最近は客足が遠のいて、来客数が0人の時が続いていたカクリコゲームセンター。

客層は大人が数名程で、子供の来客に関しては全くの0だ。

かつて、子供達で栄えていたゲームセンターを見てきた角里にとってはそれは辛いことだった。

角里にとって、子供たちがゲームではしゃいで楽しんでくれる。そんなゲームセンターが理想であるからだ。

だからこそ今日は、ノノカ達に自分の好きなゲームセンターの景色を見せて貰えた事に感謝をしていた。


「ん?店を畳むってなに?オーナー、どういうこと?」


店を畳む事を初めて聞いたのか、何を言っているの?という感じの倉持は角里に尋ねる。

ソメリカに基本滞在している倉持は、数週間前に帰国したばかりで、この店の情報が回ってきていなかった。


「え…。このゲームセンターが潰れる?オーナー!?確かにここは廃れてるけど、何年もずっとそれは変わらないじゃない!どうして!!」


(す、何年もずっと廃れてるって…。倉持くんは、海外での生活が長いから遠慮がなく言うなぁ…。)


ここのお店が余程気に入っていたのか、彼女はここのお店が潰れるということを認められないらしい。

先程まで楽しそうな表情をしてたのとは一変して、顔からは赤みが引いて、冷静な顔に戻っている。


「倉持くん。これまではね、私の若い頃に貯めていた貯金から、ここの運営の資金を捻出してたけど、もう限界が来たんだよ。それに今は客1人こない。ご覧の有様だよ。だからもう潰すしかないんだ。」


お店の事情など知らず、いつまでも営業している物だと思っていたからか、突然の店閉めの告白にショックを受ける。

倉持は、立ったまま顔を伏せてしまう。


「そ、そんな。。ここが潰れちゃったら、私の楽しみが無くなるじゃない!!それに、ここは私の思い出の場所…!そんなのダメよ。私が許さない!!」


倉持は拳を固く握りしめてオーナーに言うが結果は変わるはずもない。


「私もどうにかしたいんだけどね、現実はそう甘くないんだよ。」


「…いくら?」


「え?」


「一体いくらあれば、ここのお店を潰さないで済むのか聞いてるのよ」


どうしても潰れて欲しくない倉持は資金提供をほのめかしはじめた。

実は彼女の財産は庶民の財産とは比べ物にならない程らしい。

一体いくら財産があるのか、想像もつかないほどだ。

そんな彼女が資金援助をするとなると、ゲームセンターの経営継続も現実味を帯びてくる。

しかし、オーナーはそれを許さなかった。


「倉持くん…。君が今、大金持ちだってことはわかっている。だけど、君にお金は借りられない。それに、一時的に助かったって、この店の経営はもう限界なんだ。わかってくれ。」


「Holy shit…!!どうして?理解できないわ!!オーナーお願いよ!!潰すなんて言わないでちょうだい!!!」


とうとうオーナーの前で膝をついて、オーナーの服を少し引っ張りながら懇願する倉持。

オーナーは、頭をポリポリとかきながら困った顔をした。

幸がその様子を離れた椅子から静観していると、幸の元に紫が来て隣に座るとコソッと話しかける。


「パパ。どうにかならない?神子ちゃんが可哀想。」


倉持に対してあんまり良い感情が無い幸は、「無いな。」と即答する。

特に助けたいと思っていない幸にとっては、可哀想という思考にすらならなかったからだ。

紫がどうしたら良いんだろうと悩み始めた時、

みんなの話を聞いていたノノカが突然外に向かって歩き出す。


「ノノがここにいっぱい人連れてくる!!そうすれば、神子ちゃんが悲しい思いしなくていいもんね!」


「…ノノカちゃん。」


幸は出口に向かって歩いていくノノカの元に行くと、ノノカの手を取り、外に出ないように止めた。


「……!…さち?」


「もう暗くなってるから危ないぞ。それに、もうこのお店の今日の営業時間は終わりだ。今から呼んだってしょうがないだろ。」


もう既に外は日が落ちており、1人で小さな女の子が外を出るのは危ない。

それにこれから呼ぶのは不可能だと告げた。

それを聞いたノノカは残念がりながら、倉持の方を見つめる。

倉持もノノカの方を見て、目が合うと優しく微笑んだ。


「ありがとう、ノノカちゃん。なんて優しい子。今日会ったばかりの私の為にどうしてそこまで?」


オーナーの前で膝をついていた倉持は、ノノカの方へ行くと笑顔でノノカを優しく抱擁した。

幼いノノカがまさか自分の為に、何かしようとしてくれるとは思ってもおらず、予想外で嬉しかったのだ。


「だって、ノノね、神子ちゃんの事好きだもん。優しいし、面白いから!だからね、可哀想だからね、ノノが頑張るの。」


「……………」


「…?」


倉持はノノカの心の温かさや優しさを知る。

ノノカの顔を静かに見つめて、最初は少し驚いたような顔をするも、次第に優しい眼差しで見つめていた倉持。

一見、ただ幼い子供を優しく見つめているように見えたが、ノノカは、その瞳の奥に暗いものがあるように感じとっていた。


「…ハハ、どうしようかしらね。……あなたの事が大好きになりそう。」


何かを察せられたのを感じ取った倉持は、笑みを浮かべるとノノカの頬をツンツンと指先でつつく。つつかれたノノカは、へへへっと笑い返して場が和んだ。


「神子ちゃん!あしたまた来るから!いっしょにいっぱい人をここに連れてこよ!!そして、みんなであそぼうよ!!紫とさちも一緒に!」


「ええ。もちろんよ!また私もくるわ。ノノカちゃん達に会えるの楽しみにしてる。オーナー、私はここをまだ諦めないわ。ここは潰させないから!」


先程までの落ち込みは無くなり、オーナーに対して勢いよく指を指しながら高らかに宣言する。

オーナーは変わらず困ったような表情をしつつも、止めることはなかった。


「…諦めないか…。ハハハ、そいつは楽しみだ。ここにまた活気ある光景を眺めさせてくれるのであれば、潰さなくてもいいかもしれないね。」


「よーし!じゃあ、また明日ね!お姉ちゃん、私も沢山頑張って人呼ぶからね!」


こうして、この日はお開きとなった。

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