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竹取 紫の誕生日

あれから数日が経った。

ノノカ達は、パンタをクリオネロボットに預けてからも毎日変わらずに楽しく過ごしていた。

そして、とある日の朝にとうとう姿を消していたクリオネロボットがいつも移動に使うゲートが幸達の前に姿を現した。


「これって…!?まさか!!ノノちゃん!!竹取くん!!!」


朝食を準備していた癒菜は、おなじベッドで寝ている2人を起こしに行った。

早朝に起こされた2人は、寝癖もすごい状態でリビングに欠伸をしながら歩いてきた。

眠そうに目を擦りながら、開いたゲートを見つめると、ノノカと幸は咄嗟に脳が覚醒した。


「…!?ママ…!!まさか!!!」


「おお!!終わったのか!出られたのか!?あいつは!!」


2人がゲートに注目していると、ゲートの中からうっすらと声が聞こえてきた。

なにやら、若い女の子らしき人物とクリオネロボットが言い争いをしているようだった。

気になった3人は密かに耳をすまして聞いてみた。


【早く行くんだ。理性を持つお前をこの場に置いておくことは出来ない。早くこのゲートを通れ。急げ。】


「あ、あんたね!!押さないでよ!!分かってるわよ!でもね、私だって心の準備ってもんがあるわけよ!分かる!?」


【くだらない。早く行け。】


「あーもー!!!分かったわよ!自分で行くから押さないでって!!コケたらどうすんのよ!!!」


ゲートの奥側から、走ってくる足音が聞こえた。

耳をすませて聞いていた3人は、慌ててゲートから下がる。

少し様子を伺っていると中から15歳くらいの灰色の髪の毛をした少女がゲートから顔を覗かせた。

少女は3人の顔を見ると顔を赤らめながら挨拶をした。


「や、やっほー久しぶり。パパ、ママ、お姉ちゃん。」



その場にいた皆が想像していた姿とは違った。

ただ、理解はできた。皆は口を揃えてその名を呼んだ。


「「「パンタ(ちゃん)!!!」」」


パンタは、恥ずかしそうに頭を少し掻きながら頷き、ゲートから出てくる。

彼女の手には、元々囚われていた人形があり、大切そうに抱き抱えられていた。

そしてパンタがゲートから完全に出ると、その後ろからクリオネロボットも出てきて、パンタの肉体について幸達に伝えはじめる。

どうやら、パンタの本来の月夜としての人間の身体が既に存在しない為、新たに身体を一から構築する事になったらしい。

そこで魂体に合った身体を作る為に魂体自体をスキャニングしたらしいが、魂体自体が特殊な環境下に何度も晒されてしまった影響から、通常の身体構築が出来ない状態とのことだ。

そのような状態で、無理やり身体を作ったようだが、無理やり作った影響が出てしまう結果となる。

彼女は幼体ではなく、少し成長した姿で、髪の色も色素が抜け落ちた灰色の髪色で出来上がってしまったようだ。

しかし、当の本人はその身体をかなり気に入ってるようで、そのまま魂体移植をしたそうだ。


「お姉ちゃんよりか、私の方が大きくなっちゃったけど、この身体可愛いでしょ?だから、この身体で生きてくってきめたのよ。」


パンタは、新しい身体の容姿にかなりの自信があるようだ。確かにスタイルも良く、かなり美人だった。


【では、もう戻る。私の役目はこれで終わりだ。】


クリオネロボットがパンタを連れてきて、また母船の修復に戻ろうとした時に、幸はクリオネロボットを引き止めた。

クリオネロボットは、突然停められた事に驚きはしなかったが、すぐに幸に止めた理由を尋ねた。


【竹取幸。なぜ私を止める?まだ何か用か?】


幸は、なにやら聞くのを躊躇っているようで、なかなか言葉が喉から出てこないようだった。

しばらく「あっ…。えっと…。」とどもった後に

「今度…聞きたいことがある…。」と言ってその場は引いた。

クリオネは、その行動に疑問を抱きながらも、黙ってその場を後にする。


母船へ帰ったクリオネロボットは、パンタの身体を作った装置の前に行く。

装置を眺めながら、少し呟いた。


【しかし…理解不能だな。肉体の構築を行ったのに、何故ノノカ様やツフィア様と同じ現象が、あの魂体には起きないのだ?彼女は、()()()()()()()()()()


