おさんぽ
私は、竹取紫。
歳は何歳か分からないけど、10歳くらいに見えるらしいから10歳という事にしてるわ。
昔は、パンタという人形の中で眠っていたんだけど、ノノカお姉ちゃんのお陰で目を覚ますことが出来たの。
だから、今は人として幸せな人生を送れてる。
ママもパパもノノカお姉ちゃんも優しくて、毎日が夢のようよ。
ちなみにね、今度から家族がいる学校に私も行くことになったらしいの!楽しみで仕方ないんだけど、身体が運動不足で疲れやすいから、初登校までにお散歩とかを毎日して、体力をつけるように努力してるわ。
お散歩には、いつもノノカお姉ちゃんとネンネが着いてきてくれるから楽しくお話しながら出来てる。
そして、今もお散歩をしているのだけれど、みんなの視線が最近気になるんだよね…。
「お姉ちゃん、私今気づいたんだけどさ、私達っていつも歩いてる人にジロジロ見られてない?」
街中を歩きながら、紫はノノカに自分の感じる違和感について聞いてみた。
ノノカは、ネンネに乗りながら一緒に着いてきていた為、ネンネに聞いてみる事にした。
「そうかな?紫が言うまで気にならなかったよ!ネンネのことが気になって見てるのかな?ネンネはどう思う?」
確かにネンネは歩くだけでかなりの存在感がある。いくらここら周辺の人間が、クリオネロボットによって情報操作されているとはいえ、目立つものは目立つのだ。
しかし、ネンネの感覚だと少し違うようだった。
「私も人間社会だと目立つ存在だと思いますが、私が感じていたものは私にはあまり向けられて無く、お2人に向けられている物だと思ってます。それも敵意とかではく…なにか羨望のような…」
3人が話していると、前を歩いていた2人組の女子高生がコソコソしながら近づいてきた。
ネンネは、ノノカを背負いつつ、紫を背後にして女子高生の前に立ちはだかった。
女子高生は、ネンネに少し怯えながらも警戒心を解くために優しく話しかけてきた。
「あ、あの!!私達…その…遠くから皆さんを見てて…その…。」
恐怖からか緊張からか、言葉はシドロモドロだった。
何が言いたいのか、全く伝わらない事にネンネは次第にイラついてくる。
「なんなのだ!?ハッキリしろ!!お前達は、私の主人達の足を止めているんだぞ!!用がないなら立ち去れ!!!」
ネンネが大きな声を出すと、女子高生達は震え上がって大きな声で即答した。
「い、一緒に写真を撮ってください!!!!」
まさかのお願いだった。
見ず知らずの女子高生がどうして、自分達と写真が撮りたいのだろう?そんな事を考えていると、その後ろからも続々と「私もお願いします!!」や「お!俺達も!!」「サインもらえますか!?お名前は!?」と話したこともない、知らない人達が押し寄せてきた。
「なになに!?どういう事!?あんたら、私とお姉ちゃんになんで寄ってくんのよ!?」
「こ、こらー!!いっぱい来たら妹がこ、怖がっちゃうからメだよ!!離れて!!」
「お前達!!ノノカ様が離れろと言っているのが聞こえないのか!!!そこをどけ!!!!」
ネンネやノノカが制止しようとするが、さらに集まっていく人々のせいで、その声は掻き消されて行く。
収集がつかなくなり、目の前にいた女子高生にとりあえず事情を聞くことにした。
「みんなどうして、ノノと紫と写真が撮りたいの?すごいよ、もう動けないくらい人がいる!!」
「ご、ごめんなさい、!私達が話しかけちゃったせいで…。実は、お2人は最近この地域でちょっとした有名人でして…。その〜…すっごく可愛い姉妹が居ると…。」
ここ数日の間にSNSの中で、知らないアカウントからノノカと紫の遠くから撮られたツーショット写真が投稿されていた。
その写真は、なんということか、若者の中でまさかの大バズりしてしまっていたのだ。
ハッシュタグで♯天使姉妹、♯1000年の奇跡
で拡散され、その広がりは数万再生を記録していた。
ノノカ達はおろか、幸達ですらその事実を知らなかった。
だからこそ、それを知っている人間がジロジロとノノカ達を遠くから見ていたのだ。
事実を知ったノノカは、紫とどうしようか迷った結果、全員と写真を撮ってあげることにした。
「私、お姉ちゃんに比べるとそうでも無いと思うけどいいの?あんたらの期待に添えてるのかしらね。」
「何を言っているんですか!!あの子はまだ小さいから、これからの原石ですが、あなたは既にかなり完成されている。美しい灰色の髪に、綺麗な薄紫色の眼差し!まさに宝石そのもの!!」
「は、はぁ…。」
もはや、ファンクラブの撮影会のような物が始まると皆1人ずつならんで写真を撮り始めた。
列は時間が経つにつれて、長蛇の列になる。
夕暮れまで撮影会は続き、クタクタになったノノカ達は撮影会が終了したあと、近くのアイスクリーム屋さんにアイスを食べに行くことにした。
「ノノもう疲れたあ…。パシャパシャされて、目がしょぼしょぼだよ…。」
「お姉ちゃん、私もよ。あんなに人が来るとは思わなかったわ。どんどん増えてくんだもん。もう次は、逃げないとだわ!」
「申し訳ございません。ノノカ様、紫様。次は私が1人づつ片付けます!!」
2人の疲れた様子に、アイスクリーム屋さんの店主が1つアイスをサービスしてくれた。
「見てたよ。お前さんらべっぴんさんだもんな。ほれ、アイスサービスしてやっから、そこのベンチでゆっくり休みな!」
店主は暖かい視線で2人を店のベンチで休むよう促した。
2人は、店主にありがとうと伝えて、ベンチに座る。
そして、その日はアイスをペロペロと食べながら、夕日を眺めた。
その日から数日が経つと、この2人の写真は地域の学生達や大人達の中で更に拡散されてしまい、とうとうネット上で【エンジェルズ☆ファンクラブ】というものまで出来てしまう事となった。
エンジェルズ☆ファンクラブにて人気が高い方は、幼い子供であるノノカよりも紫の方であり、ファンの中ではノノカはその妹という位置づけとなっているらしい。
2人がそのサイトの存在に気づくことになるのは、まだ少し先の話。
ファンクラブの設立か!?
彼女達の美貌が、際立つものがあったとか。




