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古めかしい場所

家から電車で3駅ほど行った所に、古いゲームセンターがある。そこのゲームセンターは売上が悪く、とうとう今年中には店が締まるという噂まで立ちはじめていた。


「竹取くん、最寄りから3駅先の円丘駅(まるおかえき)にある古いゲームセンターって知ってる?」


癒菜は、幸にゲームセンターの存在を知っているか尋ねた。


「あ〜。確かカクリコゲームセンターって名前のとこだよね?昔、両親に連れてってもらったことがあるけど、なんで?」


「ねー!さち!ゲームセンターってなーに?」


「ん?ゲームセンターはな、色んなゲームが出来る楽しい場所だぞー!」


どうやら幸は昔、よく通っていたようだった。

最近、癒菜は学校内でとある噂を耳にするようになっていた。

それは、カクリコゲームセンターの閉店の噂だ。

学生にとっては有名な思い出の場所の1つである、カクリコゲームセンターが潰れるということは、学生達にとっては衝撃的であった。


そこにある事が当たり前であったからか、ほとんどの学生は行かなくなってしまったが、いざ潰れるとなると話は別だ。

一部の学生の間では、遊びに行ってゲームセンターが潰れるのを阻止しようという案も出たようだが、実際は言うだけ言っただけで、古いゲームセンターだからか、結局誰も行っていないらしい。


「私は行ったことないから分からないけど、もし、機会があったら最後に行ってみたらどう?ノノちゃん達も楽しめるんじゃないかな?」


癒菜が提案するが、幸はあまり乗り気ではなかった。

なぜなら幸は、あまりゲームセンターが好きじゃない。

あそこは不良や陽キャ達の巣窟だと考えているようで、目立つ行動を避けてきた幸にとって、最大の敵がウヨウヨといる場所にわざわざ足を運ぶなどバカバカしいと考えているからだ。


「いやぁ…あそこは古いしさ、治安もあんまり良くないんじゃないかな?ノノカもそんなに興味ないと思うし…」


そう言って、ノノカの方をチラッと見ると、ワクワクして目を輝かせた少女2人が見つめていた。


「ノノ、行く!!!ゲームセンター行く!!!今行く!!!」


「パパ!私も行きたい!!ゲーヌセンタ?見たことない!!」


ノノカも紫も行く気マンマンと言うか、既に準備万端な状態だった。

こういう時のノノカの行動力はとんでもない。

ワクワクしはじめたら、もう止まらないのだ。

幸は、ノノカの準備の速度に空いた口が塞がらなかった。

興味さえ示さなければ、行く必要がなかったのにも関わらず、まさかここまで興味津々になってしまうとは。

幸は何とかゲームセンターへの興味を無くそうと考えていると、それを察したネンネが幸に念を押した。


「幸…。まさか貴様、ノノカ様が希望されているゲームセンターとやらに行きたくないとは言わないだろうな?」


毛を逆立て始めたネンネを見て焦る幸。

一応、ノノカと紫とネンネの3人で行くのはどうかと聞いてみるも、「さちも一緒じゃないと、ヤ!!」「来てくれないの!?私もパパと一緒に居たいんだけど!!」と、ノノカはともかくとして、紫も幸と一緒じゃないと嫌だと言う始末だ。

