ノノカの砂のおうち。
おまけ回になります。
星の子ノノカの竹取育成簿10話記念!!!
ちょっとした、ノノカの裏話…。
2025-5-23誤字修正
雲ひとつない青空の日の朝、1つの家で争いが起きていた。
ノノカ(約1〜2歳くらい)と夢坂癒菜(17歳)は、お互いを睨みつけながら沈黙している。
2人が居る場所は家のリビング。
手元にはノノカ用に作ってある暖かい食事が並んでいた。ごはんに人参と玉ねぎのお味噌汁、鮭のチーズ焼きだ。
癒菜がノノカの栄養を考えて作ってくれた食事だったのだが、一口も食事が進んでいなかった。
長い沈黙のあと、先に口を開いたのは癒菜だ。
「ノノちゃん、そろそろご飯食べよ?せっかく暖かいのに、冷めちゃったら美味しくないよ?」
癒菜は、先程までの引きつった顔を緩めると、急に天使のような笑顔で語りかける。
ノノカにご飯を作ってあげてから、現在まで約1時間。食事が一切進まず、温めては冷めてを何度も繰り返している。
根気強く1時間の間に何度も何度も、ノノカにご飯を食べさせようとするも、一切口にしようとしない。
それどころか、そっぽを向いている状態だった。
癒菜は、ノノカがあまりにもご飯を食べないので、徐々に(どうして食べてくれないの!?せっかく美味しく作ってあげてるのに!)という気持ちでいっぱいになり、態度と表情につい出てしまっていた。
少し経ったあとにその事を自覚した癒菜は、一旦自分を落ち着かせて、次の手段としてこれまでに無いほどにすんごく優しく語りかけてみる事にしてみた。
しかし、その努力も無駄に終わる。
「や。」
機嫌が悪いノノカは、そっぽを向いたまま、ただ一言「や。」と言うだけだった。
癒菜は優しい笑顔を保っていたが、こういう時の経験が無い事から、困り果てる。
「なーんで、や。なの?ノノちゃんの為に作ったんだよー?沢山食べなきゃ大変だよ?」
癒菜がもう一度ノノカにそういうと、ノノカは急に大声で叫び始めた。
「やー!!いやいやいやー!!!やだやだー!!やー!!」
この日から数日間、癒菜と幸と宇宙問題児ノノカの壮大な戦いが幕を開けることになる。
その日は結局朝食を食べずに終わることとなった。どうしても食べてくれないので、癒菜が根気負けしたのだ。
そのままお昼になり、次はノノカが外で遊びたいと言うので、幸はノノカを連れて外の公園に遊びに行くことになった。
公園に出かける際に、癒菜は幸に静かに囁く。
「竹取くん…。ノノちゃんなんだけどね、多分今イヤイヤ期に入っちゃってると思う…。なんでもやだやだってなるから気をつけてね。」
幸は癒菜とノノカの朝食時のやりとりの際、癒菜とノノカの女の戦いを見ていたが、間に入ることが出来なかった。
これまでノノカがあんな風になる事がなかった為、幸は静かに見守ることしか出来なかったのだ。
そんな時にノノカを連れて公園に行く訳で、幸の心情的には、心配でならない。ただひたすらにノノカには穏やかにいて欲しいと願うばかりだ。
(ノノカにイヤイヤ期なんてものがあるのか…。というかイヤイヤ期ってなんだ?俺よく知らないんだが…。)
不安を感じながら、ノノカを連れて外に出ると早速ノノカの行動に異変が起きる。
一緒に手を繋いでゆっくりノノカのペースで歩いていた2人は、ノノカが上機嫌だった事もあり楽しく会話しながら公園に向かっていた。
「さちとあそぶー!あそぶー!うれちい!」
「あんまりはしゃいじゃダメだぞー?怪我しちゃうからな。」
楽しそうなノノカを見て安心しきっていた幸は、このまま公園までこのテンションで行ってくれれば何も起こらなさそうだなと思っていた。
しかし、現実はそう甘くは無い。
ルンルン足で歩いていたノノカが歩く足を突如止めたのだ。
「……ん!?ノノカ?どうした?」
幸がノノカの異変に気づくと、さっきまで楽しそうだったノノカの顔は少しずつ曇りはじめ、その場に座り込んでしまう。
何が起こったのかと幸が思っていると、ノノカはボソッと何かを言った。
「…れちゃ…。」
「…なに?」
