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忠義を尽くす男と獣

2025-5-23 誤字修正更新

クラスの皆がザワついている。

最近は、驚きっぱなしの毎日だったが、今日はまた別の驚きが発生した。


うちのクラスにて一軍の中心におり、不真面目を極めていた石作。

勉強はまともにせず、とにかくいつも周囲の人間と談笑していた彼が、今日は静かに机に向かっているのだ。

その取り巻きの2名についても同様だ。

工藤と江藤、この2名は低学年の頃に石作と衝突して敗北した後は、常に石作の背中にくっついて回っている、言わば手下のような存在。

彼らもまた、不真面目であり、素行の悪さで有名だったのだが、今日は石作とも休憩時間以外は全く話すことなく、静かに勉学に励んでいた。


「先生、ここの問題の解き方が分からないんですが、教えて貰えますか?」


「お、おう!石作、今日はすごい励んでいるな!先生驚いたぞ!」


石作ら3人の変化に、教師も驚いていたが、真面目に勉強へ取り組んでくれている3人を見て喜んでいるようだ。


(石作君達さ、なんか…変じゃない?)


(あの3人が真面目に勉強してやがる…!!どうなってんだ!?)


皆こぞって石作らに関心を集めている中で、幸達は、ある可能性について考えていた。


「なぁ、夢坂さん。あれってさ、あの変わりようってさ、やっぱりあれだよね。。」


「えぇ、竹取くん。あの変わり方はあれしかないわ。これまでこういう事は信じていなかったけど、間違いない…。」


2人の思っている意見は、どうやら一致しているようだ。

ノノカも2人が、話しているのを聞いて、気になっていた。


「ねえねえ!さちとママ!あれってなに?あれって!!おしえてー!」


ノノカが痺れを切らして、幸と癒菜の服を両端から引っ張ると、2人は揃って同じ言葉を言った。


「「頭の中弄られてるな」」



どうやら、クリオネのロボットが登場した事を、皆覚えていない。

あの日の出来事を、癒菜がクラスの女子に話してみたが、皆一同に覚えていないようだった。

幸と石作が喧嘩をした所は覚えているようだが、その結末やクリオネの事に関してだけ記憶がすっぽり抜け落ちているようで、気づいたら自分の家のベッドに寝ていたらしい。


「これって、あのクリオネの仕業だよね…?人の記憶や人格を変えてしまうなんて…すごい技術力…。」


癒菜は宇宙文明の技術力の高さに少しゾッとする。

幸も同様だった。宇宙を光速以上の速度で移動でき、地球にまで来られるその技術力は、人間の科学技術力とは天と地の差がある。

もしも、ノノカがノノカの母星にて重要な人物であったのならば、とんでもない事が起きるのではないだろうか。そんな事が脳裏をかすめた。


しばらくして、授業が終わるとお昼休みとなった。

幸と癒菜がお弁当の準備をしていると、奥の方から石作らが来た。


「竹取。学級委員長、ちょっといいかな?ノノカ様も一緒にお聞きくださると幸いです!」


石作らは、幸達のとなりに自分達の机と椅子を持ってくる。

クラスの皆は、また喧嘩が始まるのではないかとザワついたが、石作が気にする様子は無い。

席を隣に付けると、その席に座って、話し始めた。


「まず、あらためて昨日は本当にすいませんでした。俺らが馬鹿だったばかりに、ノノカ様と2人を傷つけてしまう事に。もう二度とあんな真似はしません。」


「俺達も、ホントにすいませんでした!!!」


深い謝罪だった。恐らくキャトルミューティレーションされている状態なので、本心から謝っているのかは不明だが、かなり申し訳なさそうにしている。


「さちとママを叩いたらダメなんだよ?いたいいたいは、かわいそうだもん!わかったぁ?」


ノノカは、普段の癒菜を見ているせいか、癒菜のような怒り方で石作達を叱った。


「はい。分かってます。あの日、何があったのかよく覚えてないんですが、眩しい光の中で、俺達は神様に会ったんです。その時に自分達のこれまでやって来たことを振り返らされて、、愚かさを思い知らされました。それに、ノノカ様が神様のお子様という事もその時に知らされて…。」


