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覚悟と正解

竹取幸の人生初の喧嘩。

一人の男として、彼は立ち上がる!


学校終わり、約束の放課後になると幸は、自販機に向かった。自販機にて飲み物を2本買うと、1本を勢いよく飲みきった。


「ぷはーっ。やっぱこれだよな。フルーツオーレイ。これ飲むと力が溢れるんだよな。あとは、とびきりのコイツに細工をして持っていくだけだな。」


購入して飲まなかったもう一本を、手に取ると、その場で上下に何度も激しく振った。

振った飲み物は炭酸飲料のようで、振る度に膨張して缶が膨れ上がっていった。

膨れあがった飲み物をカバンの中に忍ばせて、グラウンドに急ぐ。


グラウンドに着くと、そこには、クラスメイトが集まっていた。

昨日あんな事になったのだ。誰もがその行く末を気にしている。

中には、心配そうに見つめる人も居たが、ほんの数人程で、片手で収まる程度だ。

グラウンドに到着した幸を石作は、発見すると、大きな声で幸に言った。


「臆病者のゴミがよく逃げずに来たな!ほらこっちに来いよ。」


石作は、手に鞭のような物を持ちながら、さちに向かって手招きをする。

幸は生唾をゴクリと飲み込みながら、1歩1歩進んだ。

そして、石作の目の前に立つ。


「まずは、土下座しろよ。調子乗ってすいませんでしたって。」


不敵な笑みを浮かべながら、指を地面に向けて指した。この状況を心から楽しんでいるようだ。

人を弄ぶのが好きなのが心から伝わる。

しかし、幸はその石作の態度を見ながらも一切動こうとしない。

黙って、石作の事を見つめるだけだ。


「………。」


次第に石作は、目の前で立ったまま動かない幸に少し苛立ちを見せはじめる。

自分の指示を聞いても尚、全く動こうとしない幸の態度が物凄く反抗的に映っていた。


「おい…。竹取。お前いつまでそうやってつったってんだよ。俺の命令聞こえなかった?土下座しろって言ってんの。」


再度念を押すように石作は幸に対して命令をする。

しかし、幸は動かなかった。

微動だにしない幸に苛立った石作は、幸の胸ぐらを掴んだ。


「土下座っつうのが聞こえないのか?ゴミ野郎が。とっとと跪けよ。」


幸を無理やり土下座させようと力を入れた瞬間。石作の腕を幸が思いっきり掴んだ。

震えた手で、力強く掴むと、幸は答えた。


「ここに来たのは、あんたらに謝る為じゃない。俺の間違いを正すために来た。」


幸の勢いに石作は、少しうろたえるも、すぐに幸の掴んだ腕をさらにつかみ返した。


「上等だな。調子に乗りすぎて、とうとう、頭が湧き始めたか?殺してやるよ。」


「こっちのセリフだ。テメェなんかにいつまでもヘコヘコしてると思うなよ。カーストなんて関係ないんだ。俺はもう逃げない。」



掴み合う2人を取り囲むように、クラスメイトが見つめていた。

そして、その出来事をクラスメイトの1人が癒菜にメールで送っていた。


(癒菜!大変だよ!!竹取くん、癒菜達の事で怒ってるみたいで、あの石作くんと喧嘩しようとしてる!!)