聞き取れなかった幸は、もう一度ノノカが何を言ったのか尋ねる。すると、ノノカは少し大きめの声でもう一度同じことを言う。
「ノノ…つかれちゃ。ノノね…もううごけない…。だっこして!!」
急な抱っこのおねだりがきた。ダメだと言うと暴れ出す可能性があると見た幸は、仕方なくノノカを抱きかかえると、そのまま公園へと向かう。
しばらく立ち、目的地の公園に着くと抱きかかえていたノノカを下ろそうとした。しかし、抱きかかえられていたノノカは幸の腕を思いっきり握りしめて、降りようとしない。
(え…。ノノカ全然降りようとしないんだけど、?公園で遊びたいんじゃないの…?俺の腕限界なんだが)
幸の腕は既にプルプルしていた。体育会系の人間じゃない幸は、筋肉がそんなに発達していない。手の筋肉も足の筋肉も大した事のないものばかりな身体で2歳児を抱っこし続けるのは、至難の業であった。
「ノノ…ノノカさぁん…。降りないんですかあ…?公園着いたけど。ほら、小さい子達はみんな走り回って遊んでるよ。」
公園で元気に遊ぶ子供達を指さして、遊びに行きなと言いながらノノカを降ろそうとするもダメだった。ノノカを地面に近づけると全力で拒否してくるのだ。
「やだ!!やだやだやだ!おりない!おともだちじゃないもん!しらないもん!さちといっしょがいいんだもん!」
ノノカが全力拒否するも、幸もそろそろ本当に限界が来ていた為、とにかくノノカを一旦降ろすために2人きりで砂場で遊ぼうよと咄嗟の判断で提案してみる。
すると、意外にもノノカの反応は良く「あそぶ!さちとあそぶー!!」と出発時のテンションと同じような状態に戻ってくれた。
近くの砂場に着くと、ノノカを砂場に降ろして、その場で少し一休みをする。
軽く汗もかきながら、震えた筋肉を落ち着かせていた。
子供用の砂場は、たくさんの子供たちが遊べるように、かなり大きめの砂場となっている。
大人が30人くらいで仮に遊んだとしても、余裕があるくらいの大きさだ。
ノノカは砂場に降ろされると、早速嬉しそうに走り回って近くで砂の何かを作り始めた。
「さちぃ!きて!こっちきてー!はやく!!」
ノノカは、ハイテンションで砂を山のように盛り始める。
幸は疲れた体を起こして、ノノカの所に向かった。
「はいはい。ノノカは、砂で山でも作るの?」
一生懸命に砂を掻き集めて山のように砂を盛るノノカに尋ねると、首を横に大きく振る。
どうやら、山を作っているようでは無いみたいだ。
何を作るつもりなんだろう?と幸がノノカの隣で静かに見つめていると、ノノカは泥だらけの手で幸の服を掴んできた。
「あッッ!!えっ!!おい!?俺の洋服があ!!?」
幸のお気に入りの服には、しっかりと泥のシミが付いた。
かなり気に入っていた服だったので、ショックを受けていると、ノノカは少し怒ったような声で幸の服をくいっと引っ張った。
「さちもぉー。なんでみてるだけ!いっしょにやるっていったあ」
目をウルウルとさせながら、見つめてくるノノカ。
確かに2人で遊ぶと言って砂場に来たのも確かだったので、服を汚された怒りの感情を抑えて、ノノカが作っている物を手伝うことにした。
「悪かった。俺も一緒に遊ぶよ…。ノノカは今何作ってるの?」
「やったぁー!おうちだよ!いっしょにつくろうよう!」
彼女が一生懸命に作っていたのは、砂の山では無く家だった。
作り方も分からず、砂を固める水も無かったので、とにかく砂を掻き集めていたようだ。
ノノカの意思を汲んで、近くに捨ててあったボロボロのバケツに水を汲んでノノカの掻き集めた山に水を少しずつ掛ける。
「え…!!お水かけるの?」
「そうそう!おうち作るんだろ?任せな。俺は砂遊びは得意なんだぜ?」
幸も小さい頃は、よく1人で砂場で遊んでいた。
1人でモクモクと砂場で遊び続けること数年、彼の砂で作る作品は、もはや芸術作品と言われてもおかしくない程の作品へと変わっていた。
そんな砂場のスペシャリストである幸に、久しぶりに創作欲が沸いたのだ。
「やるなら、徹底的にやるぜ!ノノカ!!」
