パンタ・ロマーリエ
2025-8-18 誤字修正
石作の目の前に振り下ろされた鍬を骸骨が引き上げる。
その瞬間を見計らい、骸骨に向かって石作は思い切りタックルをした。
思わぬ反撃に、骸骨は対応出来ず、そのまま倒されてしまう。
「今だ!!」
石作は、骸骨が起き上がる前に先に起き上がり、そのままノノカ達を追い始めた。
「なんだったんだ今の…!ド〇クエに出てきそうな奴だったな…!?咄嗟に倒してしまったが…。」
変な骸骨の妨害をよく分からずに突破し、とにかく前方を走る2人を追っていると、パンタがまた何かをしようとしているのが見えた。
彼女が、指を左右に振り、何かを呟くと、突然石作の足元の地面が四角くくり抜かれたように、穴が空いた。
「うわぁぁぁあぁ!!……………ッ!!!!」
石作は、叫びながら穴に吸い込まれるように落ちていった。
パンタとノノカは、その様子を見て立ち止まる。
ノノカは、石作が落ちていったことに心配して、パンタに尋ねた。
「パンタ!!あの人、私の知ってる人なの。どこにやったの?」
パンタは、聞かれた質問に対して満足そうに答えた。
「ノノカちゃん。あの男は実は悪いやつなの。だから、私が閉じ込めといてあげる!」
パンタは、石作と幸と癒菜がこの空間にいることを理解していた。
彼女は、ずっと長い時を独りで生きてきた。
長い長い時の中で、ようやく出逢えた自分のことを心配してくれて、話すことも出来る人間。そんな人物と友達になれたことが嬉しくて仕方なかった。
現在では、友達となったノノカを奪われる心配と、自分を受け入れようとしてくれなかった幸達に対しての怒りで我を失っている。
彼女は、3人を消してでもノノカを手放すつもりが無かった。
(私のノノカちゃん!!私だけの友達!!誰にもあげない!!私の邪魔をするなら、容赦しない!!)
パンタの行動に、ノノカは戸惑う。
ノノカが意識を取り戻したのは、つい先程のことだ。
急に目の前が暗くなったかと思えば、来たこともない古臭い家に横たわっていた。
辺りを見回すと、自分と同じくらいの綺麗な女の子が家の片隅に座っており、寂しそうな目をしていた。
ノノカは、その悲しそうな姿をよく知っていた。
先程まで、おもちゃ屋のショーケースに置かれていた人形と全く同じだったからだ。
「あなた…だれ?…パンタ?」
見ず知らずの女の子に対して、何も考えずに出た言葉は、ありもしない人形の名前だった。
ノノカが片隅に座る女の子にそう聞くと、女の子は、すごい勢いでノノカの方へ近づいていき、うれしそうに答えた。
「そうだよ!…ノノカちゃん!私のことがわかるのね!?嬉しい…!!」
キャッキャキャッキャしながら、パンタは起き上がったノノカに抱きついた。
「さっき、私のこと抱きしめてくれたよね。あれ、すごく気持ちよかったんだ。だから、こうして私もノノカちゃんを抱きしめてあげたかった!」
冷たく透き通った白い肌。一切の温もりを感じないパンタの抱擁をノノカは黙って受けた。
目の前にいる存在が、あの人形で、なぜ動いているのか不思議に思いながら。
そんな時、目の前の障子が突然開く。
そこには以前幸と喧嘩した石作がおり、自分を心配して駆けつけたようだった。
場面は変わり、パンタは、石作を穴に落とすとその場で座り込む。ノノカは石作がどうなったのか気になって仕方なかったが、パンタはノノカから離れると、「ちょっと待ってて」と言い、自分の手を差し出して、何かを唱え始めた。
すると、手のひらに突然”ポンッ!!”という音がなり、飴玉が沢山出てきた。
ノノカは、驚いてその光景を見ていると、得意げにパンタは次々とおもちゃや、お菓子等を色んな種類出し始めた。
「すごぉーい!!!パンタなんでそんなこと出来るの?私できないのに!」
パンタの凄技にノノカはパチパチと拍手して喜んだ。
その姿に満足したのか、パンタはノノカに提案をする。
「ここではね、私何でも欲しいもの出せるの!ノノカちゃん!ずっと楽しく過ごさせてあげるからさ!私と一緒にここで暮らそうよ!」
パンタはノノカとここで永遠に暮らしたいと考えていた。
これだけなんでも子供が欲しそうなものを揃えれば、ここから出たいと考えないと踏んでいたパンタは、ノノカからの返事に期待をする。
しかし、ノノカからは、期待の返事は来なかった。
「えー!うーん。パンタは凄いし、遊ぶのは良いけどね、私には大切な人たちが居るから。幸とかママと離れ離れになるのやだもん。だから、ここじゃなくて、幸のおうちで一緒に暮らそうよ!」
ノノカの気持ちはパンタには伝わらない。
怪訝な面持ちなパンタは、一瞬にして顔を曇らせた。
それから、ボソボソと顔を下に向けて言い始める。
「…ん?パンタ…?何言ってるのか聞こえないよ。」
「……でよ。」
「え…?」
「…なん…でよ…。なんでよ…!!!」
パンタは、泣きながら駄々をこねる。
「なんでなんでなんで!!!私は欲しいものなんでも出せるのに!!なんで私と一緒に居てくれないの!!私と一緒の方が楽しいのに!!うぅ…!!」
パンタは理解ができない。
ノノカの望むものは何でも出してあげられる。毎日楽しく何不自由なく遊んで暮らせるのに、なぜ拒否されるのか?
