第9歳-10月-(1)
今日は子役編の続きではなく、一つのギャグ回をあげます!
和恵果樹園附属學園の校庭の隅にある小山には何十年も前から一つの旗が突き刺さっていた。しかしそれは毎年のように旗の柄は変わる。今年の旗は串団子の柄の旗が刺さっていた。
「報告です!団吾郎番長!」
「なんだ?」
五年生の使者からの報告を和恵果樹園附属學園39代目番長の花頼団吾郎が聞き入れる。
「三年生の奴らが、旗を引き抜きました!」
「なにィ!?」
6-1と書かれた教室はざわつく。
「警備はどうした!」
「今日の当番班は何をしていた!」
団吾郎の周りにいた側近が声を荒げて使者に問い詰める。
「それが、今日の当番班の奴らが、寝返ったようで…」
団吾郎がドンッと強く机を叩き、ざわついていた教室が静まり返った。
「……龍凰院躊破か……?」
「……はい、恐らく」
団吾郎は歯を噛み締める。
「今日のケシパチ武闘会は中止だ!これより会議を始める!幹部共を呼び戻せ!」
「ハッ!」
使者達は6-1の教室から飛び出した。
和恵果樹園附属學園の隅にある小山、通称"イボ山"。この小山は"和恵"のイボだと學園創立当初の小学生が言い出したことからその名がついた。代々の番長は自分を誇示する為に、そのイボ山に旗を掲げており、今も尚その伝統は残っていた。番長とは"長"であり、その学校のトップを意味する。つまり、一番強い者がその座に君臨することが許される。
そしてその旗の柄が変わることは番長が変わることを意味する。その為その旗を抜くことは宣戦布告に値する訳だった。
「躊破!抜いてきたぞ!」
在吾がこれ見よがしに串団子の柄の旗をブンブン振り回しながら3-2の教室に入ってきた。
「あ、在吾!何をしているんだよ!」
躊破はその在吾を見て思わず慌てた。
「番長にはお前がなるべきだ躊破!」
「だから六年生になったら考えるって昨日言ったじゃん!」
「待てなかった!」
在吾は整った白い歯を見せながら親指を立てた。
時を遡ること昨日放課後。
「ちゅーくんはさ、まだ番長になれないの?」
脚手が躊破と在吾との帰りの道中躊破に尋ねた。
「まだ、というか、そもそもなれないよボクなんか。それにあれは六年生がやるものでしょ?」
「別にそんなことないらしーぜ。昔には五年生で番長になった人もいるらしい!」
在吾も口を挟む。
「ちゅーくん番長なっちゃいなよ!人気なんだしさ!」
実際躊破の元には人が多く集まっていた。まず子役をしていたため、有名人ということで保護者や先生は躊破を丁重に扱った。それに影響された児童達は自然と躊破を中心として考えるようになった。また、仲良くなっておくようににと親に唆された子供は、躊破に気に入られようと必死だった。そして一個下の学年、つまり躊破の次の代で入学した花美露の学年は花美露自体が人気者でそのお兄ちゃんということで二年生にも好かれていた。更に容姿が良い為、学年問わず躊破のことを気にかける女子も多かった。そしてその女子を狙う男子は自分が気に入られようと躊破の友達になるのに必死であった。
こうして躊破に大きな派閥が出来上がってしまい、意図しないうちに三年生にして六年生の現番長、団吾郎と対立するような構図ができてしまっていたのだった。
そして躊破はそのような勢力や番長の話には興味無かった為、その場では六年生になったら考えると言い、場を落ち着かせた──はずだった。
しかし、在吾の男の子魂には火がついてしまっていた。
「躊破!朕のすっごい活躍でお前を番長にしてやる!」
ブンブンと串団子柄の旗を振り回しながら躊破に言う。
「いや、いいって」
「朕はお前の右腕的存在。敵を倒し、ボスを更なる高みへ導く戦士!それが右腕的存在の使命だ!」
「じゃあボスの意見を聞いて欲しい」
「断る!」
在吾は整った白い歯を見せながら親指を立てた。
「でもどうやって旗を抜いたの?見張りがいたはずじゃ……」
大きな溜息をついて少し冷静になった躊破は在吾がどうやって旗の周りにいるはずの見張りを突破したのか気になった。旗の周りには、旗を塗り替えられないようにする為、一年生など何もわかってない子が抜こうとするのを防ぐ為に朝休み、15分休み、昼休み、放課後は常に番長の部下が警備しているはずだった。
「ばいしゅーした!」
「え?」
「それぞれに札束渡したら俺たちの味方についてくれた」
その場にいた者は目をぱちくりさせ、呆気にとられた。
こうして騒がしい昼休みは終えた。
次の日の朝。いつものように躊破は脚手と登校していた。在吾は朝が弱い為、いつも間に合わないのだ。
「おい」
くだらない話をしながら二人が登校していると校門前で三人の上級生が躊破達に声をかけた。
「お前、とうとう団吾郎番長に楯突いたな」
