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開戦宣言

村のある日、村の中央広場に咲命の国の貴公子達が1人の翁に全員集められるという異例の事態が起こっていた。

村の翁の名は、造。

彼は、世界一美しいと噂されている月夜の父として、彼女を娶りたい貴公子達を呼び寄せる力を持っていた。


「それで、我々を呼んだのはそなたの父と聞いておるが、我々を呼びつけるとは大層なことよ。我が国の家臣ですら我々をそうそう呼ぶことは出来ぬ。つまらぬ事で呼びつけたのではあるまいな。」



少し不機嫌気味な貴公子達は、月夜に迫る。

月夜は中央広場の中心にある足台のような所に立ち、貴公子達を見下ろす形で凛とした態度を取りながら貴公子達を見つめていた。

月夜に惚れている貴公子達は、皆月夜の期限を損ねる事だけは避けたかったらしく大人しくしている。

しばらくしていると、月夜の後ろ側から造がゆっくりと歩いてきた。

造は貴公子達を遠目から全員確認すると、足台に登り月夜を下がらせた。

造に見下ろされる形となった貴公子達は、更に不機嫌になりはじめた。

単なる村人のそれも翁風情に見下ろされる事がプライドを傷つけていたからだ。


「貴公子様方、本日は私のような者のお声に耳を傾ける為、村にお伺いして頂き感謝申し上げます。」


造は、深々と貴公子達に頭を下げた。

村の中央広場には貴公子達の他に村人達も集まっており、造達の様子を伺っていた。

かつて村娘が殺された事を覚えている村人達は、貴公子達に対しての警戒が強く、近づくことは無かった。


「おいおい、あの爺さん大丈夫かよ。奥さんアイツらに殺されてるんだろ?今度は何しでかすつもりだ。せっかく月夜が自分を犠牲にして助けてやってたってのに!」


「フンッ。あたしゃ月夜みたいなのも、あの爺さんもどうでもいいよ。もう村に厄介を連れ込まないで欲しいもんだね!本っ当に迷惑だわ。」


村人達からは、様々な言葉が飛び交っていた。

その日は村長も造の様子を心配そうに伺っており、月夜の横に並んで立っていた。

造は、深々と下げた頭を上げると貴公子達を真っ直ぐとみて話し始めた。


「本日、あなた方にお越しいただいたのには、理由がございます。ワシの愛娘、月夜に関しての重大なお話です。」


貴公子達は、不機嫌だったが月夜の重大な話と言われた途端真剣な表情で話を聞こうとし始めた。


「ワシの愛娘、月夜でございますが、なんと謎の国の大使から書状が昨日届きまして、月夜をその国の王の妻へする。との一方的な内容のものでした。そして、欲求を拒めばこの村及び咲命の国へ攻め入るとの宣戦布告のような内容も…。」


造がそう言うと、貴公子達に緊張と同時に怒りの感情が湧く。

月夜を巡って対立していた貴公子達に突然割り込んできた謎の国の王。そして、自らが統治する国への宣戦布告。とても看過できるような内容ではなかった。

咲命の国の危機でもあるが、貴公子達は月夜を手放すという選択を取る事が出来ない。

貴公子達の周辺にいた護衛兵達は後ろでザワザワしはじめており、咲命の国が戦争になるのでは無いかと気が気では無い様子だ。


「おいおい…!!謎の国って何処だよ!?隣国か?それとも別の国か…!?」


「まさか…貴公子様達、他国と戦争なんておっぱじめないだろうな…?あんな女の為に!!」


護衛兵達は、小国か大国かの詳細も分からない謎の国との戦争を恐れた。

貴公子達は、怒りなどで冷静さを欠いていたが周りのざわめきで一旦冷静さを取り戻す。

他国から届いたという書状を造に自分たちへ渡すよう促し、書状の中身を見た。

冷静に全員で書状を読み進めて、状況を整理すると貴公子達同士で話し合いを始めた。

数分間話し合うと、貴公子の1人が造に話しかけた。


「書状について確認した。我々も聞いた事のない国だ。クロノア国?周辺国家では無いとみえる。この書状が本物であれば、我が咲命の国に対しての侮辱行為および宣戦の布告。我々は咲命の国の統治者として、そして将来の我々の誰かの番になるであろう月夜姫の略奪宣言は伴侶として到底認可できるものでは無い。よって…______」


