第8歳-子役編-(4)
18時以外の時間に投稿しようと思います。一番良い時間あったら教えてください!毎日投稿はしますのでよろしくお願いします。
「躊破くん。来てくれて嬉しいよ。今日はよろしくね」
テレビ局にて、躊破の楽屋に毒かめむしが足を運び、挨拶を述べた。
「よろしくお願いします!」
躊破は笑顔で返す。
この日は毒かめむしの持つバラエティ番組『毒吐いちゃってもいいですか?』の生放送の撮影日であった。6月24日に放送する、ドラマの最終回の前の枠で躊破と雛猫がドラマの番宣を兼ねて出演する。
躊破と毒かめむしが談笑していると楽屋の扉がガチャッと開いた。
「こんにちは。あれ?毒さんがどうしてここにいるのですか?」
入ってきたのは雛猫だった。雛猫が驚くのも当たり前である。この番組一番の大物が他人の楽屋に挨拶しに来ているのは異常なことだからだ。
「躊破くんは恩人だからね。では私はお暇するよ。二人っきりの時間を邪魔したらいけないしね。雛猫ちゃんも今日はよろしくね」
「何もないよ!」
ちょっと雛猫がムッとしたのを毒かめむしは見逃さなかった。
毒かめむしはゆっくり立ち上がり雛猫に微笑みかける。
「はい。よろしくお願いします!」
雛猫はすぐに気を直して丁寧にお辞儀した。
毒かめむしが楽屋を立ち去り、躊破と雛猫と躊破の後ろで立っている真の三人に沈黙が流れた。
「では、私ももう行きますね」
最初に口を開いたのは雛猫だった。
「え、もう?なんかして遊ぼうよ!」
躊破が何かないかなと持ってきた鞄を漁る。
「私はただ挨拶しに来ただけです。まだ色んな人に挨拶しに行かないといけないのですから、忙しいのです」
「ボクも挨拶しに行った方がいい?」
躊破は真を見る。
雛猫は何かを言いかけるも躊破が真に聞いていたので、口を噤んだ。
「いえ、ここでじっとしてて下さい」
躊破がトラブルメーカーであることをよく知っている真は最善手を選ぶ。真としては、一番の大物が味方だから、余計なことをしない方がいいという判断だ。
「では、失礼しますね」
真にお辞儀をして、部屋を出る。
雛猫は扉を閉めてから、一つ自分自身に溜息をした。
「はい始まりました!『毒吐いちゃってもいいですか?』!今回のゲストはこの番組初となる小学生!今人気沸騰中子役のお二人です!」
司会を進めるアナウンサーから紹介を受け、ぺこりと躊破と雛猫は挨拶した。
「いやー!この番組子供が出ていいんですか!?」
レギュラー出演している芸人『月夜は好きよ』の村井が早速イジる。
そもそもこの番組はトーク番組で、番組名の通り皆で毒を吐いて本音をぶつけ合うもので品性が欠けていると言われても仕方ない番組である。これが成り立っているのは、毒かめむしの場を収める能力が高いからである。
「いいんです!子供がいるから今日は皆さん節度守って下さいよ!」
「雛猫ちゃん、雛猫ちゃん、彼氏、彼氏いる?」
「早速品のないこと聞くな!」
早速芸人があえて品に欠ける発言をし、毒かめむしがツッコミをして場を沸かす。番組のスタンスを明確にするジャブといったところだろうか。
番組スタートから直ぐに芸人のペースである。
「では最初のテーマから話していきましょう!最初のテーマは『第一印象』!」
「こりゃまた今日は緩いテーマやなー!」
毒かめむしがテーマに触れる。
「早速雛猫ちゃんと躊破くんお互いの第一印象を聞いてみましょう!雛猫ちゃんは躊破くんの第一印象はどんなだった?」
「最初から明るくて、関わりやすいという印象ですね」
スラスラと雛猫は述べる。受け答えの練習も勿論していたので、そつないコメントをした。
「毒吐いていいんぞー!」
村井がツッコむ。
「次は躊破くん、雛猫ちゃんの第一印象どんなだった?」
毒かめむしが躊破に話を振る。躊破はテレビカメラを向けられてあまり話を聞いていなかった。
「ん-、お姉ちゃんはとても嫌な奴でした」
雛猫がショックを受けているところが抜かれて笑いが起こった。
「えー、なにされたん?」
『カバディーシンドローム』の石上が深堀りする。
「えっと、階段から突き落とされました」
「えっ、そんなことが……。って、ドラマの話してるよね!」
毒かめむしが笑顔でネタばらしをする。躊破は狙って言った訳じゃないが、雛猫がドラマで演じた役の第一印象を答えていたのだ。このままだと雛猫が悪い奴と視聴者に映ってしまうので、毒かめむしがうまく方向修正をする。こういうところがこの番組が続く秘訣である。
「ドラマの番宣をするとは油断も隙もできひんこっちゃなー」
村井が毒づいた。
「お前達の躊破くんと雛猫ちゃんの第一印象はどんな感じなんや」
毒かめむしが芸人たちに話を振った。
「そりゃもうかわいいに尽きますよ」
「こんな純粋な頃に戻りたいですもん」
「純粋じゃないから不倫とかしてしまうもんな」
「おい言うな!」
芸人の不倫ネタをイジって笑いが起こる。鉄板ネタである。
「僕は雛猫ちゃんの印象はいいですけど、躊破くんはあんまりよくないっすねー」
「ほぉ、どうしてなん?」
村井が切り出した話題を毒かめむしが掘り下げた。
「雛猫ちゃんは楽屋挨拶来てくれたんですけど、躊破くんは来てくれてませんからね」
「お前小さい男やな!」
「楽屋挨拶とか子供にさせるものじゃないやろ!」
周りの芸人が子供である躊破を庇うように村井を責める。それにムッとなった村井は反論する。
「いや芸能界としてのマナーでしょ!後輩は先輩に挨拶行くもんよ!ねぇ、毒かめむしさん?」
村井がこの中で芸歴が一番長い毒かめむしに話を振る。確かにこの番組内で一番の大物である毒かめむしにも挨拶に行っていないのはテレビ業界のマナーが守れてないと言っても過言ではない。それこそ干されてもおかしくないことである。どうなんだろうと場が一旦静まり、毒かめむしの言葉を待つ。
「私は今日躊破くんの楽屋に挨拶行ったけどね」
衝撃の言葉が毒かめむしの口から出た。この質問をした村井も予想だにしていない返答が来て、一瞬言葉に詰まった。だがしかし、村井も若手実力派芸人である。このキャッチボールは自分が返さなくてはと思い、ツッコミをする。
「60以上年上ですよ?わかってます?」
「誰がじじいじゃ!」
「言ってないですよ!」
観客も笑って、一段落ついた。きれいにオチがついて、村井も周りの芸人もホッとする。
「CMでーす」
戦場に一時休戦が宣言された。




