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冷酷さと残酷な姿

「頭をあげよ。我々は話をしたいだけぞ。」


青色の貴公子の言葉に緊張した造と紫が頭をあげる。

2人は目の前の初めて見る貴公子の姿に視線が外れない。

貴公子達が牛車から降りると、皆で造と紫の前にまで歩いていく。

目の前に着くと早速月夜の居場所について聴き始めた。


「それで我々が探しておるのはな?月夜という噂の女子なんだが、そなたらの子というのは間違いないのか?」


貴公子の問に対して紫は、「違います。そのような者は存じ上げませぬ。」と即答する。

貴公子達が顔を見合わせると、次に別の質問をする。


「ここにおる村娘がそなたらを案内したのだが、この村娘が嘘を言っておるというのか?村娘はここに月夜という女子が住んでおり、そなたらはその女子の親と聞いておるのだがな。」


「そのような事実はございませぬ。なにか、その娘は勘違いをしておるのでしょう。こんな老夫婦の元に若い娘がおりますわけがございませぬ。」


「…ッ!!あんたら…!!あたいが嘘ついてるだって!?ふざけるんじゃないよ!!?貴公子もあたいが嘘ついてると思ってるのかい!?あたいは本当の事しか言わない!!」


とぼける造と紫に村娘が反撃する。

貴公子達は、双方の話を聞いた上でお互いに視線で合図のようなものを交わす。

すると、黄色の貴公子が無言で刀を抜いて凄まじい勢いで村娘と1m程の距離にまで近づいた。

抜いた刃は寸分違わぬ勢いで村娘を腹部を貫くと鮮血が舞ってその場で村娘は大量の吐血をしてしまう。

驚く紫と造を前に、そのまま村娘は倒れてしまった。


「あっぐっ!!!な…に…を…!!?」


薄れゆく意識の中で、村娘は黄色の貴公子を睨みつけた。

貴公子達は、そんな姿の村娘に見向きもせず紫と造を見る。


「次は、そこの老婆の番だ。我々は嘘が嫌いでな。このようになりたくなければ教えるがよい。」


多量の血が滴る刀を何振りかして、血を辺りに飛ばすと黄色の貴公子は刀を手に握りしめたまま紫の前に立つ。

紫は全く微動だにせず表情も余裕のままだったが、造には一滴の汗が滴り落ちる。

少し離れた草むらで状況を見ていた月夜は母である紫の危機に居てもたってもいられなくなり飛び出そうとする。

すると、青色の貴公子が紫に最後の質問をした。


「さぁ、老婆よ。最後に問おう。娘はどこだ?」


最後の質問を受ける時、紫は目を静かに閉じた。

もう己の命がここで終わることを察していた彼女は、これまでの造と月夜との思い出を思い出し浸る。そしてこれからの2人の行く末を案じて神に祈りを捧げていたのだ。

誰にも気づかれない程度に震える手を強く握りしめて、彼女は強い口調で改めて答えた。


「何度聞かれようとも、ワシらの答えは同じですじゃ!!何も知りませぬ。民を脅し、不用意に命を奪われるのはおやめくださいませ。」


その瞬間、紫の左肩から腰に掛けて刀が思い切り振り切られた。

血しぶきを上げながら紫は吐血し、その場に倒れ込むと紫の周りには血溜まりが出来た。

性を宿していた目からは、次第に光が消えていきそのまま絶命してしまう。

隣に居た造は、2人で覚悟を決めていたにも関わらず、堪らず倒れ込んだ紫に覆い被さる形で抱きしめ泣き叫んだ。

愛していた妻を亡くし、声にもならない声で泣き叫ぶ。


「紫やぁ〜…!!どうしてこんなああ…!!ワシらが何をしたと言うんですかあ…!!あぁぁぁああ!!うああぁああ!!!」


紫から離れようとしない造を見て、紫の貴公子が紫の血が滴る刀を次は造に向けようとした時、少し離れた草むらから女性の叫び声と共にこの世のものとは思えないほどの眩い光が放たれた。


「いやあああああ!!!!!母上様あああああ!!!!」


眩い光の正体は月夜だった。

紫が殺される所を見てしまった月夜は、造以上に悲しみと怒りで理性を失う。

月夜がその場で泣き叫ぶと、身体中から光が放たれ始めたのだ。

草むらから放たれる謎の光と叫び声に貴公子達と将軍、そして後ろに控えていた軍が驚く。

何者かがその草むらに居るのは分かっていたが、生い茂る草むらがその存在を隠し、ただただ輝きを増していくだけだった。


「なんだ何が起こっている!?貴公子様!!お下がりください!!ここは危険です!!」


小野上将軍と数名の兵士が貴公子の前に立ち、構えた。

眩い光は、その輝きを時間を追う毎に増していき、周辺10キロ程を光で覆い尽くす。

眩しさで誰もが視界を閉ざされると、次に突然巻き起こった衝撃波と共に全員が数十メートル程吹き飛ばされた。造と紫を除いて。

造にはなんの影響もなく、顔も紫に付けて伏せていた状態だったので何が起こったのか全く分からない状態だ。

衝撃波は、周辺地域にも影響を与える。

周辺の木々や月夜達の家をも跡形もなく吹き飛ばし、無惨な光景へと変わり果てていた。

そして、吹き飛ばされた殆どの兵士については意識を失い、全員が骨折や酷い裂傷などの大怪我を負っている状態となる。

それは、小野上将軍や貴公子達も同様だった。

兵士達が盾になったおかげか貴公子達に大きな怪我は無かったが、軽い打撲に全員衣服が破けており、泥だらけになってしまっていた。


「皆無事か…?何が起こった…?あの光は何なんだ…!?」


倒れていた青い貴公子は、状況整理をする為に立ち上がると周りを見渡す。

無数に生えていた木々がいくつか根元から抉られており、そこから衝撃波の強さが伺えた。

先程の眩い光は、若干小さくなっているがまだ光っている状態で、そのままその場に残り続けながら人の姿へと収束していっていた。

将軍達も目を覚ますと目の前に居る得体の知れない月夜に臨戦態勢を取った。


「貴公子様ご無事で!?なんなのだ、あの光は!?皆構えよ!!全力で貴公子様をお守りするのだ!!」


将軍達が警戒する中、6人の貴公子はその光の虜になっていた。

ずっと眺めていると、光は徐々に薄れていき、光の中からこの世の人とは思えぬほどに美しい女神のような少女が現れた。

あまりの美しさに貴公子達は生唾を飲む。


「な…。まさか、あれが噂の女子か…?あれは本当に人なのか…?まるで女神だ…。」


「なんと…美しい。噂に違わぬ。いやそれ以上だ…。」


貴公子達は、皆その姿に感動していた。

しかし、目の前の少女の様子が若干変だと感じる。

その眼に光が宿っていないのだ。

まるで目の前にいる少女は、作り物なのではないかと思わせる。

青い貴公子が目の前の少女に話しかけようとしたとき、少女は無機質な声で呟いた。


「全てを思い出した。なぜこのような原始的な所に居座ってしまったのか。迎えが来る…。お父様が…来る。」


少女は、無表情のまま空を見つめた。


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