お嫁さんってなあに?
2025-06-01 誤字修正
幸の自宅にノノカと癒菜の2人きりの時、癒菜はノノカに絵本をよく読み聞かせていた。
ノノカは最近、癒菜の持つ恋愛ラブコメ漫画にハマっており、文字は読めないものの、癒菜が読んであげる所を、一緒に絵を見ながらページを追う事をしていた。
「こいつは俺の嫁だ。産まれる前から、もう決まってんだよ。コイツに手を出すな。」
今日のページは、普段に比べて展開が熱い場面で、主人公がヒロインとヒロインを傷つける悪役の間に立ち塞がり、守るといったシーンだった。
癒菜も好きなシーンで、今日のノノカへの読み聞かせは、一段と感情と力が入っていた。
ノノカも完全に分かっては居ないが、なんとなく雰囲気で伝わっており、一緒に力見ながら漫画を見ている。
2人で熱い展開を読み終えたあと、熱い気持ちの余韻を楽しみながらジュースを飲んで、プハーっと一息入れた。
「ノノちゃん、今日の絵本の読み聞かせ、どうだったかな?凄く、熱い展開じゃなかった?!」
ノノカよりもテンションが上がっているんじゃないかと思われる癒菜は、顔を少し赤らめながら息を荒くしてノノカに問いかける。
ノノカは、ジュースをストローで飲みながら、癒菜に答えた。
「すごい面白かった!!ママ!!ヨメって途中で言ってたけど、ヨメってなんなの?!」
ノノカは、どうやら嫁の意味がよく分かっていなかったようで、その意味を癒菜に聞いた。
ノノカに嫁について聞かれた癒菜は、掛けていたメガネをクイッと指ですると、よくぞ聞いてくれましたと言わんばかりに、おもむろにその場で立ち上がり、その問いに答える。
「ノノちゃん。ノノちゃんにはまだ早いかもしれないけどね、嫁って言うのはね、好きって感情をお互い持った男女が結婚をして、女の人はお嫁さんとして、男の人は旦那さんと一緒にずっとラブラブしながら仲良く過ごしていくって事なの。まぁ簡単に言えば、大好きな旦那さんと過ごして、そのうちにノノちゃんみたいな可愛い子が出来て、一緒に暮らしていくってことかな?私も憧れてるものだよ!」
熱く語る癒菜を見ながら、なるほど。と考えるノノカ。好きという感情が薄く分かってきているノノカは、さらに癒菜に質問攻めをした。
「好きな男の人とずっと一緒に楽しく過ごすなら、ノノは幸のお嫁さんになりたい!!ノノなれるかな?どうやったらなれるのかな!!幸の事大好きだから、ノノ、ママになりたい!!」
「ん、え!?竹取くんの…!?んーとね、ノノちゃんは、竹取くんの子供みたいなものだから、ちょっと難しいんじゃないかな…?多分ね、好きの形が違うと思うの!まだ分かんないだろうけどね!」
癒菜の回答にショックを受けたノノカは、涙目になる。
「ママは、ノノのママだから、幸のお嫁さんなの…?ノノは、幸のお嫁さんにはなれないの…?うぅ…。ママずるい…!!うぅ…ノノの方が、幸の事大好きなのに…!!うぅ…。」
とうとう泣き出してしまうノノカ。癒菜は、かなりのショックを受けているノノカに焦り、ノノカをすぐに抱き寄せた。
ヨシヨシと頭を撫でてあげて、ノノカを勇気づける。
「違うよ!私は、竹取くんのお嫁さんじゃない。ノノちゃんのママではあるけど、違うの。
それにね、ノノちゃんは竹取くんの子供でもあるけど、結婚はできるし、お嫁さんにも将来なれるかもしれないよ!だから、大丈夫!!」
癒菜の胸の中で幸のお嫁さんになれると聞いたノノカは安心して先程までの涙はどこかに吹き飛んだかのように元気になった。
喜ぶノノカは、癒菜の腕を解いてなにやら一生懸命描き始めた。
何を描いているのか気になる癒菜は、紙を上からそっと覗く。
そこには、おそらく大人になったノノカと手を繋ぐ幸、それから少し離れた所に癒菜が居る絵が書いてあった。
(おおっと!?これは将来の夫婦になった2人かな?ノノちゃん積極的だなあ。というか、私の扱い雑じゃない!?なんか私だけ離されてるんですけど!)
