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帰ってきたお家

「きゅ、急になによ!!ついさっきまで私の事捨てようとしたくせに!!あんたは敵!信じられない!」


動揺するパンタ。それもそのはず、つい先程まで自分のことを拒否していた人物が、急に方向転換して自分を家族として受け入れようとしてきている事実。

嘘か本心かも分からない、そんな言葉をすんなりと信じられるはずもなかった。


「そうだぞ!!竹取!!いくらノノカ様の父親としてお前が居るとしても、こんな奴をノノカ様の近くに置いておくなんて…!!危険すぎる!」


石作はこれまでの事情を知らない。

先程まで、ノノカ以外の全員の命を脅かしていたパンタを自分の主人の近くに置くことに対して、危険だと警鐘を鳴らす。しかし、幸の心は変わっていないようだった。


「約束したんだよ、お前…じゃないのかもしれないが、助けるって。俺は約束だけは守りたい人なんでな。ノノカもそれでいいよな?石作もノノカがいいならいいよな?」


動揺して固まっているパンタを見ながら、幸は石作とノノカに問いかけた。

石作は、ノノカの指示や想いを否定や拒否を絶対にしない。彼女が良しと言えばそれに従う他ないのだ。

幸の言葉にノノカは嬉しそうにその場でバタバタする。


「うん!!!パンタ!私達家族なら、パンタはこれから私の妹だよ!幸はパンタのパパで、ママはママだよ!たくさん遊ぼうね!」


ノノカに咄嗟に手を取られたパンタは、そのままノノカの勢いに任せて、その場でくるくると円を描くように回り出した。

やられるがまま抵抗なくされながら、頭の中を整理しているパンタ。


「わ、私が家族…?妹?ノノカちゃんが私のお姉ちゃん?ほ、本当に…いいの?あの男は私の敵じゃないの?私のパパになってくれるの?」


ようやく少しずつ整理出来てきたパンタは、少しずつ嬉しそうな表情へと変わっていった。

その様子を近くで見ていた癒菜も母親のように優しい目で眺めており、嬉しそうにしている。


「あぁ、こんなつもり無かったんだが仕方がない。また騒がしくなるな。」


「ノノちゃんに、パンタちゃんまで加わったら毎日がもっと楽しくなるね!!」


仕方ないと感じていた幸は、自分はどれだけお人好しなんだと思う。

また面倒が増えるし、更に目立ってしまうというのに、癒菜やノノカ、それにパンタが喜んでいる様子を見ると、満更でもなかったからだ。


「………そっか。私、私に家族…。嬉しい嬉しい嬉しい。月夜、私、あんたに託された想い、叶えられそうよ。」


パンタは、何度も喜びを噛み締めている。

そして、ノノカから一旦離れると幸の前にきて、幸を抱きしめた。

そして、抱きしめながら自分の全てを幸に託した。


「パパ、待ってるから。私をここから出して。」


パンタの最後の言葉と同時に、パンタの空間は眩く光り始め、その場にいた全員を飲み込んだ。

幸は光り輝くその瞬間、かすかに声が聞こえた気がした。


「ありがとな、若いの。」


その声はあの話をしてくれた造の声だった。

幸は、きっと先程の様子を見ていたのだろうと思いながら目を閉じる。

再び目を開けると、そこは先程までご飯を食べていた居酒屋だった。

時間は食事後すぐの時間のままで、幸と癒菜とノノカは同じ個室に。石作は別の元いた個室に戻ってきていた。

ノノカの手元には、貰った時と変わらないパンタの人形が座っていた。


「戻…って来たんだな?俺達。」


「そう…みたいね。竹取くん、時間も全然経ってないわ。私たちが向こうに連れてかれて。」


ちゃんと戻れたことに喜んでいると、ノノカは手元のパンタ人形を胸に抱き抱えて立ち上がる。


「さち!ママ!!早くおうち帰ろ!パンタをここから出してあげないとだよ!」


ノノカは、張り切っていた。どうやってここから出してあげるのか全く分かっていなかったが、幸なら何とかしてくれると信じていたからだ。

早くパンタとも一緒に生活をしたくて仕方なさそうな雰囲気だった。

2人もノノカに同意すると居酒屋を後にした。

石作は、3人と一緒に行動はせず、後ろから見守りながら護衛を続けていった。


自宅に帰り着くと、自宅で待機していたネンネが飛んできてノノカにくっついた。

外で護衛できなかった分心配していたようだった。

そして、早速幸は天井を向いてクリオネロボットに向かって事情を話し始めた。クリオネロボットが聞いているのかどうかも確証はなかったが、とにかく語り続けて、パンタを助けて欲しいと求めた。

しばらく反応がなかったが、ずっと30分ほど語り続けると3人の頭の中に声が響き渡った。


【竹取幸。お前は私に語りかけているのか?】


ようやくクリオネに幸の声は届いたようだ。

どれくらいのタイミングでこちらの様子を覗き込んでいるのか不明だが、運が良かった。

幸は、これまでの経緯とパンタについてを全て話した。


「…という事なんだが、あんたこの人形の魂体?をここからだして、ノノカみたいに人間の身体を作ってあげることは出来ないか?」


幸の問いかけを受けると、クリオネロボットはすぐに反応を示した。


【…竹取幸よ、それは興味深い事案だ。少し待て、そちらへ行こう。】


そういうと、その瞬間幸の目の前にゲートのような物が現れて、クリオネロボットがそこから出てきた。

クリオネロボットは、ノノカに対して礼をすると、ノノカの手元にあるパンタに軽く触れた。


【ふむ…。確かにこの人形とやらからは、魂体を複数体感じる。ほぼ全てが修復不可な程朽ちた魂体だが、一つだけまだ生きた魂体が居るようだ。ツフィアの伝説は我が星でも有名な話。もしもこの魂体の元がツフィア様だとすれば、保護対象にはなる。】


保護対象に入ると聞いて喜ぶ幸達。

これで、パンタをここから救えると思ったからだ。

しかし、クリオネロボットは、人形から手を離すと少し思考しながら離れた。

ノノカは少しその様子を見て心配になる。まだクリオネからはパンタを救うと聞いていないからだ。


「クリオネさん…?パンタをここから出してくれるんだよね?私早くパンタとまたお話したいの。」


ノノカの心配を感じとったのか、クリオネは更に思考しながら空中を漂っていた。

喜んでいた幸は、その様子を見て助けてくれないのか?と尋ねると、クリオネは事情を話し始めた。

本来、肉体の生成や再構築の装置は緊急時以外では使用自体、星父の意向によって禁止されているものだった。

現時点でも母星との通信機能が何故か戻らない為、これをクリオネロボットの独自の判断で実行していいのか分からないとの事だった。


【私は、あくまでノノカ様の保護を目的とした生体兵器のようなものだ。我らが母星の主権たる星父様の指示を破る行為は進んでできない…。】


クリオネロボットは深く思考するも、自らの意思で違反行動することに、躊躇しているようだった。

すると、ノノカがクリオネロボットに向かって自らお願いをした。


「クリオネさん、お願い。この子は私の妹なの。ここから出してあげて。」


【ノノカ様…しかし…。】


「お願い」


クリオネロボットの思考はオーバヒートしそうな程、回路を巡り巡ったが、最終的にはノノカの指示に従うという行動に踏切った。普通のロボットでは考えられないメインプログラムに抗う行為に進んだのだ。


【ノノカ様…ご命令に従います。】


ノノカからの指示を受けたクリオネロボットは、ノノカからパンタを受け取ると、その場からゲートを使いノノカの船へと一旦戻った。

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