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ゲーム始めたら公爵令嬢だった件  作者: シュナじろう
第二回公式イベント
121/145

117.フラグ満載のイベントスタート


 翌日の午後。

 私達は、前日に話し合った通りに集合してから、メニューに追加されていた『イベントに参加』ボタンをタップした。

 前の時のイベントと違い、盛大なセレモニーなどは特に行われていない。

 たぶんだけど、シグナル・9とのスケジュールの折り合いがつかなかったのだろう。

 さて、イベントに参加ボタンを押したことで私達は通常フィールドからイベント専用フィールドに転送され、事前に組んでいたパーティメンバーと同じ地点でイベントスタートとなった。

 普通のプレイヤーならその時点で早速周囲の状況を探るために軽い探索を開始するのだろうけど、私達はその前に一旦パーティを解散し、それぞれの従者を呼び出してから、改めてパーティを組むことになった。

 ただ、いつもと違って私が呼ぶメンツはミリスさん、フィーナさん、ヴィータさんの初期勢三人にサイファさん。あとは斥候三人娘から一人、という形に限ったけどね。

 残りはペアでパーティを汲むことになったれあちぃずさんと、れあちぃずさんが召喚した護衛二人と侍女一人、という形になる。ちなみに名義上のリーダーは私だ。

 ゆーかさんの方も同じ感じで、護衛の聖騎士三人にお世話係の神官二人。そしてレアンヌさんとレアンヌさんの従者三人という構成で、私のパーティとゆーかさんのパーティでユニットを組んでイベントを攻略する感じだ。

「……それで、召喚されたはいいのですが――ここは、どこなのでしょう」

「さぁ……さすがにそこまでは。そもそも通常のフィールドと同じ『世界』かどうかもわかりませんし」

 召喚されたサイファさんが、きょろきょろと興味津々といった表情で周囲を見渡しながらそう言ってきた。

 のだけれど、私には何とも答えることができない。

 地続きで、あるいは船かなんかで到達できるような『同じ』世界ならともかく、完全に切り離された別世界(サーバ)だったら、ここがどこかなんて答えようがない話だ。

「なんでもいいですが、ここ異様に寒いですね」

 サイファさんへの返答に窮していると、今度はれあちぃずさんが身を抱くようにしながらそう言ってきた。

 そう言えば――さっきから、異様に周囲が『白い』な……。

 そう思い、改めて周囲を見渡してみると――不意に、空から白い綿のようなものが降ってくる。

 これは――雪だ。

「って、雪!? まって、通常フィールドはまだ秋口だったのに、イベントフィールドは冬仕様なの!?」

 それ、なんて季節感の無いイベントなんだろうか。

 そう考えながらも、とにかくまずは暖を取れるところに移動すべきだろうと即座に提案する。

 私は、【氷魔法】スキルの副次的な効果があるから寒波には耐性があるし、【氷魔法】スキルは装備品によるブーストもあるので事実上の寒波耐性スキルのレベルも相応に高くなっている。

 具体的には、【寒波耐性】そのものを一時取得できるような装備品効果も合わせて、おおよそ70レベル相当の【寒波耐性】スキルと同等の耐性を持っていることになっている。

 だから、私は別に問題ないのだけれど――ゆーかさんにれあちぃずさん、それにレアンヌさん。さらに従者NPCの中でも寒さ慣れしていない人達は、すでに徐々にだが雪の結晶のアイコンが点灯し、VTが減り始めてきている。寒波によって継続ダメージを受けてしまうステータス――『凍傷』にかかってしまった証拠だ。

 早く暖を取れる場所を探さないと、早速リスポーンする羽目になってしまうだろう。

 幸いにも通常フィールドと同じように、イベント専用フィールドではイベント専用フィールド全体を網羅した専用のマップが用意されていたので、それを確認。

 すると、少し離れた場所に頼りに建物らしきものがあったので、そこに向かうことにした。通常フィールドのマップと違い、その建物がなんであるかは記載されていない。おそらくだが、探索を続けていくうちに上方が追加されていくのだろう。

 ともかくその情報を頼りにしばらく走っていると、やがて大きな神殿のようなものの跡地が見えてきたので、とりあえずはそこに身を寄せることにした。

 一部壁や天井が崩落しているので吹きさらしだが、ある程度は建物としての体裁を残しているので暖を取るなら問題はないはずだ。

 ここへ来るまでに集めて置いた木の枝などを置いて焚火の準備をし、【調合】スキルの『ドライ』で乾かしてから【火魔法】で火を灯す。

 そこへミリスさんをはじめとする侍女やゆーかさんのお世話役担当の神官さんが手際よく調理器具をセットし、さらに食材を取り出して料理の準備を始めた。

 ――って、食材!?

