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村の崩壊と光る赤子

村を半壊させ、大規模な山火事の起こった大事件から半年の時が経った。

村人は、壊れた家を直したりする者もいれば、崩壊した村から出ていく者も少なくなかった。

村人の数は、日を追う事に少なくなっていき、今では300人規模の村が、100人近くにまで減ってしまっている。

家が無事だった者は、今まで通り農作物を収穫して、年貢を収めながら生活をしていた。

造と紫も村の復興を出来る限り手伝いつつ、いつも通り暮らしていた。


造は、その日、竹の籠等を作る為に、村の向かい側にある山の竹やぶに向かうことになる。


「ほいな、お婆さん。粥も食べたから、行ってくるでな。」


「気をつけて行くんよ?あの山は、前の火事の後から誰も行っておらんから、どうなってるか分からんでな。」


紫に心配されながら造は、朝食を食べて、鉈を持ちながら出発した。

ここらの土地は、とても静かな土地で人の行き交いも少ない。

戦なども、これまで縁のない平和な土地だ。

強いて言うならば、山に入るのなら熊には気をつけないといけない位だろう。

造は、そこら辺に関してはスペシャリストだ。

もちろん襲われたらひとたまりも無いが、足跡やフン等から動物の行動や習性を考えて行動する為、熊や野生動物からの襲撃には遭うことはほとんど無い。

今回も、造は油断せずに山をゆっくりと登頂した。

造が目指す竹やぶは、山の上部の方にある。

険しい道のりだが、全く問題なく進んで行った。

道を進むにつれて、山火事の悲惨さが目に映るようになっていく。


「こりゃぁ、酷い。火事でここいらの木は全部焼けてしまっている。イノシシや鹿も巻き込まれてしまっておるなぁ…。」


焼けた木々に、焼け死んだ小動物達。

造の頭に、あの時の地獄絵図をフラッシュバックさせる情景がここには無数にある。

体力もそうだが、心理的にもかなりキツイ登頂だった。

しばらく焼けた土地を登ると、昔からある竹やぶが見えてきた。

竹やぶは、山火事のあった部分の反対側にあり、火事の影響を受けていない綺麗な状態のままだ。

安心した造は、そのまま竹やぶに入っていく。

良い竹を探して、進んでいくと、ふと小さな声で何かが聞こえてきた。


(ーー・・・知的生命体を感知ー・・・肉体の再編成及びーー・・魂体修復開始ーー・・・・。)


か細い声で、どこからとも無く聞こえてくる無機質な音声に造は驚く。


「誰じゃ…!?竹を…切りに来たのか?どこにおる?!」


造の声に、無機質な音声は答えることは無かった。

しばらく音声は聞こえなくなったので、とりあえず竹を切り始めると、また先程の声が聞こえてきた。


(ーーー魂体の修復完了・・ーー肉体の再編成ーーー・・一部エラーの確認ーー・・・ポイントの座標変更ーー・・・ー着水しますーー・・)