貴公子は、全員納得した顔で高らかに宣言する。


「我が咲命の国は全戦力を持って謎の侵略国であるクロノア国との全面戦争をする事をここに宣言しよう。」


高らかに宣言する様子を見て、その場にいた皆の顔が恐怖に包まれた。造、月夜、村長の3人を除いて。



貴公子の宣言より数刻前。。。


造と月夜と村長は造の家で食事をとっていた。

造の家の周りには、月夜の護衛兵がウロウロと周囲を警戒している為、外には聞こえないようにコソコソと3人は話をしていた。

夜中に造が竹取から帰ってくると突然着物を纏った月夜を連れ帰って来たので、寝ていた村長はその衝撃的な光景に飛び起きた。

そして、何があったのか事情を月夜と造から聞き、月夜からこれまでの行為に対しての謝罪を受けるとこれまでの月夜の行動を振り返り、謝罪を受けいれた。


「にわかに信じ難いが、まさか月夜がそんな存在だったとはな…。話した人間がお前達じゃなかったらワシは信じれんかった。それで、造はこれからどうするんじゃ?ワシにできることがあれば何でも手伝うぞ。」


村長は、全ての事情を聞くも怖がる様子はなかった。何年も村の長として責任ある立場を守ってきた人間だ。世界の危機だとしても肝が据わっているので何があっても友を手伝うという姿勢だった。

造はそんな村長の姿に救われる。共に戦ってくれる友がそばに居るだけで安心感が違うのだ。

村長に感謝を伝えると、造は自身の考えた計画を伝えた。


「村長、月夜。ワシはな、ワシらだけではとてもお前を守り切れるとは思わんのだ。だから、あやつらの力を借りようと思っておる。そう、貴公子達と咲命の国の軍を利用するんじゃ。」


月夜と村長はまさかの告白に(えっ!?)と言う反応をしてしまう。

造の計画はこうだ。貴公子達は咲命の国の全てを統括している。咲命の国の軍の数の詳細は造達は知らなかったが数万は少なくとも居ると考えていた。

月夜に夢中な彼らを挑発するように誘導して、国を上げて月夜を守るために軍の戦力を持って月夜の兄妹達とぶつけようと考えていたのだ。


「そ、そんな事できるのか!?造や、お前それは危険な賭けではないか?そもそも貴公子達はそんな誘導に乗ってくるんか…?」


「お父様…!!それはいけません!!私は迎えが来たら村から離れたところで彼らと会う予定です。近くに人間がいては必ず何かされます。ましてや、数万の人間が彼らに対して攻撃をしてしまっては、完全な武装をしていないとはいえ、何をしてくるか私にも想像がつきません!!」


月夜と村長はかなり貴公子達を利用することに対して慎重な姿勢を見せる。

しかし、造は折れなかった。


「村長、月夜。もうこれしかないんじゃ。神様の分身みたいな者達から月夜を守るのであれば、ワシら人間の底力を見せるしかない。咲命の国の戦士達はえりすぐりの強者ばかりだと伝え聞いておる。上手く誘導出来れば、なんとか月夜を守り切れるかもしれん。」


造の言い分を聞いて尚、月夜は賛同しなかったが、とうとう造の固い意思により折れてしまう。

それから、造から貴公子を誘導するための作戦を伝えられ、現在に至る。


そして、戦争宣言が貴公子達から言い放たれて数日後に、後世に伝わる大虐殺が繰り広げられる事になる。


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