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ゲーム始めたら公爵令嬢だった件  作者: シュナじろう
イベントボス出現! 幻のゴーレム タ・ロース
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77.奴ら、三度目の登場!? 立て直せ! 真打ち出現予告!


 その後、ほどなくして王都に攻めてきたタ・ロースが撃破され、そこから他のタ・ロースへと王都のプレイヤーたちが流れていったことで他二体もしばらくの後に撃破された。

 前哨戦の後の巨大なボス級モンスターということもあって、これが真打だろうと私達は考えていたのだけれど――すっかり勝利モードに入っていた私達に水を差す存在がひょっこり現れた。

 他の誰でもない、天使族の里で分かれて以降音沙汰がなかったゴリムラさん達である。

 話を聞くにどうやらゴリムラさん達。

 受けていたクエストの影響でメッセージ機能を含む一部の便利機能を制限されていたらしく、私達には一切連絡することができなかったんだとか。

 そして彼の口から語られたのは、まさかの真打ち登場の予告だった。

「邪教集団のアジトで捕縛イベントが発生しちまってな。ファストトラベルもメッセージ機能も制限されて、こっちの詳しい状況は一切伝えらんなかったんだ。渓谷から脱出して、やっとそれらが解禁されてここへ来たってわけだ」

 私達がいるのは、王都のヴェグガナルデ公爵家邸。

 さすがに長いクエストの後でちょっと休みたいということで、落ち着いて話せる場所で説明をしたいと言われたので彼を私の部屋まで招待した次第である。

 もちろん、この場には鈴とアスミさんも同席している。

「ふぅん……それで、頑張って脱出している間に、アジトの外ではイベントボスとのバトルが行われてしまったって感じかな」

「いや。そいつはねぇな。脱出クエスト中に盗み聞きした話によれば、邪教集団の連中が今晩放ったやつらはあくまでも威力偵察も兼ねた試作品らしいからな」

「試作品って……」

「あぁ。神官や天使族だけじゃなく、他にも神性のある生物を怪しまれない程度に狩って、その血を貯めていたらしい。試作品に充填していたのも、天使族以外の、その他生物の血――を、水で薄めたものだったらしいな」

 ということは、ゴリムラさんの言うことが本当なら、当然スペック的にもこれから登場するであろう真打のタ・ロースの方が高いということになる。

 確かに、インパクトの割には意外とあっさり倒せた、っていう印象が大きかったもんね。

「あれよりも数倍強い敵が、この後現れる……」

「あぁ。俺達がアジトで手に入れた情報によれば、明日の午後に、その真打ちが放たれるらしいな」

「明日か……」

 明日は、イベント開始から一週間が過ぎて再び土曜日となるイベント八日目だ。

 それを踏まえて先程あった都市防衛戦を考えてみる。

「明日は土曜日ということもあって、社会人も含む多くのプレイヤーがログインすることになる。それを踏まえて考えると、今晩の奴をイベントボスとするには、やっぱり不自然さはぬぐいきれない、か……」

 なによりも、食事時にボスが現れた、というのが一つの大きな疑問点となっていた。

 イベントの目玉の一つともいえるそれを、どうして微妙な時間帯にリリースするのか、と。

 それもゴリムラさんの話が真実ならつじつまは通る。

 本当のボスがまだ登場していなくて、先ほどのタ・ロースすらも前哨戦の一環だったとするならば、確かに頷けなくはない話ではある。

 それでも、前哨戦と言えどあえてそんなプレイヤーが集まりづらい時間にそれを実行した理由にはわずかながらも疑問は残るけど。

 ――まぁ、それはもう、考えてもキリがないことだろうから、無理やりにでも切り替えていくしかないか。

 過ぎてしまったことはもう頭の中から放り出して、明日の午前中に攻めてくるという真打ちのタ・ロースとどう向き合うか。

 それについて話し合う方が建設的だしね。

「問題点があるとすれば、大きく分けて二つ。一つは、ゴリムラさんの話が本当かどうかを信じてくれるプレイヤーがどれくらいいるのか、というのが未知数であること」

「それに関しては問題ないだろ。……ほれ、受注クエストの履歴だ。さっき終えてきたばかりのクエストのナビ。これを鈴ちゃんやアスミンの配信に流してもらえれば、真実だとすぐに伝わるだろ」

 なるほど、確かにそうか。それならこれは論外、話に挙げるまでもなかったか。

「んじゃ二つ目。こっからが大問題なんだけれど……多分、多くのプレイヤーはさっきの前哨戦と試作品タ・ロース戦でかなり消耗してしまっているはず。それをリカバリーするには、一晩じゃとてもじゃないけど時間が足りない」

「消耗した状態。ハンデを背負った状態でイベントボスと戦えってことか……。俺達も脱出クエストの影響で消耗品が軒並み在庫不足だし……ハンナちゃんに鈴ちゃん、悪いがどうにかできないか?」