そう言われ昨日のことかと理解した躊破は即座に否定した。
「いや、あれはボクがやったことじゃなくて、友達が勝手に……」
「嘘をつけ!」
「嘘じゃないわ!あれは在吾くんが勝手にやったの!ちゅーくんは関係ない!」
脚手も躊破を庇った。
「うるさい!こっちは色々証言取れているんだ!今日の昼休みイボ山に来い!団吾郎番長からの呼び出しだ!」
そう言って三人組は去って行った。
「ごちそうさまでした!」
クラス全員での合掌と共に昼休みが始まった。その日は昼前から雨が降り出し、昼休みには本降りとなっていた。
「ちゅーくん、番長のところに行くの?」
不安そうに脚手が躊破の机に駆け寄る。
「行かないよ、雨だもん」
「だよね、よかったぁ。この雨の中行くのは流石にバカすぎるもんね!」
「バカ超えて大バカだよ!」
二人が楽しく笑っている中、花頼団吾郎はずぶ濡れになりながらイボ山にて躊破を待っていた。
「お、おい、龍凰院躊破はまだか!」
少し寒くなってきた団吾郎は同じくずぶ濡れになっていた側近達八人に聞く。
「所詮低学年なので食べ終わるのが遅いのかと!」
「そ、そうか。もう少しだな!もう少しで来るってことか!」
「まだか!」
5分経って団吾郎はまた聞いた。
「お、遅いですね」
「そもそも、ちゃ、ちゃんと伝えたのか!」
「は、はい!それは俺たち三人が保証します!」
朝躊破に声掛けた三人もずぶ濡れになって躊破を待っていた。
「まだかぁ!」
更に5分後。全員が少し震えてきた頃に団吾郎はまた尋ねた。
「お、俺が呼んできます!」
躊破が忘れている線を疑って、躊破を呼びに一人が走って行った。
「あら柿本くん」
走って躊破を呼びに校舎に戻ってきた柿本は先生に呼び止められた。
「どうしたのそんなびしょ濡れで」
「い、いや、大丈夫っす!雨じゃないっす!」
柿本は必死で言い訳をする。
「どう見たって雨でずぶ濡れじゃない。まだ5.6時間目残ってるのよ。ほら、保健室行くわよ」
柿本は保健室に連れて行かれた。
「柿本はまだか!」
更に5分経った団吾郎は側近に尋ねる。
「も、もしかして柿本も裏切ったのでは……!?」
「馬鹿言え!柿本はそんな奴じゃない!」
団吾郎と柿本は五年生から同じクラスの仲。団吾郎は柿本のことを信用したかった。
「じゃ、じゃあ次は俺が呼んできます!」
「一人じゃ危険だ!柿本がやられたかもしれないんだぞ!」
「じゃあお前ら二人で頼んだ!」
団吾郎はその二人を向かわせた。
「ま!あんた達までずぶ濡れで!」
二人は校舎に入ると先に柿本を保健室に連れて行った先生とばったり遭遇した。
「せ、先生、これは、その、」
「外が雨降ってるとは思わなくて」
二人は必死に言い訳をする。
「それびしょ濡れになって言うセリフじゃないわよ。風邪引くわ!ほらおいで!」
二人も保健室に連れて行かれた。
「ま、まさかあの二人まで…」
更に5分経った団吾郎は派遣した仲間が一向に帰って来ないことに恐怖を覚えていた。
「次は俺たち三人が行ってきますよ!」
躊破に朝声をかけた三人衆が声を上げた。
「お、俺も行く!」
団吾郎も声を上げる。
「番長が呼びにくるなんてカッコ悪いです!俺たちが呼んできます!任せて下さい!」
「わかった…頼んだぞ!」
「あーら!あんた達まで何してるのよ!」
三人は先の二人と柿本を保健室に連れて行った先生と遭遇した。
「先生!こ、これは汗ですよ!」
「そ、そうです!今日めっちゃ暑いですね!」
「10月なのに!これが残暑ですか!」
三人は必死に言い訳する。
「発汗作用どうなってんのよ。ほらもう昼休みも終わるんだから早く身体拭くわよ!」
三人は保健室に連れて行かれた。
昼休み終了のチャイムが鳴った。
「ぜ、全員やられたのか……」
雨の中立ち尽くす団吾郎と両脇二人だけが雨の中残った。
「ば、番長、とりあえず教室に戻りましょう」
「そうですよ。次授業なので急がないと」
二人が団吾郎に声を掛ける。
「……このまま、終われるか」
ボソッと団吾郎は呟いた。
「え?」
「このまま終われる訳がないだろう!旗は抜かれ、待ち合わせをすっぽかされ、仲間を殺されたのだぞ!」
「いや、殺されては……」
「うるさい!今から、今からでも龍凰院躊破を潰しに行くぞ!」
「でも、授業が!」
「授業が、どうした?」
団吾郎の目は本気だった。
ここまで読んでくださり、ありがとうございます。
唐突ですが、私事で3、4日休ませてください。理由はTwitterで書きましたので、気になった方は“小鬼健大”で検索したら出てきます。
本当にGW時期にすいません……。この話はストックなので、明日続きが上がります。このゴタゴタが終われば投稿頻度は戻すのでよろしくおねがいします!