そこまで、あの幸とかいう男と癒菜とかいう女が大切なのか?
自分ではダメなのか?
屈辱にも似た気持ちが、パンタに襲いかかる。
どんどんと、なぜなのか考えていくうちに、パンタは、ふとひとつの答えに行き着いた。
(そうか…。あいつらがノノカちゃんを惑わせてるんだ。あいつらは、私を受け入れようとしなかった。悪者だ。あいつらを消そう。そうすればきっと…。)
パンタが不吉な決心をした時に、先程石作が落ちていった穴から叫び声が聞こえてきた。
「うおぉおおおおお!!!こんなんで、俺を殺れると思うなよ!!怨霊がああ!!!」
なんと、石作は落とされた穴の中で、両手両足を思い切り左右に広げて、まるで蜘蛛のように這い上がってきていた。
ノノカへの忠誠心が、石作の力を普段の数倍引き上げており、常人には到底真似出来ない動きを難なくこなすことを可能にした。
「はぁ、はぁ、見たか…。亡霊め…!」
そこが深く、下が見えないような穴から這い上がってきた石作は、パンタをドヤ顔で見つめる。
「…。しつこい…!!あんたみたいな変人に、かけてる時間は無いのよ!!」
パンタは、諦めない石作に対してかなりイラつきはじめていた。
イラついているパンタを見て、石作は静かに目を閉じ始める。
目を閉じると同時に、両手も合わせる。
「…?…なに…やってんのよ…。」
警戒するパンタを気にすることなく、石作は続けた。
「俺はな、今さっき落ちる寸前に、色々な思考が頭を巡ったんだ。お前を倒す方法のな。」
穴に落ちる寸前のことだ、石作の頭は死を感じ、恐ろしいほど回転していた。
恐らくあの時点でのみ、彼のIQは180程にまで上がっていただろう。
死の間際で、彼は幽霊と認識しているパンタをどうやって消滅させるのか。それのみを思考した。
あらゆるパターンで戦いを挑んだが、勝てるビジョンが見えない。
最終的には、これしかないという方法を思いついた彼は、それを実行に移し始めたのだ。
「ノノカ様を解放しろ!!亡霊め!!喰らえ!!……南無妙法蓮華経〜南無妙法蓮華経〜」
「…!!!」
そう、彼の思いついた方法とは、そう、昔テレビ番組を見ていた時に、流れていた南無妙法蓮華経という言葉だ。
お坊さんがよく使う言葉だと認識していた為、きっと亡霊であるパンタにも効くだろうと踏んだ。
「南無妙法蓮華経〜南無妙法蓮華経〜」
ひたすらに唱え続け、パンタが消えることを願っていた。
しかし、現実はそう甘くなかったようだ。
「あんた、なんで私に南無妙法蓮華経なんて唱えてんのよ。そんなの効くわけないでしょ。」
石作万策尽きる。
予定していた結末とはまったく違う形となった。
想定よりも、南無妙法蓮華経がパンタには効いていないようなのだ。
(な…なにぃぃ!!!亡霊とかそういう類のやつには、これじゃないのか!?ちょっ、まじ、どうする!?結構ピンチなんだが!?)
焦る石作に対して、容赦のないパンタは、また石作を穴へと突き落とした。