「ミリスさん、食材って持ち込めてたの!?」

「いえ。これらのものはサイファ様やエルミナが見つけてくださったものです」

「あ……なるほど」

 そういえばサイファさんやエルミナさん、ここへ来るまでの間にちょくちょく動き回ってたな。

 薪に使えそうな枝集めを手伝ってもらえているものとばかり思っていたけど、そういったものも集めてもらっていたのは助かるな。

「この辺りはフェアルターレや近隣諸国とは異なる植生ですが、調合関連の知識がいい具合に役立ってくれましたね。食べて大丈夫なものや毒になるもの、きちんと分けられましたので、問題なく召し上がっていただけるかと存じます」

 言いながら、ミリスさんが手際よく食材に調味料で味付けをしていく。

 ちなみに調味料に関しては私が持ち込んだ。

 これでも一応【料理師】スキルを持っているんでね。簡易調理セットは初期アイテムとして持っていたんだ。

 各種調味料一式も屋敷で使っている大容量のやつを分けてもらって組み込んであるので、しばらくは調味料切れの心配はないだろう。

 他に『貴族の裁縫セット』と『簡易木工セット』、それに『簡易金工セット』なども持ち込んでいるし、採取用に鎌なども持ってきている。もちろん『駆け出しの調合器具』はミリスさんの分も合わせて2セットだ。

 採取用の道具に関しては、今回の公式イベントにおける、私の参加主旨に直結することでもあるし、これも外せなかった。

 その分初期で持ち込めた消耗品は少なくなっちゃったけど、その分はすぐに挽回できるだろうと見込んでいる。

「……それにしても、運がよかったよね」

「え?」

「だってさ、こんな寒さと積雪の中、食材になりそうなものが見つかったじゃん。よく残ってたよね」

 言われてみれば……確かに。

 公式イベントでサバイバル。そしてスタート地点の候補地。これらのことを考慮して、運営側があらかじめ群生地に設定しておいてくれたのかもしれないけど――ここの季節感からすると、ちょっとミスマッチな気がしなくもない。

「それについては私も気になることがありますね」

(わたくし)も同感ですわ」

「ミリスさん達も?」

「はい」

 レアンヌさんに続き、ミリスさんとれあちぃずさんの侍女さん――クレアさんがそう言った。

「こちらの素材ですが――この雪の中自生していたにしては、品質が良すぎる気がします。寒さに強くなるような特性もないのにこれは少々おかしすぎるかと」

「そうなの?」

 気になって、まだ鍋に投下される前のその素材を私も確認してみる。

 なるほど、確かに言われた通り、『寒気適応(寒さに強くなり、寒さで枯れにくくなる)』などのそれらしい効果は付いていなかった。

 にもかかわらず、街の市場で売られていても遜色ないこの品質――何かありそうな気はする。

「私も少し気にかかることがございます」

 今度はレアンヌさんの侍女さん、ジェシカさん。エルフ族の彼女も、エルフ族らしい違和感を覚えたようだ。

「この地の精霊の活動についてですが、どういうわけか火属性の精霊が活発に動いているように思えます。しかし、その力も少々心許ないといいますか……」

 う~ん……? 火属性の精霊が活発に動いてるの? こんなに寒いのに?

 しかも火属性の精霊の力が弱弱しいって……これ、絶対に何かあるよね。

「いろいろ気になることはありますが、まずは暖を取ることから考えねばならないでしょう。スープを作りますので、今しばらくお待ちください」

「ありがとう、ミリスさん」

 さて――いきなり訳ありそうなフィールドに放り出されてしまったけど、これのっけから前途多難だよね。

 動こうにもれあちぃずさんとレアンヌさんは寒波への耐性が低いからうかつには動けない。

「役割分担を、する必要がありそうだね」

「そうだね。私達は、とりあえず拠点の設営をしておくことにするよ」

「れあちぃずと私は寒波に対する耐性が皆無だからね。一応、私は生産系で【木工】も持ってるし、若干だけど育ててるから、ちょっとしたものなら作れなくはないかな」

 どうやら、レアンヌさんは武器以外のアイテムは木工用の素材と工具を持ってきたようだ。

「野営具に関しては、私のを使ってもらえればいいよ」

 ゆーかさんがそう言って取り出したのは、テントをはじめとする様々な野営具。

 どうやら今回のイベントで必要になるのではないかと思い、他のプレイヤーに混じってこうした道具を見繕ってくれていたらしい。

 これはありがたい。

「このテント、張ると周囲に防寒結界が施される仕様ですね。これは高かったのではありませんか?」

「まぁ、クエスト報酬とか、結構ゲームマネー稼いでいたからねぇ」

 神殿所属とはいえ、基本的には『自分のために必要な金銭は自分で稼ぐ』のがその方針らしく、ゆーかさんは独力で結構な額のお金を稼いだようだ。

 私も私で自分で店を持つに至ったとはいえ、そのお膳立てはヴェグガナルデ公爵家がしてくれた。その点ではまさに正反対だ。

「決まりだね。私はテントとかをセットして、レアンヌが足りないものを【木工】でどうにかする」

「私は周辺のフィールドで、ポーションの素材になりそうなものを集めてきますね」

「ここに来るまでの間にも、薬草類の群生地らしきものはありましたから、すぐに必要量は集まるでしょう」

「私もハンナさんに着いて行くね。ポーションの数が揃わないうちは、回復もままならないだろうから」

「うん、助かるよ」

 とりあえず、その前にまずは満腹度を回復させるのが先決だけどね。

 それなりに満腹度が減ってしまっているようだし(たぶん、イベント開始時の初期値として最大満腹度の半分くらいにされていたはず)、ここらで一旦休憩しておくべきだろう。



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