「さっきから誰なんじゃ…!!ボソボソと!!隠れておらずに出てこい!!」


先程から、どこからともなく聞こえる音声が誰かのイタズラに思えた造は、声の主を探し当てるために、周りを見渡しはじめた。

多くの竹が生い茂っているので、竹を避けながら進む。


「また声が聞こえなくなった…。なんなんじゃ一体…。村の子供がこんな所に来るわけが無いしなぁ…。」


いくら探しても、声の主が見つからず、不思議がっていると、無数の竹の中に1つ、眩い光を放つ竹を発見する。


「な…なんじゃこれは…。竹が陽の光のような眩い光を放っておる…。中になにか入っておるのか…?」


一際輝く竹に興味を引かれた造は、先程まで探していた音声の主の事を忘れ、竹を切る事に夢中になった。

光り輝く竹を切り落とすと、竹の内部に異常に貯まっていた竹水が溢れ出てきた。

あまりの水量に、造の全身は余すことなく濡れてしまう。

しばらくすると、溢れ出ていた竹水は落ち着きを見せ、やがて流れなくなった。

竹水が落ち着いたことで、先程まで輝いていた場所を見ることができるようになった造は、覗き込むように輝く部分を再度見た。

すると、そこには光り輝く赤子が静かに眠っていた。

身の丈は、通常の赤子よりも小さいが、しっかりと息があり、生きていることが確認できた。


「なんて美しい…。だが、なんで竹の中に光る赤子が…?」


造は、竹の中で眠る赤子をそっと抱きかかえる。

抱きかかえられた赤子は先程まで身にまとっていた光を失い、その場で目を覚ました。


「おぎゃあ!!おぎゃあぁ!!おぎゃああ!!!」


目を覚ますと、その場で大泣きをし始めた。

造は、子供を育てた経験が無いため、どうしたらいいか分からず、一旦急いで家に戻ることにした。


「こりゃいかん!!急いで婆さんに、このことを知らせないと!!」


造が急いで下山し、泣き叫ぶ赤子と共に家に帰ってくると、紫は何事かと驚く。


「お爺さん!?その子は、なんじゃ?!赤子か!?」


「おぎゃあ!!!おぎゃああ!!!!」


「婆さんや!!竹の中で赤子がおってな!?抱き抱えたらずっと泣いとるんじゃ…!?どうしたら良いかの!?」


紫と造は、2人とも子育ての経験が無かった為、目の前の赤子を見てとにかく焦る。


「お爺さん!もしかしたら、おなかがすいてんのかもしれねぇ!村の女子(おなご)で、最近赤子が生まれたもんがおったじゃろ?!服着せて、その子のとこに連れてって乳を飲ませてもらったらええんじゃないか?」


「お婆さん!それがええなあ!!はやく連れてこう!!」


造と紫は、赤子を布で覆って、村娘の所へ急いで向かう。

村娘は、突然の老夫婦の訪問に驚くも、彼らとは見知った中だったので快く協力してくれた。

乳を飲んだ赤子は、お腹がいっぱいになったようでスヤスヤと眠る。

その間、造は紫に赤子について説明をした。

話を聞いた紫は驚き、そんな事があるんか!?となっていたが、造の話を最後まで真剣に聞いていた。


しばらくして、2人は村娘の家から出ると自宅に戻って、拾った赤子を眺めながら話し始めた。


「それにしても、なんて可愛い女子の赤子じゃ…。のぅ、お爺さんや。この子は将来美しい女子になるなぁ?」


「あぁ。お婆さんや。可愛いのぅ…。ワシらには子がおらんから、この子との出会いは運命かもしれんのぅ。」


「そうじゃのぅ。うれしいのぅ。」


輝く赤子との出会いは、かつて子供を授かることを願っていた2人にとって、この上ない喜びだった。

赤子の正体やらは、どうでもいいと考えた。

とにかく、この神様からの贈り物とも言える出会いに感謝をし、この子を育てると2人は決心する。


その日から、2人は拾った赤子を自分達の娘として育て始めた。

今まで通り、造は農業や竹取を継続して行い、食事の時や子供の育て方を習う時は、紫が率先して村娘の所に行ったりした。

これまでの生活と比べて、老体に鞭打つような大変さがあったが、2人はその苦労よりも、2人に子供が出来た事の方が嬉しかったのだ。


それから月日がたち、子供はすくすくと成長した。

成長速度は恐ろしく早く、数週間おきに身体が光り輝くと元の年齢から何歳か成長した姿になった。

成長を追うごとに、赤子の顔は巷で騒がれるほどの美しい顔つきになり、朽ちた村に美しい女神ありけりと噂されるようになっていく。

2人は、そんな自慢の娘に美しい月を表す名を授けた。


その名を、竹取月夜(つくよ)という。



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