「頑張っては見る、けど……」

 部屋の隅っこで控えているミリスさんに視線を合わせてみる。

 私達の分は確保できているのかどうか、という私の疑問に、ミリスさんは一つ頷いてこう答えた。

「お嬢様たちが使う分に関しては、先日も申し上げました通りまだ作り置きがありますので問題はありません」

「じゃあ、他のプレイヤーたちに回す分を作れば問題ないってことか」

 この辺りは、他の薬師プレイヤーの人と頑張るしかないだろう。

 今晩の残りの時間と明日の午前中は、また調合三昧かなぁ。

 イベントポイントの割り振り対象スキルに、通常スキルの方で取得しなおした【調合】をセットしたんだけど、なんか無駄になりそうだなぁ、これ。

 まぁ、その分【観光】スキルとか【指揮鞭】スキルに回せるからいいんだけど。

「とりあえず、明日のお昼までに私達がしないといけないことは、ポーション類の量産ってことになるね」

「それと、さっきあったっていう試作品タ・ロースとの戦いで武器や防具も消耗しただろうから、その補修もしなといけないよな」

「あ、それもあるね」

「それに関しては問題ないかと。ハンナ様はのものはもちろん、ここ最近は鈴様やアスミ様のものもあちらの世界に戻られている間にお預かりし、手入れをさせていただいておりますので」

「そういえば……。私、アトリエ・ハンナベルを開いてからこっち、修繕を頼んだ覚えが一回もないや……」

「言われてみれば……私もゲーム始めてから一回も装備品の手入れを生産職の人に頼んだ記憶がないですね」

 鈴がゴリムラさんの指摘に頷きかけたところで、ミリスさんがフォローを入れる。

 そうなんだよね。

 私、何気に武器や防具の補修はログアウトするたびにミリスさんが済ませてくれてるんだよね。

 おかげで武器や防具の補修代金が浮いて、ものすごく楽させてもらってるよ。

 他にも料理を用意してくれたりとか。

 その料理も貴族の家の料理だけあって、携行食といえどかなりおいしい。鈴はもちろん、アスミさんも『もう他の携行食なんて食べれない』って言ってるし。

「何それ羨ましい……。ま、俺も似たようなもんだがな」

「へぇ。ゴリムラさんのユニーククラスも同じような利点があるんだ」

「あぁ。配下のNPCに生産関連に特化したやつがいてな。盗賊団時代から武器や防具の補修はそいつ任せにしてきてた。料理は普通に店売りのやつ買ってたけどな」

「あはは、本当に似てますね」

 ほんと。レアリティの違いから初期スキルに大分差があるとはいえ、ユニーククラスの特権としてはやっぱり似通った点が多い印象を受ける。

「さてと。課題としては、そんなところかしらね」

 はっきり言って、プレイヤーたちの消耗に関しては、本当に明日の午前中にどうにかしてもらうしかない。

 私は生産職としては完全に薬師だから、ポーション類の補充くらいしかできないし。


 とりあえず、武器やなんかは再びミリスさん達に預け、私達はアトリエ・ハンナベルに戻って調合三昧の準備を始めた。

 ありがたかったのは、カチュアさん達斥候三姉妹に加えて、今回はゴリアテ傭兵団の人達も素材集めのために協力してくれたことだ。

 明日のイベントボスに備えるために、ゴリアテ傭兵団のみんなが手伝ってくれることになったのだ。

「ハンナちゃん、私達もここ、使わせてもらえるかな」

「わかりました。必要な素材があったら作りますから、言ってください。ある程度なら作れると思いますので」

「ありがとう」

 DL勢のゴリアテ傭兵団メンバーの何人かは薬師を選んだらしく、私の工房に残って自前の調合器具で調合をしている。

 レベルもこのイベント期間中に大分伸ばしたのか、割と安定した品質のポーションを作れているようだ。

「ハンナさん、このV-POTベースβって、どうやって作るんですか?」

「これ? これは――」

「エリクシルポーションって、どうやったら作れるんでしょうか」

「うん? エリクシルポーション? えっと――」

 と、そんな感じで時たま質問されることもあったけれど、おおよそ私は私なりのペースでポーションを量産することができ、おおよそ各種百本くらいは作ることができた。

 とはいえ、もともと試作品タ・ロース戦のおかげで大分時間も経ってしまっていた。

 調合三昧を始めたのも10時半ごろの話だったので、今晩中に作れる量などたかが知れている。

 それでもこれだけの量を作れたのは、純粋にこのゲームでの調合システムの仕様と、調薬スペースの鍋の容量によるところが大きい。

 一回の調合で、普通の容量のポーションなら30個分がまとめて作れる、というのはかなり大きいだろう。

 最も、ものによって液量が異なるので、全て同じとまではいかないけど――回復系のポーションなら、大体が小容量のペットボトルサイズなので、同じくらいの量ができる計算だ。

「ふぅ……とりま、今日作れる分は作ったし、続きは明日の午前中かな」

「お疲れさまでした。私達は、もうちょっとだけ作業していってもいいですか?」

「えっと……どうなんだろ、ミリスさん」

「この方たちは私の弟子というわけではないので、軽い助言くらいしかできませんが、それでも良ければ」

 監視も兼ねて、彼ら彼女らを監督してくれる、ということか。

 傭兵団の薬師PC達にも確認をとって、それでも問題ないということだったので、ミリスさんに後を任せ、私は傭兵団のPCに先んじてログアウトすることにした。



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