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THE・主人公  作者: 小鬼健大
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プロローグ

 現代から300年以上先の未来。ある学校では今日も『躊破(ちゅっぱ)史』の授業が行われていた。


「えー、つまりこの2062年に躊破様が人類史上初めて、世界制服を果たしたことになります。今でもそれを果たした人は躊破様ただお一人なのです。しかし翌年──」

 

 『躊破史』とはこの時代では受験科目であり、大学受験の歴史選択は日本史、世界史、躊破史の三つから選ぶようになっていた。そして"龍凰院躊破"とは世界史でも日本史でも登場する程の所謂"歴史の偉人"であった。彼は正にその時代の渦であった。その時代の人も300年以上たったこの時代でも彼は"主人公"だったのだと思わざるを得ない、濃い人物であった。その"主人公"は現代で毎年、毎年トラブルに巻き込まれ続けていた。そのトラブルは幅広く、常識では考えられない事案もしょっちゅうであった。例えば、テレビで有名になったり、世界の危機を救ったり、未来に飛んでしまったりとか──。


「えぇー!なんか俺が皆の前で紹介されてる!」

 廊下から顔を出し、いきなり大声の授業への野次が聞こえてきた。

「な、なんだね君は」

 躊破史を教えていた先生は手を止め廊下から顔を出してる若者を見る。

「何これ、躊破……史?俺の授業ってこと?」

 高身長、整った容姿、今の時代に合わないファッションをした彼は齢21の龍凰院躊破だった。

 ざわざわと教室が騒々しくなる。女子は見とれ、男子もヒソヒソと彼を見ながら話し合う。先生も不審者かと思ったが、何十年も龍凰院躊破について研究してきたからこそ確信する。彼は本物だと。

 

「な、なんで、ちゅ、躊破様がこの時代に…」

 先生は手に持っていた躊破の時代には存在しない機材を落とし、震える声で躊破に問う。

「それは、うーん、なんか、俺にもよくわからないんだけど、」

「躊破サマーーー!」

 廊下の奥から躊破を探しているような声が聞こえる。

「やべ、(まこと)だ」

 そう言った躊破はその場を去る。そしてその後から執事風の格好をした人が走り抜けた。

「あれは、真様……!」

 躊破史に頻繁に出てくる、躊破の腹心と謳われている(あさ)(まこと)。300年以上前に死んでいるはずの人物である。

「一体、どういうことだ…」

 この未来の世界でさえ、時を超える術はまだ誕生していなかった。それ故先生は理解不能の状態に陥っていた。しかしすぐに先生は開き直る。常識を前に躊破を理解することなど不可能。それは何十年も躊破について研究して何百回も思ったことであった。先生は落としてしまった機材を拾い上げる。そして深呼吸して口を開いた。

「皆さん、授業を、再開しますよ」

「せ、先生今のって…」

 生徒達はまだ混乱状態。当たり前のことである。

「躊破様が救って下さりに来たんですよ」

「え?」

 生徒達がキョトンとする。

「時代はきっと、変わります」

 先生は自分の首の物心ついた時から嵌められているリングを撫でながら言った。そして同じリングを身につけている生徒達をじっと見つめた。

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