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あなたと合理的なロマンスを 過去の陰影 2


 アマンダより2歳年上の彼は、家柄、容姿、資産、才能とほぼすべてに恵まれたと言ってもいい、ある意味大変嫌味な存在だ。男爵という身分の低さがネックではあるが、そこはアシュフォード侯爵家三男

という出自がある程度カバーしてくれる。そんな彼には、意外なことに未だ婚約者がいなかった。かといって、浮ついた噂があるわけでもない。 


 確か、実家の侯爵家は大規模な製鉄所を運営していたはず――――そこまで考えて、アマンダは、ふと彼()の思惑に気付く。5年前、鉄鉱山で目論見を外された侯爵家が、ここで挽回の機会を窺っている――――そう思った。

 クライド自身は、学生時代に起業した服飾生地のデザインから紡績業を起こした。以後、カーテンや内装材のファブリック関連、家具や馬車などの木工事業と、順調に事業を発展させてきた。それが5年前、それまで実家とは距離を置いてきたのに、突然に鉱山の競売に参加した。それでもリオン商会との連携を逃してからは、すっかり鳴りを潜めていたのに、鉄道事業が本格的に動き出すと見るや、どうやら再び実家である侯爵家のために動き出すつもりらしい。

 彼自身は男爵だが、アシュフォードは侯爵家。対する此方は伯爵家だ。おまけに、それなりに権勢のある侯爵家となると、本格的に対峙するには、少々厄介だ。内心ため息を吐きながら、表面上は至ってにこやかに会話する。


「大丈夫ですわ。皆さま紳士でいらして、気持ちよくわたくしのお奨めを受けてくださいますの」

「もちろん。ですが、悪評が立つと、悲しまれる方がおられるのでは?」

「悪評?」

「男というのは見栄っ張りなので、常にレディよりは強くありたいと願うものなのですよ」

「まあ。意外ですわ」

 アマンダは、さも驚いたというように目を瞠って見せた。実際、百パーセント演技というわけでもない。続いて秘密めかして、少し声を潜めると、囁くように問いかけた。

「アドラム卿は、もっと心の広い方と思っておりましたのに」

 目の前にいるこの男と話していると、どうしても、()()()()()が顔を出す。真意を隠しながら問いかけ、相手がそれを読み取って答えを返し、同じように再び間いかける――――()()()()()()()()()()()()()――――――そんなことを考えながら待つ、息詰まるような時間。


 やはりこの(ひと)は、よく似ているわ―――――改めて、そう思った。



 

 

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