竹取の造がそこにありけり。
2025-9-20誤字修正
石作とパンタのノノカ争奪戦が起こっている頃、
同じ異空間に居た幸たちは数十体の骸骨に囲まれつつ、言葉を話す不思議な骸骨の案内に従って茂みを歩いていた。
囲んでいる骸骨たちは、全員保健室に置いてありそうなきれいな骸骨だったが、案内している骸骨は違った。
身体や顔の所々に腐った肉片が付いており、眼球は眼窩の中で浮いているが、しっかりと残っていた。
頭部には長く伸び、手入れのされていないボサボサの白髪がたくさん生えており、全体は妖怪のような容姿だ。
しばらく案内に従って茂みを進むと、茂みの開けたところに、パンタ達がいた古い家とは別の朽ちた家がポツンと佇んでいた。
木製の扉や外壁はすでに腐っており、中が透けて見える状態だった。
「ここじゃ。皆、ここで待っておれ。そこのお若い二人はこちらに来ておくれ。」
案内をしていた骸骨は、他の骸骨達を使役しているようで、皆彼の言うことに従う。
幸たちを囲んでいた骸骨たちは、幸たちから離れると、次は家の周囲を囲むように立った。
案内していた骸骨は朽ちた家の扉を開け、二人を手招きするとそのまま中に入っていく。
恐怖に駆られながらも、幸は案内する骸骨に従って進もうとしたが、癒菜に服を掴まれて止められた。
「た、たた、たたけとりくくん…!本当に…行くのですか…?!あの骸骨を本当に信じるつもりですか…?!」
癒菜は、震えながらも幸に再度確認を取る。
突如として現れて、話をしようと言ってくる骸骨が怪しくて仕方がないのだ。
話をしようと言って家に連れ込んだ後に、急に襲いかかってきて殺されてしまうのではないか?食べられてしまうのではないか?
そのような不安が癒菜の頭をよぎる。
幸はそんな怖がっている癒菜を見ると、安心させようと、肩をポンポンと優しく叩いた。
「夢坂さん。根拠は無いけど、多分大丈夫だと思うよ?なんでか分かんないけど、あの変な骸骨は安心していいって思えるんだ。」
最初は怯えていた幸だったが、気持ちが落ち着くと、あの案内してくる骸骨に対して、なぜか安心感抱くようになっていた。
あの骸骨とコミュニケーションを取ることで、
この空間の謎や、パンタ・ロマーリエという人形の正体も、聞けるかもしれない。そうすればここからの脱出方法が見つけられる。
そのような結論に至った幸は、話を聞きに行くつもりだった。
「大丈夫!何かあれば俺が何とかするよ。怖いなら夢坂さんはここで待ってる?」
震える癒菜は、幸から尋ねられると即答する。
「行きます!私も行きます!!」
なぜなら、こんな所で1人にされる方が怖すぎるからである。
2人はそっと家の扉を開けて、中に入っていった。
家の中も外と同じくぐちゃぐちゃだった。
天井には穴が空き、光が差し込み、家の至る所から、ギィィィという音が鳴っている。
2人が入ると、中央の囲炉裏があるところに先程の骸骨がいた。
「ほれ。そこに藁を敷いたから、早く座りな。そのまま地面に座ると汚れちまうからなあ。」
骸骨の促すままに幸達は、敷かれた藁の上にそれぞれ座った。
藁はかなり厚めに敷かれており、とてもふかふかしている。
(なにこれ……。ふかふかしてる。)
癒菜が心の中で、そんな事を思っていると、幸がさっそく骸骨に対して質問を始めた。
「で、あなたは何者なんですか?なんで1人だけ話すことができるんですか?あの骸骨たちはなんですか?ここはどこですか?…」
マシンガンのごとく質問を骸骨になげかけた。
一通りの質問を静かに聞くと、骸骨はゆっくりと自分の生い立ちについて話し始めた。
「まぁまぁ、若いの。焦る気持ちは分かるが、まずは落ち着くんじゃ。うーん、まずなにから話すべきかのう…。そうだな、まずはワシの生い立ちから話そうか。」
そう言うと、目の前の骸骨は自分の昔の話をしはじめた。
今から、およそ千年前のある村に、1人の平民の男がいた。
男の名は竹取造という。
彼は村一番のお調子者で、よく村の皆を笑わせていた。
「おーい!みやつこー!暇じゃろー?こっちこいよー!」
「おうよ!うちで、麦がゆ食べたらすぐ向かうでなー!」
若い頃は、村を駆け回っては、よく村の子供達と一緒にはしゃいでいた。彼は遊んでばかりで、農業をしている両親の手伝いを全くしないことで有名だったのだ。
そんな彼だが次第に大人になっていくと、徐々に落ち着きを取り戻して親の農業を手伝いはじめた。
親の農業を引き継いでからは精神も成長し、村で一番美しい紫という娘を嫁へと迎えることが出来た。
2人は仲睦まじく、お互いに支え合いながら生活をしていた。
しかし、そんな2人にも悩みがあった。
2人には子供が授からなかったのだ。
毎日紫は朝早くに起きると天にお願いをし続けた。
「仏様、お願いします。私たちに子を授けてくだされ。お願いします。」
しかし、紫の願いは聞き届けられず、子供が生まれることは最後までなかった。
悲しみに明け暮れた紫を支えながら、みやつこは、懸命に生きた。
何年、何十年と2人で生きて、もはや2人のどちらかが、いつ突然亡くなってもおかしくないような年齢に達した。
そんなある時、二人がヨボヨボのお爺さんとお婆さんになって普段通りに生活していると、突如それは起きた。
早朝、2人がまだ寝ていると、村の向かい側にある山頂付近で爆発音のような音が聞こえてきた。
ヒューーン………ドゴオオオオオオン!!!!
爆発音とともに周囲の土地に衝撃が走る。
村全体がまるで波打つかのように地面が上下に揺れ、爆発した衝撃波が村の一部の家を跡形もなく吹き飛ばしていた。
「…!!!なんじゃなんじゃ…!?地震か!?今のはなんじゃ!?」
「村の向かい側の山の方から聞こえたなあ!?お爺さん、何事かいな?!」
2人は飛び起きると、家の外に急いで出て、村の様子を確認しようとした。
外の様子を伺うと、外はまるで地獄絵図のような有様だった。
2人は、その惨状を見て天に嘆く。
「ああぁ…!!なんて事じゃ…。ワシらの村が…山が…炎に包まれておる…。これは天罰か何かか!?」
「神様、仏様…!!なぜこんな天罰を私達にお与えになられるのか…。何と残酷な…。」
平和で自然豊かな土地だった場所は、一夜にして変わり果てていたのだ。
村の向かい側の山頂付近は山火事を超えるほど大炎上しており、村自体もいくつかの家が勢いよく燃え盛っていた。
「ワシの子が…!!ワシの子がそこにおるんじゃ…!!止めんでくれぇ…!!」
「やめろ!お前も死ぬぞ!!家がこんなに燃えてるんだ…!あんたの子も…。」
村の至る所では、阿鼻叫喚のありさまだった。
村人の半数がこの事件により亡くなった。
造と紫は村人たちの惨状を目の当たりにしたが、何もできず、ただ静かに佇むことしか出来なかった。




