ミッション・イン・ネンネ2
自然の猛威には、逆らえない。
ネンネとノノカは、迫り来る雨足から凄まじい速度で逃げるように走っていたが、とうとう雨に追いつかれてしまう。
その日の雨量はかなり多かった。雨粒は大粒のものが降り注いでいた影響で、ノノカとネンネは、少ししか雨に当たらなかったのにも関わらず、全身びしょ濡れになってしまった。
ネンネは、自身の体を左右に早く震わせることで、水気を飛ばすことが出来たがノノカは違う。
髪の毛や服、全身から水滴がこぼれ落ちて、乾くにはかなりの時間が掛かりそうな状態になってしまった。
2人は雨に当たり続ける前に、咄嗟に入ったよく分からない建物の中で雨が上がるのを待つことになる。
ピチャン…ピチャン…
暗く、冷える建物の中で天井から落ちてくる水滴の音が響き渡る。
「ノノカ様!!大丈夫ですか?!濡らしてしまい、すいません!!」
ネンネの心配とは裏腹に、濡れたノノカは静かに服の水を絞った後に、建物の隙間から外を眺める。
「大丈夫だよ!すごい雨だね!雨止むといいなー。」
ノノカとネンネは、そのまま数時間その場で雨宿りするが、一向に雨が止むことはなく、さらに雨は強くなる一方だった。
ザーザー降りの雨の中、日は完全に沈み、夜遅くになってしまう。
2人の入った建物は、ボロくなって隙間風がよく吹く建物で、内部は良く冷える。
雨に濡れたノノカには耐えられない程、建物の中の温度はどんどんと下がっていった。
「ネンネ…。寒い。」
先程と比べて、ノノカの身体は冷えきっており、隙間風がその状態を助長していた。
何とかしなければならないとネンネは考えて、建物内に何か風を防ぐことが出来る場所はないかと辺りを見渡す。
建物内には、木製の大きな箱や鉄製の大きな箱が沢山積まれている状態で、それ以外には何も無かった。
1つ、ネンネは木製の空箱で蓋が空いてあるものが置いてあり、ネンネとノノカの2人が入っても全く問題のないものがある事に気づく。
(これだ…!!この箱の中に2人で入れれば、隙間風の影響もなく、私がノノカ様を直接温められる!)
ネンネはすぐにノノカの元に駆け寄ると、震えるノノカを背中に乗せて、先程の木箱の中に入り込む。
蓋を閉めると、木箱の中は真っ暗で何も見えないが、2人で入り込むと隙間が無くなるほどピッタリサイズの大きさの為、密着してお互いの身体を温めることが出来た。
時間の経過と共にノノカの服も完全に乾いて、ネンネの体温のおかげでノノカは常に暖かくて気持ちのいい状態となる。
「ノノカ様、もう寒くないですか?」
ネンネは震え無くなったノノカを見つめる。
ネンネの目は人間とは違い、暗い環境でもすぐに適応することが出来る。その為、ノノカの様子を常に確認することが出来た。
欠伸をしながら、半開きの目になっているノノカは半分眠りながら話す。
「ネンネ。ネンネってポカポカしてるね。ノノ眠くなってきちゃった。ふぁ〜。」
まだ幼いノノカは疲労と心地良さにより、そのままネンネの身体の中でスヤスヤと眠ってしまった。
2人は現在の時刻も分からないままその場から雨が上がるまで待機する事となり、結局雨は次の日の朝まで振り続けた。
翌朝、ノノカと共に眠ってしまっていたネンネは木箱の外側から響き渡る機械音と多人数の人間の声で目覚める。
「おーい。これで最後だな?ゆっくり詰め込めよ!」
男の人間の声が木箱のすぐ横から聞こえると、木箱本体が機械により持ち上げられる事となり、大きく揺れ出した。
「な、なんだ!?何が起こってる!!?くっ!!出られない!!!」
「え!?うわぁあ!!!何これ!?」
2人の入った木箱は昨日とは違い、南京錠で施錠されている状態となっていた。
出られない状況の2人は、木箱に入ったまま何処かに積まれてしまい、木箱が詰め込まれるとゴォーーーという、けたたましい音とともに何処かへと出発した。
「何が起こっている!!クッソが!!!こんな所から、私がすぐに出してみせますので、もう少しお待ちください!!」
ガンッ!!ガンッ!!!ガンッッ!!!
ネンネは、自身の頭部を木箱天井の蓋に何度も勢いよく打ち付ける。
その様子を隣で見たノノカは、心配してやめるように促す。
「ネンネ!!痛いでしょ!?怪我しちゃうから!!」
ノノカが静止をした時、天井からバキッと木材が割れる音が聞こえた。
「大丈夫です!ノノカ様。私はこう見えて、頑丈なので!!」
ネンネはそう言うと、更に勢いよく天井の蓋に頭部を打ち付け、見事蓋を破壊することに成功する。
しかし、外に脱出したネンネとノノカの目に移った光景は驚くものだった。
なんと、そこは海上の上の船であり、ネンネとノノカが昨日入り込んだ建物は、船に積む積荷の倉庫であったのだ。
「うわぁ!すごく綺麗!!!?たくさんのお水の上に居るよ!すごい!!」
「ッッ!?おぉぉお!!!なんでだあああ!!!?これでは、家に帰れぬでは無いか!?余計にどこか分からない場所にいい!!!」
始めてみる海に興奮しているノノカとは裏腹に、ネンネは本来かくはずの無い汗をかいて、悶えていた。
2人が海を見て、別々の反応をしていると、後ろから声が聞こえる。
「は…?あれってヒョウ!??それに隣は女の子!?うっそだろ!??」
たまたまノノカ達の後ろを通った乗船員が、2人を発見したのだ。
船上での業務中に突然現れた珍客を見つけ、乗船員は焦って船室に向かって走っていく。
船室に入った乗船員は警報を鳴らし、船内全体にアナウンスした。
【A-7エリアにて、現在猛獣のヒョウと幼児が居るのを発見!!直ちに、艦内への避難と装備の着用を!!】
突然の緊急アナウンスと警報に、他の乗船員達も驚く。
「は!?ヒョウだと!??何言ってんだ!?動物園から抜け出してきたのか!?こんなコンテナ船の中に居るなんてありえねぇだろ!!」
「幼児もいるのか!?もし本当なら襲われてるんじゃないのか!?早く救助しないと取り返しがつかないんじゃ!?」
海を見ていた2人も船上全体に響き渡るアナウンスと警報に気づく。
咄嗟に後ろを振り返ると、そこには装備品を既に身につけ、拘束具を持った乗船員複数名がネンネを取り押さえようとゆっくり近づいて来ていた。
「ちっ!!気づかれちまったか!!お前ら!女の子に危害を加えられる前に取り押さえるぞ!!」
「うおおおお!!!!捕まえろー!!!」
乗船員達はネンネに気づかれた途端、勢いよく飛びかかってきた。




