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宇宙戦時

開戦宣言から翌日には、村に大規模な軍が展開されていた。

その規模は、10万規模の武装した兵士だ。騎馬隊や弓隊、足軽隊など大規模な戦争を始められる大戦力だった。

村の住人である女、子供は家の中に避難して出てこなくなり、男共は月夜を守る為に戦う意思を示し、武装をして造達の護衛に回った。

数日間駐在していると、等々月夜の兄妹と思われる訪問者が空に舞う乗り物から舞い降りてきた。

その姿は、よく分からない装いを頭部を含めた全身に着ていて容姿をよく確認できなかったが、神々しく軍の内部にも彼らを神と崇めてしまうほどの者だった。

貴公子達も武装をし、前線に立っていたが、まさかの空からの登場に驚きを隠せない。


「な…ッ!!ま…さか、あれがクロノア国の者共か?あれは人間なのか!?なぜ空から降りてくる!?」


「人か?物の怪か?なんなのだあれは。」


貴公子達が空からゆっくりと降りてくる数人のクロノア人に戸惑っていると、頭の中に声が響き渡った。


【惑星の原子の民よ。我々は、ツフィア・リリアル・ファレ・クロノアを迎えに来た者だ。大人しく差し出せば危害は加えぬ。ここに居るのは分かっているのだ。さぁ、ツフィアをよこせ】


貴公子達には、何を言っているのか理解ができなかった。ツフィアなんて人間を知りもしないからだ。しかし、クロノアという単語にて彼らが敵国クロノア人であると言うことを理解した貴公子達は、咲命の国の全軍に戦闘態勢を命じた。


「貴様らが何を言っているのか分からぬが、他国に無許可で入り込んできた貴様らは、我ら咲命の国の脅威であると認知した。我々は、貴様らのような侵略国を許しはせぬ!!全軍、かかれー!!!!」


貴公子達の合図とともに、弓兵の無数の矢がクロノア人達と宙に浮かぶ乗り物に降りかかる。

地上に降りてきたクロノア人の1人は、腰にかけて合った鎖のような物を取り出すと、空高く投げる。

すると、鎖のようなものは、赤い光を繋ぎ目から放ち始めると空中で直線上に固まり、クロノア人達を囲むように鎖の先から白い稲妻のようなものが広がり、降り注ぐ矢を全て燃やし尽くした。


「わ、我々の矢が全て焼かれただと…!?なんなのだあれは!?」


咲命軍がその光景を見て呆気にとられていると、別のクロノア人が理解不能な言語を言い始める。

その瞬間、空で滞空していた乗り物から、黒い光の槍のような物が軍の中心に落ちてきた。兵士たちが中央に落ちてきた光の塊に警戒をしていると、土に刺さった黒い光の槍は、次第に震えだし、その場で大爆発を起こした。爆発は周囲数kmを一瞬にして灰と化し、深いクレーターのような物を作り出してしまう程の威力で、軍の中枢を消し去る。そして貴公子達や外側に展開していた軍すらも爆風で吹き飛ばしてしまった。

そして、その爆発は村全体をも巻き込んでしまう事となる。家の中に隠れていた女子供達の姿も家ごと消し飛んでいた。


「フム。野蛮な民族だ。軍から()()()()()を持ってきた事は正解であったな。星父様のお導き、偉大なり。」


【原子民族の制圧完了。本機に命ずる。生きている原始生命体の回収後、ツフィアの魂体の位置を探れ。この星からは出ていないはずだ。】


荒野と化した村のあった土地から、クロノア人達は立ち去っていく。生き残っていた兵士達数名と貴公子は、立ち上がることも出来ない。


「我々、咲命の軍が、民が…。あれは…神…か……。」


貴公子達と兵士達の士気は一瞬で無くなり、次第に抵抗する力すら無くしていった。


そして、それを遠くの山から見ていた造達と護衛役の村の男達数十名は、その強大な力の恐ろしさに絶望を隠せなかった。


「わ…わしのせいで皆が…。こんな事が…。」


「俺たちの村が…!!そんな…そんなあああ!!!」


「ありえん…。あんなの人間の御業ではない…。神じゃ。月夜や、あれは本当にお前の兄妹なのか…。」


造含めて村長や村の男達は、信じられない光景に震えが止まらない。

月夜は、顔を伏せてもはや言葉も出ないようだった。


(あの兵器は…そんな…!まさか…あのハイアグンなんてものを装備してるなんて…。予想外の事態だ。私のせいで皆が…!!兄妹達に感情や心、意思なんてのは存在しない…このままじゃお父様や皆も無慈悲に殺されてしまう…!!)