ノノカは神様の子供。

クリオネの頭の中を改造する?行為は、予想よりも凄まじい変換をさせているようだった。

石作らは、そう言うと顔を伏せ急に涙を流し始めた。


「俺らは、とんでもない事をしてしまったと、本当に思ってるんです。もう少しで手遅れになるところでした。」


ノノカは、石作らが泣き始めると、石作らのところに行って、ヨシヨシした。


「いいよ。さちとママも元気だもん。泣かないで」


ノノカのそんな優しい言葉に、石作は感動しはじめた。

石作らがノノカを見る目は、まるで尊敬の目だったのだ。


「なんてお優しい…!!ノノカ様!聞いてください…!!俺らは、思ったんです。ノノカ様には俺らみたいな奴らから守る為に、護衛が必要なんじゃないかって」


幸と癒菜は石作らの話を聞きながらポカーンとなった。

護衛?そんなワードが飛び出してきたからだ。

ただの幼児に護衛を付けるなんて話聞いたことがない。


「ちょっと待って、護衛って何言ってるの?馬鹿じゃないの?そんなもの居たら窮屈で仕方ないでしょ。それにそんな人を雇うお金なんてないし!」


癒菜がそう言うと、幸も隣でうんうんと頷いた。

幸はもうこれ以上目立ちたくない気持ちでいっぱいだった。


「そういうかと思い、私達は3人おりますが、私一人が護衛として、今後毎日、遠目から見守るというのはいかがでしょうか?私はお金なんぞ必要ありませんし、ご迷惑はおかけしないかと思います。」


石作は、自信満々に胸に拳を当ててドヤ顔をしてして、そう話す。

幸と癒菜は呆れて物が言えない。


(いやいや、お前みたいなやつはもう近くに居ないだろ!!お前がいちばん危なかったんだから、護衛もいらないわ!!)


幸は、静かに心の中でツッコミをいれる。

すると、その場にいた石作と癒菜と幸に心話が聞こえてきた。


【その人間の言う通りだ。竹取幸、夢坂癒菜。】


聞き覚えのある声だった。少し機械質な声をしている、クリオネロボットの声だ。

3人は、空を見たり辺りを周辺を見回したが、クリオネの姿は確認出来なかった。

その場には声だけが聞こえるような状態らしい。


【私は、その場には居ない。しかし会話を聞いていたぞ。】


クリオネロボットは、その場に居ないのにずっと会話を聞いていたらしい。

もはや、なんでもありの技術だ。ドラ〇もんでも作れるんじゃないのかと思ってしまうほど。

そして、クリオネロボットは続けた。


【お前達は、私の託したノノカ様を守れるのか?お前達人間には奇怪な奴らも居ると聞く。今回危険な目に合わせたのは事実であろう。守れぬのであれば、守れる者を傍に置く。当然の話だ。】


クリオネの言うことは至極真っ当な話だ。

確かに今回、ノノカを危ない目に合わせてしまったのは事実としてある。

今後も不審者や、何かしらのアクシデントに見舞われる可能性だって全くないとは言いきれない。

全力で否定するには、力も権力もなにもない2人には無理な話だった。


「そこまで言うなら護衛なら、アンタがすればいいじゃないか!!あんたがいればいいだろ!」


幸は、勝手にノノカを押し付けられた挙句に、護衛をつけろとまで言われて、頭にきていた。

クリオネは、少し黙るとまた続ける。


【私はできない。言っただろう?今は母船の修復で手が離せない。無理だ。だから、おまえ達にプレゼントがある。】


クリオネがそう言うと、教室の中央付近の椅子や机や生徒が四方に吹き飛んだ。するとその中心に光の玉のようなものが突如として現れる。


「なんだあれは!?」


皆が、一同に中央の白い光の玉を見つめていると、中から大きな何かが、ノソノソと出てきた。


【私からの贈り物だ。その人間だけでは、不甲斐ないだろう?だから、大いに役立ててくれ。】


クリオネの言葉が終わると、中心にいた生物の姿が徐々にあらわになっていった。

雪の様に白い毛皮に鋭い爪。スマートな出で立ちで、整った顔つき。

その姿はまるで、白い世界の芸術品。


「ユキヒョウだ…」


次第に周囲は、悲鳴と恐怖で埋め尽くされた。


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