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老鋪のさみしんぼ

ネンネ騒動から、2週間後の事だ。

ノノカ達3人は、ショッピングモールに買い物へ来ていた。

普段通り、3人で手を繋いで、食品コーナーや洋服店など様々なお店を転々と歩きながら見て買ったりしていると、突然にノノカの足が止まる。

話しながら3人で進んでいた為、急に止まったノノカに2人が引っ張られるように引き寄せられた。


何事かと、2人が揃ってノノカを見ると、ノノカは別の所を見て固まっていた。


「ノノカ…?」


幸が固まって動かないノノカの視線の先を見ると、そこには、布製で金髪の可愛らしい女の子の人形が据えられていた。

そこは、おもちゃ専門店であり、普段ノノカは見向きもしなかったところだ。

そういったおもちゃや、人形等に興味が無いのかと2人は思っていたので、ノノカの行動に対して、意外だと感じる。

しばらくすると、ノノカは幸と癒菜の手を振りほどいて、人形の前まで走っていった。


「うわぁ…!!すごい!!この子とっても可愛い…けど…。」


ノノカは、人形が飾られているガラスケースに顔をくっつけて、まじまじと見る。

幸達も遅れて、ノノカの傍にくると、ノノカと同じ目線になるようにしゃがんだ。


「けど…?ノノカは、あの人形が気になるの?」


幸は、ずっとガラスケースにくっついてるノノカが、人形が欲しそうな目というより、心配しているような目をしているように感じたので、ノノカが何を考えているのか、気になった。


「あのね…。あの子、とっても可愛いんだけどね、とっても寂しそうなの。今にも泣きそうなくらいに。」


ノノカは、えんえんと泣くジェスチャーをしながら、幸と癒菜にそう言った。

その動作は、2人の心を貫く。ノノカは、なんて優しい子なのだろうと。

恐らく長い間売れていなく、若干ホコリを被ったこの人形に対して、寂しそうだなと感じたのは、幼い子供の優しい感性に違いない。


「ノノちゃんは、優しいね。このお人形さんが1人でいるから、寂しく見えちゃったんだね。でもね、きっと大丈夫だよ。ここのお店はね、おじいちゃんが店員さんで居るんだけど、とっても玩具の事を大切にしてるおじいちゃんだから。寂しいことないと思うよ。」


癒菜は、心配そうにしているノノカを安心させるように、優しく答えた。

ここのおもちゃ専門店は、古くから個人でこのショッピングモールで運営している、いわゆる老鋪だ。

幸も癒菜も、ここのお店には、かなり長いことお世話になっている。

地域の子供達の、夢の場所であり、その場所を運営しているおじいちゃん店員の(せん)さんは、みんなのおじいちゃんのような存在だった。


(仙さんは、私も子供の頃から知ってるけど、本当に接客中もおもちゃの手入れとかしっかりしてた優しい人だからなぁ。)


癒菜は幼い頃に、おままごとセットをこのお店で買ったことがあるが、その時も、おもちゃの事を事細かく説明されて、子供ながらに若干引いていた記憶がある。

だから、仙さんに関しては、絶対の自信があったのだ。

しかし、ノノカはそれを聞いても尚、あまり納得している様子はなかった。


「ママ…。でもね、この子私が近づいたら、助けてって言ってきたよ…?ここは、とっても苦しいって。」


幸と癒菜は、それを聞くと少し(ん?)と思う。

寂しそうに感じたりしているのは、優しさゆえだと思うが、ノノカの”助けてって言ってきた”というワードが引っかかる。


「ノノカは、この人形が助けてって言ってきたように感じたの?俺はそんな事言ってるようには感じなかったけどなあ。」


幸は、ノノカがそう捉えてしまっただけであり、実際はそんな事を人形が言うはずは無いと思っていたので、ノノカの勘違いだと伝えた。

ノノカは、それを聞いて、さらに不思議そうに答えた。


「感じたんじゃないよ?この子、私に話しかけてきた。今も、私を家族にしてって言ってきてる。」


(え…?)