月夜が考え込んでいると、造は月夜の背中をさすって励ました。

その造の姿は、絶望を何とか隠そうとしているようでいたたまれないものだ。


「…大丈夫!大丈夫じゃ、月夜。大丈夫じゃぞ!ここは山の中、見つかるはずは無い!安心せい、ワシが絶対守るからな…。」


造が励ましていると、またもや全員の頭の中に無機質な声が響き渡った。


【魂体検知。見つけました。そこにいましたか、妹よ。さぁ、私達の元へ戻りなさい。星父様は大変あなたの帰還を待ち望んでおられます。あなたは私達の元へ帰るべきなのです。】


気づいたら造達の山の上空にいつの間にかクロノア人達が乗っていた機体が滞空していた。

そして、遠くの方から先程降り立った数名のクロノア人達ももうすぐそこまで来ている。

山の中だと言うのに即見つかってしまった事に驚く造達。


「し、信じられん!!こんなに木がおおい茂っておる山の中のワシらをこうも簡単に見つけたというのか!?つ、月夜、ワシの後ろに隠れておれ!!」


造は、咄嗟に月夜を自分の背後に回し、迫り来るクロノア人達の前に立ち塞がる。

到着したクロノア人達は、造の至近距離まで近づいた為、装備の中の姿が少し伺えた。

その姿は、ピンク色の髪に、青い澄んだ目をした見た目は人間とあまり相違ない男と女だ。

クロノア人は、造達と月夜を見回すと地面に降り立った。

表情は、やはり無表情で目に光は無い。まるで機械人間のような姿だ。


「ツフィア、迎えに来た。我々と共に来い。これは命令だ。お前は重度の魂体汚染が確認されている。魂体の浄化とその肉体も廃棄対象だ。そして喜べ、その肉体は研究材料となる。さぁ早く星父様の元へ戻り、全てを精算せよ。」


「そ、そんな!!嫌です!!ルーファ兄様!私は汚染されてません!それに、この肉体の廃棄って、人間としての身体を殺すのですか!?」


月夜は焦っていた。目の前にいる月夜の兄であるルーファという人物から放たれた言葉には、この星での記憶や感情などといった物の抹消、そして、今現在月夜として生きている人間としての肉体を魂体から引き剥がした後に殺処分にするという残酷な罰だったのだ。

これまでの造や紫との生活、そして村での生活などの大切な記憶を全て消された上、しっかり育ててくれたこの人間の身体を殺されて、研究材料にされる。そんな事、死んでも嫌だった。

涙を流す月夜をかばいながら、造はルーファを睨みつける。


「お前!!月夜の兄なのじゃろう!?なぜそのような残酷な事が出来るんじゃ!!頼むから月夜の事は放っておいてくれ!!」


ルーファは、月夜を庇うようにしてルーファと月夜の間に立つ造を見る。

その表情にはやはり感情の欠片もなく、冷たく冷酷な目をしていた。もはや生物としての魂は存在しないのではないかと思うくらいに。


「月夜?なんなのだ、その汚らしい名は。…もうお前達のような野蛮人と話す事は何も無い。私に話しかけるな。そして、そこをどけ。」


ルーファは、造を威圧して造の左腕に目掛けて何かを投げた。すると造の腕はたちまちボロボロと組織が崩れ落ちた。


「ぐぁあああああ!!!!」


「お父様!!?お父様!!いや!!いやあああ!!!私のせいで…!!そんな…そんなああ!!もういい!もういいです!!これ以上私を庇わないでください!!!皆さんもお願いします!!!」


痛みからか、全身から汗が止まらない。意識が何度が途切れそうになりながらも月夜を庇う姿勢は変わらず続ける。

月夜は号泣しながら、造の前に出ようとするも造は他の腕でそれを止める。

村長を含めた村の男達は、そんな造を見て使命感からかそれぞれが手に持った鎌や熊の手などを力強く握りしめて、恐怖に駆られながらもルーファ達クロノア人に雄叫びを上げながら立ち向かう。

するとルーファは、他のガタイの良いクロノア人に合図を送る。

合図を受けたクロノア人は、村の男達一人一人を武力であっという間に制圧した。拳のみで武器を持った男達を難なく制圧する姿は圧倒的なものだ。


「ライラン。もういい。こいつらは生け捕りにして、星父様の元へ連れていく。生体実験の材料だ。殺しては意味が無いだろう。」


ルーファはライランというクロノア人の暴行を止める。

既にこの場で意識を持っている者は、造と月夜の2人だけとなってしまっていた。


「月夜!月夜!!ワシから離れるんじゃないぞ!!いいか!!」


「うッ…うぅッッ!!ルーファ兄様!もうやめてください。どうしてこんな酷いことを!!私はあなたを許さない!!」


泣きながら後退りをする月夜、そしてそれを守る造を見てルーファは何をしているのか理解ができない様子だ。


「ツフィア、お前の目には大量の水が見える。それは、その生物の身体の防衛本能か?なんなのだ?」


月夜は、涙を流しながらルーファに伝える。


「ルーファ兄様……私は今悲しいのです。これは、私達には産まれた時から持ち合わせていない物です。なぜでしょうね…。」



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