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ゲーム始めたら公爵令嬢だった件  作者: シュナじろう
第二回公式イベント
122/145

118.イベント専用フィールドのモンスター達


 ミリスさん達、侍女チームが作ってくれた温かいスープを飲んで、無事に『凍傷』を解除できた私達。

 れあちぃずさんもレアンヌさんも、『凍傷』によって受けていたVTダメージや最大VTダメージをケアできたし、少しの時間ながら『凍傷』への耐性も得ることができたのでこれでしばらくは安寧だろう。

 その間に各自できることをやりつくして、安心して拠点として利用できる環境を作っていかないといけないだろう。

 ちなみに私達がスープを用意して飲み終わるまでの間にも、ちらほらとここに到達したプレイヤー達のパーティが存在していた。

 彼らもさすがに極寒フィールドに放り出されるとは思ってもいなかったようで、スープを用意している私達を見るや否や、物欲しそうな顔でこちらを見て来た。

 仕方がないのでミリスさん達に追加でスープを作れるかどうか聞いたところ、問題なく作れるとのことだったので、それでとりあえず満足してもらうことにした。

「いやぁ、いつも鈴ちゃんの配信で見てたけど、やっぱりハンナちゃんの従者さん達は優秀だな」

「だな。今回のイベントも、ハンナちゃんが参加してくれて、しかも同じエリアに配置されてて正直助かったぜ」

 そう言いながら私の探索を手伝ってくれている彼らは、神殿跡でスープを分けた相手パーティの一つ。

 どうやら第一陣の時からゲームをプレイしていた最古参勢で、今回のイベントはランキング報酬狙いらしい。

「まぁ、こちらとしても皆さんが素材集めを手伝ってくださるそうなので、スープを分けた甲斐があったというものです」

「もらってばかりじゃあれだしな」

「俺達のパーティも、半分は寒波耐性が低い奴で占めてるからな。俺達が頑張らねぇと」

「それでも、盾タンクと魔法職が来てくれたのは助かったよ」

「私達のパーティでは、タンクとして立ち回れるのはハンナさんだけだからね」

 私は使用している武器的に、近距離戦では回避盾としても立てなくはない。

 回避盾で必要になってくるのはSPD値だし、回避盾として活躍している人の大半もSPDを重点に置いたビルドを組んでいるようだけれど――扇子を武器にする場合、その扱いは少し特殊になる。

 扇子を武器にする場合は、どれだけ敵の攻撃を回避できるか、ではなくどれだけ敵の攻撃を弾くことができるか、がキーになる。

 パリィの成功率を左右するのは、フィジカルの中ではSPDではなくDEX。つまり、扇子を主要武器として使用しており、生産職ということもあってDEX値を育てている私は、このゲームでは回避盾として一応は成立するということなのだ。

 まぁ、クラス的に耐久性には不安が常に付きまとうし、そもそもクラススキル的にも立ち回りとしては【激励】や【鼓舞激励】、その他通常スキルなどで支援系スキルを取得することによってチームのサポート役に徹する方が向いているといえば向いている。

 私が回避盾として前線に立つのは、やはり回避盾がいない時に臨時で、というニュアンスが強いかもしれない。

「まぁ、ここ最近は装備品もいい具合に揃って来てて、ただの回避盾にはおさまらなくなってきているけどね」

「えっと、どういうことかな、それは」

 同じパーティでイベントに参加する身としては聞いておきたいと思ったのか、ゆーかさんが反応してきた。

 といっても、別段特別なことでもないんだけど。

 防具やアクセサリに付いた特殊効果のおかげで、カウンターで『凍結』を付与して相手の動きを封じることが可能になったから、耐久性に多少の不安があっても問題はなくなったというだけだし。

「計算してみたけど、凍結を与える確率は、パリィに成功しただけで期待値的には75%を超えてたからね」

 期待値的にはそれプラス、カウンターアタックに成功でほぼ確実に凍結を入れられる計算になる。

 しかも、この確率は『相手の耐性に左右されるが、少なくとも○○%の確率』という文言の、『少なくとも○○%』という部分だけで計算した場合。

 この『少なくとも』という文言は、このゲームでは耐性無視を示すものということになっているので、同類の特殊効果を複数積み重ねれば私がやっているようにとんでもないことになってしまう。

 ――もっとも、前回の公式イベントのボスだったタ・ロースの様に、特定の状態異常に対し、その効果時間を異様に短くしてしまうというような、別の意味での耐性を持っているケースもあるようなので、一概にそれで最強になれるとは限らないのだけれど。

「うわぁ……。それ、味方としては心強いけど敵としてはやり合いたくねぇな」

「PvP系のイベントが来たら、ハンナちゃんとだけは当たりたくないな」

「そうだね。近づけば凍結、遠くても〈バーニングウェイブ〉とかで拘束されてからの魔法連射。どう考えても鉄壁過ぎるでしょ。しかも貴族系のクラスだから、TLK値が魔法職じゃあり得ないくらい高くなってるし」

 そういえば、鈴が魔法職でTLK値を固有フィジカルとして引き当てた場合の成長度合いについて、前に話してたっけ。

 魔法職の場合、TLK値は3/LVもあればいい方なんだって言ってたよね、確か。

 私はそれのおよそ1.5倍以上の成長率を誇っているし、なんなら社交界イベント対策でこっちも重点的に育ててるから、確かに尋常じゃないくらいになってる。

 魔法職の同レベル帯の人のステータス、見たことがないから比較してどうなのかはわからないけど、魔法職としては尋常じゃないくらいのTLK値になっているのだけは確からしい。

