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それぞれの形

造達が飛ばされた光の中は、意識が何度も飛びかけるような心地良さがあった。

造は、ふと抵抗できない光の中で薄く目を開けると月夜と造は傍でくっついており、遠くには光の中で宙に浮く網で捕まった動かない村の男たち。

更に点のように見えるくらい遠くに飛ばされているのはルーファと一緒に来ていたクロノア人達だった。

月夜によって光に吸い込まれる瞬間、造から離されたルーファは既に姿が見えなくなっていた。光に吸い込まれる過程の衝撃で、かなり遠くに引き剥がされてしまっており、もはや造が確認できる範囲には見えない状況だった。

造を強く抱き抱える月夜は、光の中の眩しさに目を開けられないようで目を閉じて力んでいた。


(月夜や…。結局こうなってしまったんじゃな。救えなくてすまんかった。)


光の中を漂いながら、造の身体の寿命が尽きる時、突如造と月夜の身体が光によって分解される。

分解された2人の身体からは、魂が光の玉となって飛び出した。

造の魂は、大きく光り輝いていたが月夜は違った。身体から出てきた魂は小さく、造と比べると一回りも二回りも小さい。

そして、彼女の魂体は2つあるようだった。

光の中を成されるがままに飛んでいく2人の魂は、次第に月夜の魂体が造の魂体を取り込み始めた。

造を取り込んだ月夜の魂体が少しづつ形を崩しながら浮遊していると、遠くの方から同じような魂が複数、月夜の魂に絡みついてきて、最終的には多くの魂の塊となっていった。


もはや、意思も何も無いその魂達は時代を超え、世界を超え、どこかの国の新しい人形店にたどり着き、パンタ・ロマーリエという当時の新作商品の中に入り込むこととなる。

その後人形に入り込んだ後、何故か造のみの意識が覚醒し、人形の内側から世界や移りゆく時代を何年も何年も1人で暗闇の中から見続けるのであった。


「これが、ワシらがこの窮屈な人形、パンタ・ロマーリエに囚われてしまった理由じゃ。長くなってしまってすまんかったな…。」


「……。」


造がこれまでの経緯についての話を終わると、幸と癒菜は神妙な面持ちで黙り込んでいた。

月夜と呼ばれる恐らくノノカの姉妹であるツフィアと造の話と幸達の現在置かれている立場が似通っているからだ。

造は、そんな2人の事情を知らないからか、暗い顔をする2人を見ても何も気づかず話を続けた。


「ワシは、あの子を救いたい。今まで目覚めなかった魂が、ノノカという子を見て何故か覚醒したんじゃ。あの子は、ただ自由に生きたいと願っただけの普通の娘。身体はもう無いがここから出してあげたい。なんとか協力してくれんか?」


物凄く長い時の中で魂も朽ちて、もはや当時の原型もない姿として、パンタの中で生きている造だが、目覚めた娘の魂をなんとか救いたいという生前の想いを今もまだ持ち続けている。

だから、造は自分達の世界に入ってこられた特異な人間である幸達を頼るしかなかった。


「でも、造さんのお話を聞いて思ったんですが、この状況は私達でどうこうできるレベルの話では無いような…。ここから出すって言っても私達にはその方法が無いんです。月夜ちゃんともまだ一度も会えてない状況で。」