自身の家でノノカと食事をとっていた癒菜は、メールを見て驚く。

幸の事を、どうしようもない臆病者でクズだと思っていた癒菜は、今日の放課後の石作の招集も、どうせ無視して帰るか、ただ黙ってやられるだけだろうと想像していた。


しかし、メールの内容には幸が自分達の事で怒って喧嘩をしようとしていると書いてあったのだ。

まさかの展開に、癒菜の身体が動き出す。


「…竹取くん。私…行かなきゃ!!」


癒菜は、ノノカを連れてすぐに家を出た。


「ママどこにいくの…?さちのとこ…?」


ノノカは、癒菜に向かっている先を聞く。

走りながら、癒菜は答えた。


「ノノちゃん。あなたのパパは、あなたの為に戦ってるみたいよ。パパのとこに行かないとね!」


その答えに、ずっと悲しそうな表情をしていたノノカは大きな笑みを浮かべた。


「さちぃぃぃ!!!」


ノノカの大きな声は、町中に響き渡った。


「竹取…。てめぇは、ボコした後に、全裸で町中を歩き回ってもらうからな!!!」


石作は、幸を怒鳴りつけると、思い切り殴りつけた。

殴っては蹴り、また殴っては蹴り、そして、その場にあった鞭で幸の事を思い切り叩いた。

痛みと衝撃で揺らぎながらも幸は、自身の体から溢れるアドレナリンの力で踏ん張り続けて、倒れることは無かった。


「俺だって、あんたらに謝ってもらう!!よくも2人を傷つけたな!!許せねぇ!!このクズ野郎が!!」


幸が叫ぶと、自身のバックに入れていた先程の飲み物をおもむろに出す。

その飲み物は、ここらへんの地域で有名な超高圧力炭酸水の暴水(ぼうすい)というものだった。

暴水という飲み物は、少しでも飲んだら、おならとゲップが止まらなくなる、取り扱い注意で有名な代物だ。

地域のごく一部の人間には親しまれている物だが、あまりの炭酸の威力に殆どの人からは、あまり好かれておらず、買われることもあまりない。


幸は、事前にその暴水を購入後、これでもかと言わんばかりに振っていた為、圧力のが上がり続けた暴水の容器は今にも爆発しそうな勢いで膨張していた。

そして、石作の目の前で、石作目掛けて缶を突然開けた。


「あんたも知ってるだろ、暴水!とびきり上等な奴だ。これでいっぺん死んどけ!!!」


「なっ!!コイツ…!!?」



ボショオオォォアアアアッッッッ!!!!



石作の目の前で缶から、恐ろしい勢いで炭酸水が飛び出す。その勢いは、幸の想像を超えており、500mlに入っている中身が全て一気にで出てきた様子で、かなりの量だった。

炭酸水は驚いた石作の目や口に入り、さらに顔面に高威力の水圧による打撃。まるで大人に思い切り殴られたような衝撃が石作を襲った。


「があぁあ!!!かっっは!!!ゴホゴホ」


そして、服もびちゃびちゃになりながら、石作はその場に倒れ込んだ。

幸も暴水を放出した勢いで、缶ごと後ろに弾け飛んでしまい、体勢を崩す。

石作は重い一撃をくらい、目もかなり炭酸水が染みて開けることが出来ず、口から入った炭酸水のお陰で、ゲップとおならが止まらない状態になった。


「か、、身体が…。ぐぅぅ…!!くっそ痛てぇ…目も開けれんねぇ。クソが!!竹取…!!暴水なんて仕込みやがって、ゲップ…汚ぇぞ!!」


今まで自分に逆らう人間もおらず、自尊心とプライドの塊だった石作にとっては、この上ない屈辱的な状況になり、怒りが更に頂点に達していた。


「汚ぇのは、お前だろ。さっきから、屁とゲップで忙しそうじゃねーか。」


幸は少しバカにしたような言い方で石作を煽る。

幸の言った言葉に、クラスの数人が石作を見てクスクスと笑う。


(石作くん…おならが…プッ)


(ちょっ…笑うなって…!おもろいけど…!!クスクス)


クスクスと周りからうっすら聞こえてきた石作は、更に怒りのボルテージが上がっていく。

頑張って目を開けて立ち上がろうとするも、目は痛みからか、開けられない。

そしてなにより、顔面を強く打った事で脳にも衝撃が加わっていた。


周りから見ると、無理やり立ち上がろうとする姿が何とも情けない状態となってしまっている状態だ。


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