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発病

優秀な外科医だった巽は、突然、お稲荷さんに襲われて精神病になります。

それは、本当に突然だった。三月の光は柔らかく暖かそうに見えるが、まだ寒さの残る空気の冷たい日だった。

 巽は、地元の神社に恋人の由梨と一緒に行った。残念ながら、神社は神戸の大震災で壊れていた。平家ゆかりの神社で、由梨はお参りすることを楽しみにしていたが仕方ない。父親に借りた車を車庫に戻して、家に入った。

  その時だった!

目の前に、白い大きな狐が見えた。狐は言った。


(お前は選ばれた!)


(は!?何!?)


声に驚くと、また頭の中に声が響いた。


(呼ばれて、飛び出てジャジャーン!!)


(は!?何!?このふざけた声は?)


(じいちゃん?)


その声は、じぶんが十歳の時亡くなった母方の祖父の声だった。


(巽!お前、すごいな!お前hq、選ばれたんだぞ!神様、仏様通信だ!)


(え!?何!?何を言っているんだ?)


でも、声は聞こえてくる。


「どうしたの?」

由梨が聞いてくる。僕は、言葉を出せなくなった。頭の中で声がする。


目の前を透き通った白狐達が、走り回っている。


「うわー!!なんだこれ!?なんだー!?」


「どうしたんだ!?」

一階の書斎にいた父が、飛び込んできた。僕は、頭を抱えて何度も玄関の床に頭を打ち付けた。

 父は、僕の頭を押さえながら由梨に言った。

「これは、まずい!精神病の発作かもしれない!由梨ちゃん!救急車呼んで!」


巽の父親は、総合病院の院長で外科医だ。精神病に対する知識もある。


「近づくなー!由梨ー!!俺に近づくなー!うわぁ!!やめてくれー!静かにしてくれー!頭の中で、頭の中に声がするー!!」


巽は、叫んだ。


巽の父親は、巽を抱え込み由梨に叫んだ。


間違いない!精神病の幻聴だ!由梨ちゃん、巽から離れてくれ!巽!巽!!大丈夫だ!」


巽は、神経だけが痛みを感じて絶叫を上げながら、気絶した。 


目が覚めたら、白い天井が見えた。ガバッと起き上がる。白いシーツが目に入り自分が鉄製のベッドに寝かせられていることに気づいた。そして、むき出しのトイレが目に入りギョッとした。窓には鉄格子、ドアも鉄。


 (ここは、ここはまさか)


「気が付かれましたか?」


 声だけが聞こえてきた。頭の中じゃない。耳から聞こえてきた。部屋の天井に、スピーカーがあった。


(ここは、この無機質な鉄格子の部屋!ここは、ここは、精神病院の保護室だ!医大時代に、実習で精神病院にも行った)


 巽は、扉を叩いた。


「出してくれ!だしてくれ!僕は正常だ!」


スピーカーの声は言った。


大丈夫です。落ち着いてください。誰も、あなたに危害は加えません。ここは病院です」


「そうだ!わかってる!ここは、病院だ!精神病院の保護室だ!冗談じゃない!出してくれ!僕は正常だ!」

 

「落ち着いてください。少しずつ、お薬が効いてきますから休んでください」


今度は、頭の中から声がした、目の前に、白狐が見えた。


(おいおい、落ち着けって。お前は選ばれたんだよ。陰陽師だ。涅槃教の陰陽師になるんだ。金も女も意のままになる。何にも心配することはない)


「うるさい!うるさい!黙れ!!」


僕は、頭を抱えて叫んだ。スピーカーの声が言った。


「声が聞こえてきますか?それは、幻聴です。落ち着いてください。ここは、病院です」


 「あー、わかってる。ここは病院だ。精神病院だ」


落ち着こう、まず落ち着こう。それなのに、頭の中から声がしてきた。あの白狐の声だ。


(なあ、そう荒ぶるな。お前は選ばれたんだよ。次世代の涅槃教の幹部だ。喜べ)


 たつみは、必死で考えた。医学書の手引きを思い出した。これは幻聴だ。病気の症状だ。


(なあ、聞こえないふりするなよ。お前は、霊能に目覚めただけだ。ただ、ちょっとやりすぎた。脳内物資のバランスが崩れたんだ。大丈夫だ、お前なら使いこなせる。なあ、信じてくれ。お前は霊能者だ。陰陽師だ)


巽は、思わず両手で頬を叩いて叫んだ。


「うるさい!うるさい!静かにしてくれ!」


スピーカーから、また声が響いた。


「声が聞こえてきますか?それは幻聴です。落ち着いてください。ここは病院です」


「あー、わかってる。ここは病院だ。精神病院だ」


落ち着こう、まず落ち着こう。それなのに、頭の中から声がした。


(なあ、巽。そう荒ぶるな。お前は選ばれたんだよ。次世代の涅槃教の幹部だ。喜べ)


巽は、必死で考えた。医学書の手引きを思い出した。これは幻聴だ。病気の症状だ。


(なあ、聞こえないふりするなよ。お前は霊能に目覚めただけd!ただ、ちょっとやりすぎた。脳内物資のバランスが崩れたんだ。大丈夫だ、お前なら使いこなせる。なあ、信じてくれ。お前は霊能者だ。陰陽師だ)


巽は、思わず両手で耳を叩いて叫んだ。


「うるさい!うるさい!静かにしてくれ!」


スピーカーから、また声が響いた。


「落ち着いてください。私は医師の伊藤です。あなたは病気で、ここは病院です。まず、横になってください。

 薬が効いてくるはずです。暴れないで、静かにしてみましょう」


 頭の中から声が響くのが苦痛で、巽は言われた通りにした。


(苦しい、苦しい。だけど、声は聞こえ続ける。


(お前は霊能者だ!霊能者なんだよ!病気じゃない。お前は目覚めたんだ!)


冗談じゃない。やめてくれ!霊能者なんかになりたくない





























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