描いてある絵を見て少しショックを受けている癒菜の事は、気にせずにノノカは一生懸命絵を描ききった。
癒菜の予想はしっかり合っていたようで、やはりノノカと幸が将来夫婦になった姿を描いたようだ。
ノノカは、絵を描き終えると癒菜にキラキラした目で質問をする。
「ママ!ママ!!ノノね、幸のお嫁さんになる!どうすれば、幸のお嫁さんになれるかなー?」
幸のお嫁さんになりたくて仕方ない、純粋な子供のノノカは、どうやったら幸のお嫁さんになれるのかを癒菜に聞く。
癒菜はそんな姿に癒されながらも、ノノカの頑張ろうとする姿を見て応援したくなった為、2人で作戦会議をすることになる。
「旦那さんの疲れが出来るだけとれるように、笑顔でお出迎えして、お腹が空いてたら元気が出ないから、お料理を食べてもらって元気になってもらう、そしていっぱい好きって気持ちを伝えてお家で安心できるようにするもの
とかかな?ノノちゃんにそれが出来るかな!!」
「うん!!ノノね、お料理する!たくさんニコニコで、幸に大好き言う!!」
ノノカの可愛さに、なんだか燃えてきた癒菜は、今晩のご飯をノノカと一緒に作ることにした。
すごくやる気のでたノノカは、そのまま夕方まで一緒にたくさんの料理を癒菜と作って幸の帰りを待つ。
夕方になると、疲れて帰ってきた幸が家に帰宅してきた。
今日幸は、最近勉強が疎かになっていた事を理由に、癒菜にノノカを預けて1日中図書館で勉強をする日としていた。
ここ最近は、1週間か2週間程の間隔でこのような日を設けている。
「ただいまー。1日ずっとやるとやっぱり頭が疲れたなあ…。」
幸がいつものように玄関を開けると、そこにはモジモジして顔が赤いノノカと遠くの扉の隙間から見守る癒菜が居た。
いつもとは違う雰囲気に違和感を覚える幸は、少し身構える。
「…ん!?…ノノカ…?ただい……!!?」
幸がただいまと言うのと同時に、急にノノカは腹部に向かって飛びこんできた。
勢いの強さに、幸は一瞬吐きそうになるも口をなんとか抑えて堪える。
ノノカは、そのまま頭から飛び込みながら幸に抱きついた。
「さち!!おかえりー!!待ってたよ!!大好き!!!」
(なんだなんだ!?急に何が起こってるんだ!?)
鼻息をふんごふんご言わせながら、必死にくっついて幸の腹部を締め付ける。
ノノカの絞め技に、幸は息が苦しくなり始めた。
何が起こってるのか分からない幸は、顔を青くしながら耐えていると、照れているノノカは次に、苦しんでいた幸の服を持って部屋に無理やり連れていこうとする。
「ぐおおお!!!つ、連れてかれるー!!!」
幸が叫んでいると、連れていかれたリビングにはたくさんの料理が並んでいた。
見たことの無い数の料理に、幸はこれまた恐怖した。
お祝いごとでもない平凡な日に突然、普段とは違う出迎えと、豪華な食事。そして、家に帰ってからずっと遠くで静かに見守るだけの学級委員長。ある意味恐怖であった。
「おいおいおい!?ちょっと怖いんだけど!?何!?今日なんの日!?なんかあったっけ!?」
幸が恐れながら震えていると、ノノカは幸の隣に座って、ニコニコしながら幸の様子を見ている。
「あの…。ノノカさん、この料理は…?」
「幸の為に頑張って作った!食べて!!はやく!!」
「えっ!?」
目の前に広がる多くの料理は、ノノカが頑張って作った料理だった。
見た目が綺麗に作られている為、癒菜がメインで作って、ノノカが手伝ったのだろうと幸は察する。
とにかく早く食べろと急かしてくる為、箸を取り恐る恐る食事を始めた。
まず1品、1番手前にあった肉じゃがを口に頬張る。
すると、あまりの塩っ辛さに幸は咳き込んでしまう。
どうやら、砂糖と間違えて塩を入れたようだ。しかも塩はおそらく1瓶分フルで入っているような辛さをしていた。
「ううぅ!!ゴッホッ!!うぇっ!!!ゴッホッゴッホッッ!!」
「さち!?大丈夫?!うぅ、美味しくなかった?」
ノノカは涙を流しながら咳き込む幸を心配しながら、悲しそうな顔をする。
そんな様子を見た幸は、なんとか咳き込みを筋力で落ち着けると、別の料理も食べ始めた。
全ての料理の調味料がバグっており、ミートスパゲティが超絶甘かったり、シチューが辛かったり、ハチャメチャなものばかりだ。
それでも、作ってくれたノノカの為に食べるしかない幸は、無理やりに口に詰め込んで、最後には白目を向いて意識を喪失した。