頭を抱える癒菜を隣に、幸はボソッとつぶやく。


「クリオネに聞けばなんとかしてくれるかもしれないな。ノノカの姉妹の事だし。」


幸の呟きに、はっ!!っとなる癒菜。

確かにあの得体の知れないクリオネロボットであれば何かしら対応出来るかもしれない。

そんな期待が生まれる。


「あ!確かに!あのクリオネロボット凄い性能持ってそうだもんね。なにかしら方法を知ってるかも。」


「なにか手があるのか!?頼む!ワシに力を貸してくれ。今生の頼みじゃ。」


期待に胸を膨らませる造と癒菜。

そんな2人に対して、幸は少し何かを考えている様子だったが、造の頼みを了承する事にした。

とにかくこの状況をどうにかするのが先決だと考えていたからだ。

幸と癒菜は、早速ノノカ達を探しに行こうと立ち上がるが、造は動こうとしなかった。

てっきりこれから一緒に行動してくれると考えていた2人だったが、どうやら造曰く、造は月夜に会うことが出来ないようだった。

同じ空間内に居るのは感じるようだが、近づこうとするとなにかしらの接触を拒む力が働いて一切距離が縮まらないという。

協力できない事に申し訳なさを感じている造を背に幸達は造の家を後にした。


「ねぇ、竹取くん。造さんのこれまでの話、私達も他人事じゃないと思う。これからの事とか色々考えていかないといけないんじゃないかな。月夜ちゃんも…どうする?」


ノノカを探すために走って向かっている幸達。

ふと、癒菜が幸に造の話を聞いた上で、これからどうしていくのか聞いてきた。

癒菜はしっかりしている女子だ。しかし、もし、現代において造達と同じ事が起きてしまった場合の事を考えると今後の不安さがよぎっていた。


「確かに。あんのクソクリオネ野郎め…。子供に戻ったノノカがすぐに成長して星に帰るまで面倒見るっていう単純な話じゃねーじゃねーか。とんでも無いことに巻き込みやがって!!俺は目立つのも厄介事も嫌いなんだぞ…。」


幸はクリオネに対して愚痴をこぼす。

目立つことが嫌いな幸が、いつの間にか世界の命運を握っている存在になりかけているのではないか?そんな事を考えるとクリオネに対しての怒りが止まらなかった。


「まぁいい…。とりあえず、この問題は置いとくか。今はノノカと月夜を助けることを考えよう。ここでかなり休めたし、早くノノカ達を見つけ出さないと。」


「そうだね。今はノノちゃん達を早く見つけてどうにかしないと!石作くんも多分ずっとノノちゃんの為に頑張ってくれてるだろうから!」


2人は不安を感じつつも、とにかく走った。

ノノカ達を助けに行くために。


その頃、石作とパンタは未だに小競り合いをしていた。

お互い息を切らしていて、石作に関しては既にボロボロな状態だ。

ノノカはパンタを止めようと必死になっていたが、パンタは聞く耳を持たない。

服を引っ張って止めようともしたが、無駄だった。


「はぁ…はぁ…。ノノカ様、ご尽力ありがとうございます。貴様、そろそろ諦めたらどうだ?この亡霊野郎。どんだけ穴に落とそうが、骸骨ゾンビを出そうが、俺は構わないぜ。」


石作は、パンタを挑発する。ボロ雑巾のようになりながらも何度も立ち上がる石作を見て苦虫を噛み潰したような表情をするパンタ。


「アンタ、しつっっこいのよ!!!私は、ノノカちゃんを諦めない!!私のものよ!!」


「パンタ!!あの人沢山怪我してるよ。ダメだよ、酷いことしたら!!」


睨み合う2人にそれを止めようとするノノカ。

終わりの見えない争いに、とうとうパンタが最終手段を取る。

自身の手にかつての咲命の国で使われていた刀を作成した。

刀身は驚くほどきめ細かく、名刀の如き輝きを放っていた。

それを見て驚く石作とノノカ、パンタは不敵な笑みを浮かべながらジリジリと石作に迫り始める。


「これが何か知ってる?とっても怖いものよ。人の命を容易く奪うことが出来る物なの…。貴方にこれが耐えられるかしらね。」


刀を大きく振りかざし、石作に向かって走り出すパンタ。

それを見て構える石作、本能的にあれは危険なものだと感じたノノカも走り出して止めに入る。

そして、思い切り切りつけようとした瞬間に、石作とパンタの間に割り込んで石作を守ろうとした。


「パンタ!ダメー!!!」


「ノノカ様…!!?」


(…ッ!!!…ノノカちゃん!どうして!?ダメ…!!もう止められ…!!)


刀は思い切りノノカに向かって振りかざされる。

造と一緒にいる数体のゾンビは、かつて造と共に戦った村の男達の成れの果てだ。

彼らの魂は、造や月夜のように戻ることはなく、朽ち果てて今や造と月夜の言うことのみを聞く、ゾンビと化した。

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