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竹取の幸の心情

2025-5-6 誤字修正

高校への登校日、幸は朝の6時に家を出発していた。

幸の家から学校までは、およそ徒歩15分程。

この時間に出れば間違いなく学校でも1番に登校できると踏みつつも、もし誰かに会ってしまったらという恐怖感から身体が勝手に全力で走っていた。

ノノカを背中に連れて、極力目が覚めないように耳栓をノノカに付けて、上下に譲らないように身体の動きを最小限に動かさない状態で走る。



(頼む!!起きないでくれよお〜。。保健室の先生に事情を適当に説明して、預かってもらえば他の生徒に見つかることなく、一日が終わる!

それで帰りもみんなが帰った頃に迎えに行けば完璧なんだ!)



そう心で思いながら、学校に到着する。

まずは自分の教室に入ってみた。


(誰も居ない。)


荷物を自分の席に置き、保健室に向かう。

保健室の先生は60代くらいの女性で、いつも朝が早い事で有名な人だ。

保健室に着くと、既に明かりがついていた。



(ほっ。よかった。やっぱり噂通り、ここの先生は朝早くから来てるみたいだ。これで預けられる。)



ガラガラガラ

保健室の扉を開けると、椅子に座ってなにか書類を書いている先生がいた。

先生は、扉の先にいる幸を見て、驚きながら、はぁ〜。とため息をついて、幸の目の前まで来ると、幸の顔や身体を見始める。



(な、何だこの人!?急にジロジロと…)



そんな事を思いつつ、幸は先生に問いかけた。


「あ、あの先生…!実はお話がありまして…?いいでしょうか?」



先生は、幸の言葉を聞き、言葉を返す。


「どうした?怪我でもしたいのかい?アンタ朝早くから怪我なんてしちゃダメだよ。廊下でも走ったんじゃ無いだろうね?それとも何かい?お腹痛かったり、気分が悪かったりするのかい?あんた、目の下にクマが出来てるし、顔色が悪いよ。そういう時はね、学校おやすみしたりしていいんだよ?無理はしちゃダメなんだから。ご飯はしっかり食べてきたのかい?それと……」



話が終わらない。こちらが話を聞いて欲しかったのに、いつまでも先生のターンが続く。

話長ぇ…お母さんかよ!!とか思いつつも、早くノノカを預かって欲しかった幸はノノカを差し出して端的に伝えた。



「先生!違うんです!聞いてください!この子なんですが、僕の親戚の子で、急遽僕が預かることになってしまったんです!ただ、ウチは僕1人で住んでて、親が居ないので、学校がある時間は、ここで見ていて貰えないでしょうか!?詳しい事情は、また機会を見てお話しますので!」



先生はキョトンとしていたが、

ノノカに近寄ると、まるで孫を見るおばあちゃんの様な表情になって、ノノカを見つめる。



「えっと…その子を?あら!随分と可愛らしい赤ちゃんね。女の子かしら?ねんねしてるの可愛いね〜。」



余程先生から見て、ノノカが可愛かったのか

ノノカのほっぺをツンツンしはじめた。

ノノカが「うぅん…。」となると、先生は一人で萌えはじめた。



「やめてください!起きたらどうするんですか!とにかくお願いしますね!!?」



幸は、そっと先生にノノカを渡す。

すると、先生は、ノノカを受け取った後に、幸に問いかける。



「先生は深い事情は聞かないし、預かってあげていいけど、この子のご飯とかどうするの?ここの学校にはミルクとか置いてないわよ?」



それを聞いた幸は、しまった!!と、

ノノカのご飯のことについては失念していたことに気づく。

確かに1日預かってもらうとなれば、ご飯は必要不可欠。おなかが空いた場合でも、コイツは大暴れするに決まってる。



幸は先生に、「少し待っててください!!」と言うと猛ダッシュで、近くのドラッグストアへ行き、ミルクを買い漁った。

そして、両手に大量の粉ミルクを持った状態で保健室に行き、それを渡す。



「はぁ…。はぁ…。これで良いですか…?多分これから何日間か見てもらう事になるので、その間はこのミルクを与えてください。では、そろそろ行かないと行けないので、よろしくお願いします。」



幸は汗だくになりながら、先生にミルクとノノカを渡して、保健室を後にした。

教室に戻り、息切れしたまま席に座ると、ガラガラガラと教室の扉が開いた。

ちらっと横目で見ると、そこにはクラスの学級委員長が登校して来ていた。



学級委員長は、こちらをかなり驚いた顔で見ながら自分の席に座る。



(あれは、学級委員長か…。名前なんだっけな。てか、なんかめっちゃ見られてるな…?なんか顔に付いてんのか?こんなに早く通学することないからびっくりしてるのか?なんにせよ、目立つ訳には行かないからな。このまま何事も無かったかのように静かに過ごそう。)



