現実世界 帰還
「うぅ~ん」
目を覚ますといつも通りの景色が待っていた。
決して広々とはしていない都内のワンルーム。
現実、戻って来たのだ。
「ペンダントつけて寝てからの後のことは夢?」
俺はふとそんなことを考える。
でも体を起こして目の前のテーブルを見ると、
異世界で手に入れた健康の秘石が置いてあった。
「…てことは、夢じゃない!」
今までのことが現実だと確認できたあたりで
ペンダントが急に光りだした。
そしてペンダントに共鳴するように健康の秘石も
光りだした。
「えっ 熱っ!」
思わず触れたペンダントの石はとてつもない
高温だった。
光り続けていた健康の秘石はペンダントの石に吸収され
消えて無くなってしまった。
「何なんだよ 一体…」
考えても仕方がないので仕事に向かいつつペンダントを
くれた老人を探すことに決めた。
その日の営業は奇遇にも1件契約を取り付けられた。
取引先に消火器を点検してみるよう呼びかけたところ
使用期限が切れていたのだ。運がよかった。
午後になり会社に戻る途中、あの老人と出会ったあの公園
に寄ってみることにした。
もちろん期待はしていなかったのだが…
(マ…マジでいた!)
公園のベンチに座っている老人を発見。
一目散に老人に駆け寄り、ペンダントについての
説明を求める。
「そうか…無事ディアルフォートに行けたんじゃのう」
この爺さん、異世界に行くことを知っていたらしい。
なんだか無性に殴りたくなってきた。
「秘石は手に入れたかい?」
「あぁ 健康の秘石だっけ?
一つ手に入れたよ ペンダントに吸収されたけど」
「そうか、無事吸収されたか」
それから爺さんは秘石について説明を始めた。
大まかにまとめると
1 秘石はディアルフォートで仕事を行うと
仕事の内容によって対価としてもらうことが
出来る。
2 秘石には他にも種類があり、与えられる効果は
それぞれ異なる。
3 手に入れた秘石は現実世界に戻り、ペンダントに
吸収して初めて恩恵を得られる。
4 一度に持ち帰ることのできる秘石は10個までで、
それ以上はもっていてもディアルフォートに
置いたままとなる
「ちょっと待て! 持ち帰れなかった秘石はどうなる
落としたまま誰かの物になるのか?」
「まぁ拠点があればそこに置いておくことは出来るかの」
「拠点?」
爺さん曰く、街に借家を借りることが出来れば持って帰れない
秘石は無駄にならないらしい。
「借家を借りるにはどうすればいい?」
「それは大家との交渉次第としか言いようがないわい」
とりあえず、今後も行くのであればまずは拠点確保が先決に
なりうるだろう…。
「最後に一つ」
急に爺さんの声色が変わった。
「ディアルフォードは一度行くと現実世界で
丸二日経たないと行くことができんぞ」
「しかもより難度の高い秘石が欲しければ滞在が丸一日では到底足りん」
改めて考えれば爺さんの話していることをこんなに鵜呑みにしているのは
本当は危ないことなのだろう。
だが、目の前の爺さんの喋り方には説得力に溢れていた。
そして、爺さんがひとしきり話し終えて
「まぁあとは自分で頑張ってみなさい」と言って去っていくのを
尻目に俺はまたあの世界にいくことが自分のなかで確定していた。