異世界 プレイヤー
森の中の集落に足を踏み入れると住民からの
視線をちらほらと感じる。
確かにこんな山奥の集落、訪れる人が少ない
のも仕方ないのかもしれない。
(村八分的な扱いを受けてるな俺… どうしよう)
このままだと今回はなんの収穫もなしに現実へ
逆戻り…
というか無事現実に戻ってこれるかどうかも
怪しくなりだしている。
(どうする? 一旦ここを離れるか?)
戦略的撤退を本格的に考え始めたその時。
「あんたプレイヤーだろ! こんなところになんのようだ」
声がして振り返ると老人が立っていた。
背が低くあまり高圧的な印象はもたないが自分が
よそ者であることはわきまえているので心の中で
仕事用の低姿勢モードに切り替えて
「あの… 僕ペンダントの力で近くの森に飛ばされて来たん
ですけど… プレイヤーって何のことですか?」
「だからそれがプレイヤーだろ! ペンダントの力でこの
世界にきた人間!」
「あの! その話詳しくお願いします!」
老人はペンダントの力でこの世界に来て秘石を持ち出して
いく連中の総称がプレイヤーなこと。
ここにプレイヤーがくることは珍しいこと。
秘石はこの世界の住民にとって神のご加護を受ける為に必要。
例えば「健康の秘石」を健康を司る神に供えるとその年は
健康に過ごせるといった具合らしい。
プレイヤーが大量に秘石を奪っていくのでこの世界の住民にとって
俺達プレイヤーは迷惑な存在なんだそうだ。
「わかったか! さっさとこの村から出てけ!」
よくみると周りにも人だかりができ始めている。
これ以上ここに留まるのはマズイと考え、
俺はとりあえず話を聞かせてくれた老人にお礼を
言い、足早に集落を後にした。
(勢いできちまったけどこれからどうしよう…)
前回のことを考えるとそろそろ現実に戻される
頃合いだ。
(このまま収穫ゼロで現実に戻るのか?)
「何やってるの?」
声の方向に振り返ると高梨茜が立っていた。
こんなにも人との再会が嬉しいのは
初めてな気がする。
「よかった…!」
「まさかあんただったのね!
でもごめんね!」
茜がそう言った矢先に何かを投げつけ
られて煙があたり一面に出てきた。
そう…そこまでは覚えていた。
ー目が覚めた後ー
気づくと両手を縛られて前回薬草を
秘石と交換した町の入り口にいた。
「というわけで今回のプレイヤーハント
優勝者は高梨茜だぁ!」
周りの野次馬達がうるさい。
何が起こったのかさっぱりだ。
今はもう何も考えたくない…
数時間後、騒ぎが落ち着いた頃合いを
見計らって茜に問いただした。
「わかったよ 説明するから」
茜によるとときどき秘石をかけて
プレイヤーハントというイベントが
行われるらしい。
プレイヤーに対して敵対的な住民が住む
地域にプレイヤーが飛ばされた時に発生
し、他のプレイヤーに飛ばされた奴を
探させる。
そいつを捕まえた奴には賞品が贈呈され、
逆に飛ばされた奴が誰にも捕まらずに逃げ切れば
飛ばされたプレイヤーが賞品をゲットできる。
「まぁ滅多に起こらないけど、
ペンダントのバグで起こるから」
「っていうか俺達ってプレイヤーって言うんだな
秘石集めに嫌な顔する住民がいるとか
この世界について知らないことが多いな」
「まぁ私もそんなに歴は長くないけど
ちょっとずつ知ればいいんじゃない!
…それより」
茜が何が差し出してきた。
秘石だ。
それも虹色に光っている。
「プレイヤーハント限定で手に入る秘石。
どんな効果があるかは帰ってからの
お楽しみってやつ!」
「ありがとう! でもいいのか?」
「プレイヤーハントの賞品は虹色の秘石5つだから
お裾分け! あんたも2回目でプレイヤーハントに
巻き込まれて大変だっただろうし!」
茜に礼を言った瞬間体が光りだした。
今度は茜も一緒に光っている。
「また会いましょ」
「ああ また」
俺達は光に包まれながらそれぞれの
現実に帰っていった。