「魔法使い見習いから派生するクラスのほとんどには、【詠唱短縮】っていうクラス特性が付いて回っててさ。でも【詠唱短縮】ってクラスレベルとTLK値依存なんだが、ハンナちゃんのそれ、魔法系アビリティのクールタイムボーナスは、多分トップクラスの魔法職のやつらに準じるくらいだと思うぞ」

「だな」

 あはは……彼らは知らないみたいだけど、実は私もサブクラスに魔法使い見習いを持ってるんだよね。今はクラスアップして魔法使いになってるけど。

 だから当然、【詠唱短縮】特性も持っている。

 【詠唱短縮】のクラス特性は、魔法系アビリティのクールタイムに短縮ボーナスが入るクラス特性。その効果量は、同行者の一人が言っていた通り、【詠唱短縮】を取得したクラスのクラスレベルと、自身のTLK値に依存したものとなっており、両方が高ければ高いほど効果を発揮するようになっている。

 比重としては、クラスレベルの方が重いのだけれど――私の場合は、高いTLK値も相まって、普通にトップクラスの魔法職に追いつくくらいの効果を発揮するに至っている。

 あはは……これ、実は割と新しい出来事だし、このことは鈴にもいってない情報だから多分出回ってない情報なんだよね。言ったらたぶん驚くんだろうな。

「っと、話し込んでいるうちに敵が近づいてきやがった」

「だな。いつもより気配察知の範囲が広いからすぐに気づけたな」

 話をしている間にも、私達は群生地を見つけ次第、そこで手に入る素材を採取していたのだが、当然ながらフィールドを歩いていればモンスターにも遭遇する。

 どうやらこのイベント専用フィールドでは、ウルフやミノタウロス、オクタウロスなどといったモンスターと共にフェアリー種や、通常フィールドではそもそも見かけること自体がなかった、精霊系のキャラがモンスターとして多数出現するようなのだが――フェアリーに関して、通常フィールドとは異なる点がいくつか見受けられた。

 まず外見的特徴。このイベントフィールドに出現するフェアリーたちは、どういうわけかどす黒いオーラに包まれた状態で出現する。そしてその名称も、例外なく後ろに『・狂』という文字が付けられている(この見た目・名称についてはこのフィールドに出てくる精霊系の敵に関しても同じことが言えた)。

 例えばアイスフェアリーという寒冷地に出現する氷属性のフェアリーも、ここでは『アイスフェアリー・狂』という名前になっており、その名が示すように狂ったように普通のアイスフェアリーとは逸脱した強さを誇っていた。

 そしてその動き方も、まるで理性を無くしたかのように単調で、ただ強力な魔法を放つのみ。

 通常のアイスフェアリーなら、こちらをおちょくるかのように、多彩な氷属性の魔法を使って足止めをしたり、こちらの魔法を撃ち落としたりしてくる厄介な敵だというのに、その厄介さに拍車がかかったうえにやや強力な魔法も放ってくるようになっていて属性由来のデバフの危険度が高まっているため、見つけ次第真っ先に倒さねばならないモンスターともなっていたが。

「〈トリプル・バーニングウェイブ〉!」

 今回出てきたアイスフェアリーは、〈スノウストーム〉という魔法を放ってきた。

 〈スノウストーム〉は、氷魔法の中でも【氷魔法】スキルを取得した際に同時に覚えることができる最初期の魔法で、私も何度か使ったことはある魔法だ。

 効果は今私が使った〈バーニングウェイブ〉の氷属性バージョンともいえるもので、効果範囲もほとんど同じ。

 この魔法の効果は相手の【氷魔法】以上のレベルと同等のレベルの寒波耐性があれば無効にできるし、〈バーニングウェイブ〉を使うことで対抗できるので対応は楽といえば楽である。……まぁ、肝心の〈バーニングウェイブ〉は【雷魔法】を少し成長させないと取得できないんだけどね。

「おぉ……ハンナちゃんの〈バーニングウェイブ〉が相手の〈スノウストーム〉に圧し勝ってる」

「どんどん行くよ。〈デュアルスペル〉〈コンセントレート〉〈トリプル・ファイアランス〉チャネル1、リリース!」

 私の〈バーニングウェイブ〉が推し勝ったことで、アイスフェアリーたちは〈バーニングウェイブ〉の拘束効果で悶え始める。

 続けて〈ファイアランス〉によるとどめを刺しにかかった。

 〈デュアルスペル〉で2セット分登録したそれを1セットしか発動しなかったのは、アイスフェアリーが二体いるため。

 アイスフェアリー・狂はここまでの間に実はすでに遭遇済みで、私のファイアランスなら三発で余裕で倒せることが判明していたから、というのもある。

「ふぅ……やれやれ、ハンナちゃんが〈バーニングウェイブ〉で動きを封じてくれたから何とかなったとはいえ、やっぱり通常のフィールドとはかなり勝手が異なるな」

「だな。俺達も寒波耐性はあっても、アイスフェアリー・狂相手だと氷属性の魔法でのダメージが結構痛いからな。通常のアイスフェアリーとは勝手が違うのは、なかなかに厄介だぜ」

 確かに、『狂』とわざわざ名前を区別してまで、普通のフェアリー種とは違うのだということをアピールしてきている、このフィールドのフェアリーたち。その強さも、使用してくる魔法の強さも、通常フィールドの奴らと比較にならないほどこちらの方が上だ。

 先ほど私達で話し合った、この辺りで手に入る素材の品質のことや、NPCが感じ取っている精霊たちの異変といい、どうやら早くもイベントにまつわる情報が出つつあるのは確かなことだった。



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