2人は、それを聞くと、若干ゾクっとした。

子供の言うこととは言え、そんな怖いことを言われると、この人形がホラーな人形に見えてくる。

幸と癒菜は、2人してどんどん怖くなり始めたので、この場を去ろうとした。


「ノノカ!そろそろ行こうよ!時間もどんどん経ってきてるからさ!もう俺お腹すいてきた!」


「竹取くんの言う通り!お昼ご飯もまだだから、ご飯食べに行こ?ノノちゃんは何食べたいかな?」


2人が若干無理やりに、ノノカをこの場から連れていこうとした時、おもちゃ専門店の扉が開く。



カランカラン!!



扉に付いた古い鈴が鳴る。

3人が開いた扉の方を見ると、白髪で白く長い髭をこしらえ、作業着のエプロンのような物を付けた老人が出てきた。


(仙さん…!!!?)


急に外に出てきたその老人は、この店のオーナーである仙さんだった。

仙さんは、ショーケース前に居た3人を見ると、手招きをして、お店の中に引き込んだ。


「そんな所で見とらんと、こっち入ってきてゆっくり見といで。たくさん玩具はあるからな。」


そういうと、仙さんは、優しく微笑んだ。

外からずっとショーケース越しに見ていたノノカ達を店内から見ていたようだ。

店内には、客の姿はなく、今日は落ち着いている日の模様。

仙さんは、3人を引き入れると、部屋の掃除をしたり、メンテナンスを始めた。

ノノカは、おもちゃ専門店に入ると、周りを見渡して、初めてしっかり見るおもちゃ達に興奮しているようだった。

店内を駆け回って、色々とおもちゃを見回したあとに、仙さんの所に向かうと、仙さんに人形について聴き始めた。


「おじいちゃん、あのお人形さんって寂しんぼなの?」


先程の人形を指さして、変なことを聞いてくるノノカを見て、仙さんは不思議そうにする。


「あの人形は、昔からこの店に置いている子だからなぁ。寂しんぼかどうかは、分からんが、他のおもちゃ達が売れていくのを見ているから、寂しがっているのかもしれないね。」


聞くと、仙さんがこのお店を立ち上げた時から、ずっと売れ残っている人形とのこと。

開店当初は、来店した女の子達に人気があったらしいが、結局買われなかった。

それからも、ずっと新しいおもちゃやゲームが発売されていく店内では、次第に見向きもされなくなっていき、今では、ショーケース内に飾られているだけの人形と化しているようだ。


「時代に取り残されちまった可哀想な子なのかもしれんなぁ。もう今の子達は、こういう玩具よりもゲームばかりに目がいってしまっているから。きっとこの先も買われることはないのかもしれん…。」


少し悲しそうな顔で、仙さんはそう呟く。

きっと、大切に管理している玩具が子供達から人気が無くなっていくことに対して、複雑な気持ちなのだろう。

仙さんは、ノノカが気になっていた人形の元に行くと、ホコリを手で払い、人形を持ち上げた。


「元気な子供達の元に送り出して上げられなくてごめんな。」


仙さんのその言葉を聞いて、幸達も少し胸が締め付けられた。

ノノカは、その後ろを着いていき、幸と癒菜を見て2人にお願いをしてきた。


「ノノね、あの子欲しいなあ…!」


2人は、ノノカのお願いを聞くも、さっきの怖いノノカの発言を聞いているからか、拒否の反応を示す。


「欲しいのは分かるけど、ウチにはお金が無いからなー。残念だけど、また今度かな!」


「そうそう!ノノちゃんは、2つ欲しいものこの前買ったでしょ?お菓子とお洋服!だから、今回は我慢しよ?」


2人は、あの人形を家に迎え入れてしまうと、なにか良からぬ事が起きるのではないかと心配していた。

ここで無理して買って、甘やかすのも、ノノカの為にならない。

2人の判断は、誰が見ても正しいものだった。


「えぇ〜。。ノノ、あの子は、私の妹に見えるんだもん。家族と一緒だよ?」


しかし、それでもノノカは、なかなか引き下がらなかった。

2人に説得されるも、その場を動こうとしない。

ずっと欲しそうな目を2人に向けて、お願いを続けた。

3人がその場で、買う買わないの話をしていると、それを聞いていた仙さんが、話に入ってきた。


「この子、そんなに欲しいなら、君に譲ってもいいよ。」



この一言が、後にとんでもない事を起こすきっかけとなる事を、今はまだ誰も知らない。

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