ゲームは人生。
「可愛らしいお二人さん。お名前は?」
その人物は、2人に顔を近ずけると尋ねた。
驚いた2人は顔を見合せてそれぞれが名前を名乗る。
2人の名前を聞いて、うんうんと頷くとガッツポーズをした。
「ノノカちゃんに、紫ちゃん!良い名前ね。very cute!!」
フードを被ったまま馴れ馴れしくノノカ達に近ずくその人物は、ノノカの頬に手を伸ばす。危なそうな存在に、幸が危機感を感じ、フードを掴んでノノカ達から遠ざけた。
思い切り後ろに引っ張られた謎の人物は、後ろに倒れると何が起こった?!といった反応をしている。
「大丈夫か?2人共!こういう所は危ないのが多いんだから、話しかけられても無視しないとダメだぞ。そこのアンタも、うちの家族にちょっかい掛けないで貰えますか?距離近すぎです。」
いきなり服を引っ張られたあげく、倒されて注意までされた事に苛立ちを見せる謎の人物。
勢いよく、立ち上がると幸の顔面スレスレにまで顔を近づけて鬼気迫るような勢いで幸に抗議する。
「What!?いきなりフード掴んで倒してくるなんて、なんてクレイジーなの。アンタ最低ね!!」
そのまま被っていたフードを脱ぎ捨てるその人物は、普通に綺麗めの歳上の女性だった。
フードが外れると同時に、彼女のブロンドの髪の毛がファサッと広がる。
恐らくは既に20歳を超えているだろうか?という感じで、怒りの表情をしていた。
「良い?私はね、倉持神子って言うの。世界的にも有名で、アンタなんかが手を出して良い存在じゃないのよ!?」
物凄い上から目線で、幸に指を指す倉持。
かなり怒ると激しい性格になるらしく、勢いがすごい。
「倉持神子…。そんで、そんな有名人がこんな所でゲームか?格ゲー?しかも、隣に座った幼児達にちょっかいを掛ける変質野郎ときた。」
幸は彼女の言うことを信じていない。
恐らくは、自分のやったことに対して言い訳で適当なこと言っているだけだろうと思っているからだ。
幸はとにかく警戒を怠らなかった。
「アンタ…ッ!!なんて失礼なやつ。私が先にプレイしてたのよ。このゲームは世界的に有名なブレイク・ハンスルーって格ゲー。私はこのゲームで世界チャンピオンやってんだから。それにこの子達に最初に話しかけたのは、ここに来るお客さん自体が珍しかったからよ。わかる?能無し!!」
ノノカも紫も激しく罵り合う目の前の2人を見て、仰け反る。
「ほんと、今の若い日本男児ってのは、なんてバカなのかしら。モンキーね。モンキー。」
「モン…ッ!?だっれがモンキーだ!!誰が!!!この変質ロリ〇ン女!!!!」
2人がそのまま言い争っていると、店の店主らしき人間が慌てて2人の間に入り込んだ。
2人は店主のお陰でしばらくして落ち着くと、店主は幸に挨拶する。
「私はここのオーナーの角里 吾郎です。遠くから怒声が聞こえて、あの子と喧嘩する人間が久しぶりに現れたのか?!とビックリして飛んできましたよ。あの子は格ゲーのやり過ぎで、性格が激しくなっちゃったから、すぐ熱くなると大喧嘩しちゃうんです。」
倉持神子は、幼い頃からこのカクリコゲームセンターによく遊びに来ていた。
ゲームセンターでは、最初の頃普通の女の子として楽しく遊んでいたようだが、ある日、格ゲーである【ブレイク・ハンスルー】をプレイしてからは、そのゲームにのめり込むようになった。
それからというもの、学生から大人になってもずっと定期的に、このカクリコゲームセンターに来ては、格ゲーにいそしんでいるらしい。
「ソメリカから仕事で来た、この私の!大切なプライベートをよくもぶち壊してくれたわね。モ・ン・キー・ボーイ!!」
「あぁん?!このブスでガリの…∞ẅ₩エωÜ▽!!!」
「ほらほら!君も神子ちゃんも落ち着いて!神子ちゃん、店ん中で大きい声出さないでっていつも伝えてるでしょうが!」
怒りの収まらない倉持と睨み合う幸。
その2人をアタフタしながら、止めようと必死な店長。
その場にいた紫とノノカは、自分達が宥めるしかないと感じたのか、優しい口調で倉持に話しかける。
「とっても綺麗で可愛い神子ちゃん!私たち、このゲームしてみたいよ。だから、教えてほしいな!」
「おねがい!神子ちゃん!」
鬼の形相になっていた彼女の顔は、2人の天使からのお願いで、一気に冷静さを取り戻した。
幸を見ていた顔は、キラキラとした笑顔でノノカ達に向き直され、ニマニマとニヤけた顔でノノカ達に近づく。
「あら、可愛い♡あんのチビゴリラなんかが育ててるとは思えない♡良いわよ。私が手とり足とり教えてあげる。一緒に遊びましょ!」
態度が一変していることと、めちゃくちゃ言われてることに対して、幸は怒りで眉がピクピクしていたが、追撃せずに堪えて、3人がゲームするのを静かに見守るのだった。
それから2時間後
(え。これいつまで続けんの?終わる気配がないんだけど。)
2時間経過して、外も暗くなってきていたが、ゲームに夢中の3人は全く辞める気配がなかった。
「ふぉー!あちょー!!タッタッタ!!!」
「んん!?なに!うや!?ノ…ノノちゃんやるじゃない!?紫ちゃんもそうだけど…初めての格ゲーを経った2時間やっただけで、このチャンピオンたる私と同等なんて…。」
「がんばれ!がんばれ!お姉ちゃん!ファイト!神子ちゃん次は、また私とやろうね!?早くやりたいんだからさ!!」
天使2人のゲームというか、プログラムされたものに対しての扱い方は才能が普通の人間のそれとは逸脱しているものだ。
倉持はこのゲームでは今まで負けたことが無かった。
あまりにも強い倉持のプレイヤースキルは、他のプレイヤーからチートを使っているという疑惑を持たれたこともあるくらいだ。
しかし、そんな倉持が今まで経験してきた中でも、随一と言っていいほど何度もノノカと紫に追い込まれている状況であり、これまで、そんな事無かった彼女は興奮で血が沸き立ちはじめる。
「いい…いいわ…!とってもいいわよ!!!とってもとってもいい!!あなた達、本当にエキサイティングね!!!私興奮してきちゃった♡ドンドンやるわよ!!掛かってきなさい!」
3人はその後も、興奮したままゲームを2時間ほど追加でやり続けた。
それから、キリがいいところでゲームを終えると、集中していた3人は顔を火照らせて、汗をかきながらハァハァと息を荒立てる。
「楽しかったぁ…。ハァハァ…。結局、神子ちゃんに勝てなかったなあ。」
「私も…。神子ちゃん…強すぎ…。お姉ちゃん、今度これもっとやりたいね。」
「2人ともすごいわよ…。この私がここまで追い込まれるなんて…。ハァ…ハァ。こんなに熱くなったのはいつぶりかしらね。」
ゲームを終えた頃には、外は暗くなり始めており、ゲームセンターは閉店の時間になる。
1度事務所に戻っていた店長も、3人の前まで来て閉店の旨を伝えた。