「うん!!!」
2人はそれから時間を忘れて、何度も何度も家を作り始めた。
作っては破壊し、作っては破壊しを繰り返す。
ノノカの理想の家を作るまでそれは続いていった。
お昼過ぎから始めた砂のおうち作りは、日が沈む頃にようやく完成に至った。
ノノカの頭の中の家は、マンションのような形や、お城のような形の家ではなく、普通の戸建ての家だった。
「ふぅ…。やっと出来たな!ノノカも満足したかな?」
「うん!!さち、かっこいい!!すごい!!」
ノノカは、満足気になりながら作った砂のおうちの入口に砂を棒のように縦長に固めて、3本並べて建てていた。
「ノノカ、その3本の砂の棒は何?」
幸が、立派な家の前に立てられた砂の棒について聞くと、嬉しそうに答えた。
「さちとノノとママだよ!!みんなで、いつもいっしょ♡」
ノノカは、3人で幸せに暮らしている姿を作りたかったようだ。
嬉しそうに作った家を眺めていると、遠くの方から焦ったような声が聞こえてきた。
「危ない!!離れて!!」
遠くで野球をしていた少年達のバットで打ち上げたボールが運悪く空からノノカ達の近くに落ちてきた。
声が聞こえた幸は、咄嗟にノノカの上に被さってノノカを守る。
幸い、2人の元にボールが落ちてくることは無かったが、2人が一生懸命作った家に落ちたようで、家がぐしゃぐしゃになってしまっていた。
「すいません!!大丈夫でしたか?!」
野球少年は、急いで走ってきて2人に声をかける。
「あぁ。大丈夫ですよ。気をつけてください。」
特に怪我もなかったので、野球少年に注意だけした。
野球少年は、そのまま「すいませんでした!!」と大きい声で謝罪をすると、ボールを拾ってそのまま仲間達の元へ帰って行く。
ふと、ノノカの事を見つめると無言で座っていた。
「ノノカ、大丈夫か?怪我とかしてない?」
ノノカの心配をして、声をかけるとポタポタと大粒の涙を流して悲しい表情をする。
突然涙を流し始めたノノカを見て、怪我をしたのか!?と身体のあちこちを確認するも、特に怪我の跡などはないようだった。
ノノカの目線の先には、壊れてしまった砂のおうちがあり、壊れたことが余程ショックだったらしい。
何時間もかけて、ようやく完成したおうち。
今から作り直すと夜までかかる事は確定していたが、幸は泣きじゃくるノノカには弱かった。
「…ノノカ。大丈夫だ。何度壊れたって戻せる。俺は天才だからな!少し待ってな!!」
そういうと、せっせともう一度砂のおうちを作り始めた。
ノノカは涙と鼻水でグズグズになりながらも、その姿を見つめていた。
しばらく経ち夜遅くなった頃に、もう一度同じ物が完成した。
途中から幸を手伝い始めたノノカも、幸も長いこと砂場で作業していたので全身泥だらけになっている。
満足そうな2人は、少しの間完成した家を並んで見ていた。
かなり長い時間を使って2人で作った力作の為、この姿を忘れないように幸は自分のスマホを取り出して写真を撮った。
撮影した写真をノノカに見せると、とても喜んで2人で写真も撮りたいとも言い出した。
幸は、自分の事を撮影するのが恥ずかしかったが、ノノカから強くお願いされ、恥ずかしがりながらもノノカと幸と砂のおうちが写るように内カメラで写真を撮った。
「さちぃ!!…ありがと…!!」
「おうよ!!じゃあ、そろそろ帰るか!ママも心配してるからな!」
自宅に帰る際、ノノカは幸から借りたスマホで2人が写った写真をずっとニヤニヤしながら何度も見返していた。
「ただいまー!!!」
2人が家に着き玄関に入ると、心配そうに癒菜が走ってきた。
「おかえりー!!ちょっと、帰り遅すぎない!?大丈……え!!?何その姿!??」
泥だらけの2人を見て、驚く癒菜。
それから、帰りの時間が遅い事と泥だらけの事について怒った癒菜に30分近く2人は正座させられる事となるのであった。
これからもノノカをよろしくお願いいたします。
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