しばらく考えるも、ネンネの圧力も次第に強くなってきたのを感じたので、幸は仕方なく了承した。


癒菜はゲームセンターは、親から禁止されているので着いていけないと言って、ノノカ達を見送る事となった。

それからしばらくして4人が家を出発すると、30分程だった後にカクリコゲームセンターに到着した。

ゲームセンター内は、やはり人がほとんどおらず、薄暗い空間で閑散としていた。


「パパ、ここがゲームセンター…?」


「………」


「あぁ。…しらけてるだろ?ノノカ、紫。帰りたいなら、もう帰ろうか?」


静まり返った2人を見て、ほら言ったこっちゃないと思う幸。

こんな盛り上がりの欠けらも無い、どんよりとしたゲームセンターなんか誰がワクワクするものかと。

2人が残念そうにしていると思った為、幸はゲームセンターに背を向けて帰ろうとすると、ノノカが走ってゲームセンターの中に入っていった。


「!?ノノカさん!?え?!」


それに続けて、紫もノノカを追って走っていった。

何が起こったのかと驚いていると、またもや目をキラキラとさせた少女2人がゲームセンター内で騒ぎ散らかし始めた。


「すごぉーーいい!!!え!!お人形さんが中にいるー!!え!これなにー?!紫!見て見て!!」


「キャー!!!このフィギュア可愛すぎる!!お姉ちゃん!!この子私ほしいんだけど!!!えっ!まってこっちも!!!キャー!!!」


「…………あれぇ。」


幸の想定していた反応とは真逆の反応だった。

おそらく2人が黙り込んでいたのは、始めてみるゲームセンターに感動していただけだったようだ。

ネンネは、静かに幸の隣を歩きながら幸に首をクイッとすると目で早く来いと告げてきた。

観念した幸は、自分の考えが甘かったと悟る。


「はいはい、行きますよ…。行きゃーいいんでしょ。」


それからノノカ達はゲームセンター内で、幸のお小遣いからお金を使いながら、あらゆるゲームを楽しんだ。


「もう少し!!がんばれ!がんばれ!!わぁー!!やったあー!可愛いぬいぐるみだあー!!さち!!ありがと!!大好き!!!」


「お姉ちゃんいいなあー!このぬいぐるみ、コムコメPON!って言う米粒が主人公の米アニメ見たいだよ!ちなみに、今取れた子はその主人公の粒夫君みたい!」


「粒夫くん…!!可愛い♡これで、紫のパンタちゃんと一緒に遊べるね!」


「うん!!お姉ちゃんと一緒にお人形さんで遊びたい!」


姉妹2人は幸が取ってあげたUFOキャッチャーのぬいぐるみでキャッキャと盛り上がっている。

一方で幸は、かなり疲弊をしていた。


(UFOキャッチャーに、コインゲーム…。音ゲーにカードゲームだと…。こいつら…遠慮ってのを知らねぇ…!!)


幸の財布は、1万円入っていた。

しかし、ゲームのプレイに沢山の散財をしてしまった為、もう所持金は雀の涙程になっていた。

お金の少ない財布を見つめてため息を吐く幸。

悲しみに暮れていると、ノノカは次のゲームに目を光らせた。


「ん…、あれなんだろ!!?紫!あそこ見て見て!!人がひとり座ってるとこ!」


「なんだろう!?UFOキャッチャーとは違うね!お姉ちゃん!なんのゲームか見に行こうよ!!」


次に2人が注目したゲームは格闘ゲーム、いわゆる格ゲーだ。

格ゲーのコーナーには、4台ゲーム機が配置されており、その内の1台にフードを被って顔が見えない人物が座ってプレイしていた。


「Fu〇k!!!このくそ〇ッチ!!オラ!!オラァァァ!!!クッ!!ア゛ァ゛ア゛!!!!」


物凄い激しくガチャガチャとコントローラーを動かす人物。

2人はその人物を凄い人がいるなと考えながら、極力関わらないように、その人物の隣に勢いよく二人で座ると画面を食い入るように見ていた。

幸もゆっくりと歩いてノノカ達に近づいていくと、ノノカ達の隣の人物が突然話しかけてきた。


「はぁはぁ。クソッタレね。こんなチート使ってでも私に勝ちたいのかしら。まぁ、所詮は無駄な努力なんだけどね。あら…?というか…こんな廃れたゲームセンターにまだ来客?それに、このゲームに興味あるのかしら?ねぇ、お嬢さん達。」


フードを被った人物はどうやら女性のようで、

背丈は幸よりも大きい。スタイルが良く、まるで外国人のモデルのようなスタイルだ。

フードの女性は、2人に顔を向けると一瞬驚いたような表情をして、若干ニヤつく。


「……ッッ?!…Amazing…!あぁ…神よ…。」


なにやら、変な人間にまた絡まれたようだと幸は察した。

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