幸は、学級委員長の視線をヒシヒシと感じながら、静かに気配を消して過ごした。


そうして、何事もなく1日は終わり、帰りにノノカを迎えに行って誰にも気づかれることなく家に帰りつく。

迎えに行った際に、保健室の先生のノノカへのメロメロ度が凄く、「この子は、とってもいい子で天才よ!!ここに置いてある本を全て読んで、救急箱の中身とか、人体模型とかに興味津々で、とっても勉強熱心なのね!それに愛嬌もとってもあって可愛くてね…」とか言っていた。

この感じだと、何日預けても問題なさそうだ。

ノノカも大人しく学校で過ごしてくれてそうだし、このまま時が経てば、俺の人生は、なんの問題もなく過ごせる。

そう確信していた。


それから、数日が経過する。

相変わらず、ノノカからの深夜の攻撃は続いていた。


「さちぃ…。えほんよんで。たくさんよんで!」


「おきておきて!おばけがいるかもしれない!こわいよぉ。」


「おトイレ行きたい。おきてぇ。。」


こういった数々の理由で、深夜に叩き起されては、ノノカが眠りにつくまでずっと眠れない日々が続いた。

幸は、少しの辛抱だと我慢し、耐えていた。

毎日朝、鏡に映る自分を見ると、どんどんと目のクマが広がり、まるでゾンビのような容貌になっていくのがわかる。


「もう、バイ〇ハザードじゃねーか。」


ボソッと、自虐ネタが口から出てしまうほどだ。

しかし、この容貌になってしまった原因は、ノノカだけでは無かった。

同クラスの学級委員長の存在が、さらに幸を疲弊に追い込んでいた。

彼女は何故か、学校の通学時間が毎朝早くなるのだ。


幸は、誰よりも先に学校に到着し、誰にも見つからないようにしたいのにも関わらず、学級委員長は、それを知ってか知らずか、幸に通学時間で追いつこう追いつこうとしているようだった。



(なんなんだよコイツ!!なんで毎日どんどん早く通学してきやがんだよ!?こっちまで更に早く起きて通学しなきゃいけなくなんだろうが!!)



幸は内心で、イライラしながら毎日睡眠時間を削っては、学級委員長と張り合っていた。


そんなこんなで、普段通り過ごしていたが、

ノノカとの生活が始まって、4日目の通学の日に事件は起きる。

いつも通り、幸が一番に登校し、学級委員長も登校してきて、普段と同じく特に関わりなく過ごしていたが、学級委員長が幸に突然声をかけてきた。



「おはよう。竹取さん。最近朝早いのね?」





「お、おはよぅ…。そうかな…?」



声をかけてきた学級委員長の目は、鋭く、冷たさを感じる。



「これまで、関わったことがなかったけど、私は、学級委員長として、クラスの皆の通学時間はこれまで把握していたの。あなた、これまではいつも朝礼の5分前とかに席についていたわよね?どうして、それがここ数日こんなに早く通学するようになったの?」




そう聞くと、竹取幸の額に冷や汗のような汗が滴る。

学級委員長の夢坂癒菜は、そんな竹取幸の姿を見て、これはやましい事がある人間が問いただされる時に出る姿だと感じた。

これまで、自分が対峙してきた人間で、悪いことをした人間や隠し事をしている人間に表れる典型的な特徴だったからだ。




「い、いや…なにも…。特に理由はないかな…?学校が好きだから、早めに来たくて。」




幸は恐る恐る答えていた。癒菜の方を振り返りもせず。

癒菜は、ますます怪しく思い、竹取を少し攻めてみる事にした。



「あなた、最近少しおかしいわよね?髪はボサボサだし、目は充血してるし、朝は誰よりも早いし…。クラスの皆もあなたの最近の姿に、少し動揺してる事に気がついてる?あなたの話題で皆いっぱいよ?どうしたのよ?」



バッと席を立ち上がると癒菜の目を見て、恐怖と驚愕に満ちた顔で聞いてきた。



「その話…本当か?!俺がクラスの皆のうわさの的になってるって…?それは本当に本当なのか…?!!」



「そ…そうよ?竹取さん。あなたもう、本当に注目の的よ?このままだと皆に怖がられて、これからの学生生活に支障をきたしかねないと警告しとくわ。」



汗が全身から吹き出し、唖然としつつ、青ざめた表情で後ずさりをする。


「そんな…。そんな馬鹿な…。俺の完璧な計画が…。」


この後、幸の人生は、さらに狂い始めていく。

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