呟きながら、浮遊して移動を行うと、クリオネロボットが最近作成したと思われるパンタの魂体の資料を確認した。


【(まだ母船の修復には時間がかかる。私は、個別調査を続けよう。この調査は今後クロノアの為になる。彼女は貴重な研究対象だ。)】


場面は変わり、ノノカ達はパンタの誕生日パーティーの準備を始めていた。

パンタの明確な誕生日は分からなかったが、帰ってきた日を誕生日にしようとあらかじめ決めていたのだ。

座ってて!とノノカに言われ、大人しく座っていたパンタは、あっという間に部屋が様変わりして行くのを傍観していた。

しばらくすると、気まずそうな石作がノノカ達の家に来た。なにやら手にはパンタ用のお菓子を持っているようだ。


「この間と随分と違うな…。これ…食えよ。あん時は俺も悪かった。ノノカ様を守るために必死だったんだ。」


ノノカはパンタの世界から帰還した時に、石作にお願いをしていた。

パンタを嫌わないで欲しい。仲良くしてあげてほしい。戻ってきたら酷いこと言った事を謝って欲しいと。

そして、石作は数分前にパーティーをするから家に来て欲しいと幸から連絡を貰っていた。

行くのも嫌で、謝るのも本当は嫌だったが、ノノカの言うことに逆らえるはずもない。

嫌々ながらも、お詫びのお菓子を持って訪問したようなのだ。


「ありがと。私も悪かった。私にお菓子を作る力はもう無いから、助かるよ。」


パンタは、素直に石作からお菓子を受け取ると

嬉しそうに感謝を伝えた。

それから数十分後、誕生日パーティーの装いが完成し、お祝いが始まった。


「じゃあ、パンタちゃんが帰ってきた今日が誕生日という事で、みんなで歌いましょう!せーの!」


「「「「ハッピーバースデイートゥーユゥー♪ハッピーバースデイートゥーユゥー♪……」」」」


癒菜の合図とともに、誕生日ソングを歌いだす。

パンタは、初めて聞く歌や初めての誕生日パーティーにワクワクした目でとても嬉しそうだ。


「「「「誕生日おめでとう!!パンタ(ちゃん)!!!」」」」


「みんな!ありがとう!!」


パーティーは、とても賑やかなものになった。

誕生日用のショートケーキをノノカとパンタはお互いに食べさせあったり、ゲームで盛り上がったり、皆で用意したパンタへのプレゼント(洋服)をあげたりした。

夜遅くまでワイワイとした後に、パーティーは締めくくられることとなる。


「そういえば、これからパンタは現実世界で生きてくことになるけどさ、パンタって名前じゃなくて別の名前がいいんじゃないか?」


幸はパーティーの終わりに、ふと疑問に思ったことを話す。

確かにパンタという名前は珍しい、元々は人形の名前でもある。

みんなは、少し考えると癒菜はいい事を思いつく。


「じゃあ、パンタちゃんの名前は紫でどうかな?竹取紫!とても素敵な名前だと思うから。」


「紫…それって…」


この名前の意味を分かる人間は、癒奈の他に、この場に置いて幸だけだ。

今は亡きパンタの本当の母親の名前。それをこの子が引き継ぐ事になる。

パンタは紫という名前を聞いた時、とてもしっくりきたようで、喜んでいた。


「竹取…紫!!素敵な名前。なんだか、すごく馴染みがあって、暖かい気持ちになれる。私、この名前がいいわ!!」


こうして、竹取ファミリーに新たに竹取紫という美しい娘が加わったのであった。

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