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あなたと合理的なロマンスを 愛の結実、騒動の幕開け 2


 初夏のさわやかな風が通るテラスで、華やかに彩られた庭園を見ながら、二人の女性がティータイムを堪能していた。時候のあいさつを交わし、近況を語り合うと、やや年下に見える方の女性が遠慮がちに問いかける。

「セルマン様は、今訪問中の隣国の使節団と、どうしても外せない会談があって――――」

「いいのよ。今回は、私も急に来たのだから。だけど、ねヴィアンカ。私たちは姉妹なのだし、あまり仰々しくなくてもいいんじゃないのかしら、と思ったのよ」

 優しく微笑みながら、どうかしら、と問いかける。

「もちろんですわ!お姉さまがいらっしゃるなら、私、いつでも大歓迎です!先触れなんて、――――そう、当日でも構いません」

 嬉しそうに顔を輝かせる妹を見ながら、やはり今までの距離感を気にしていたのだな、と申し訳ない気持ちが募る。それでも、アマンダとしてはどうしても譲れない事だったのだ。

 王都中を巻き込んだ事件によって成立した、婚約者交代劇。良好だった婚約関係と新旧婚約者が姉妹、それも妹は社交界ではほぼ人物像を知られていない状態で、仕事の関係上、元婚約者同士が全く会わずに済むわけではないという事情。どこをとっても不穏なことこの上ない。一歩対応を間違えれば、あらぬスキャンダルを引き起こしかねない。

 かといって、私的な接触が無いのは不自然。では、どの程度の頻度で顔を合わせるのが適切なのか、そんな面倒な判断を相手(セルマン)に丸投げしたのだ―――――とアマンダは思っていたが、実は、未練があると思われたくない、それが真の理由だ。

 父との会話で初めて自覚したアマンダは、実は自分の執念深さに自分で引いてしまった。でも、()()()()()()()()()


 冬を越して出産をする妹に、お祝いの品として体を冷やさないように、秋口から使えるレースのショールと、冬用のひざ掛けを贈る。ひざ掛けは、輸入されたばかりの、北国の動物の毛を織り込んだ最高級の品で、まだ国内には流通していない新製品だ。

 妹が嬉しそうに感謝を述べるのを見ながら、そういえばこの布を開発したのは、パウエル侯爵家が抱える紡績工場だったと思い出した。



 パウエル侯爵家は、数年前優秀な嫡男を亡くし、彼が起こしかけた事業が頓挫したせいで、事業絡みで結んだ三人の妹たちの縁談が破談となった。ところが、苦境を切り開いたのは意外なことに、侯爵ではなく長女の令嬢だった。 

 彼女は、昔から懇意にしていた旧知の令息の手助けを得て、自領の紡績業をメインに見事に侯爵家を立て直すだけでなく、二人の妹の縁談を整えた。そのせいで、現在アマンダと同じく、やや嫁ぎ遅れの独身ではあるが、彼女が侯爵家の次期当主であることが決定している。あの頭の固い侯爵が、よくぞ思い切ったものだと、社交界で噂になったのを憶えている。

 アマンダが事件を起こした時は、まだ嫡男が健在で、セルマンの婚約者に名乗りを挙げていた。それに、侯爵領の近くには、確か―――――そこまで考えて、三年前の結婚式のことが思い浮かんだ。ついでに、先日見た光景も。

 ―――――ああ、なるほど。当時はわからなかったことが、色々と腑に落ちた瞬間だった。それが、表情に出ていたのだろう。



「お姉さま。何か問題でもありましたの?」

「ええ。そろそろ、私も先のことを考えないとね」

 ヴィアンカの質問に、当たり障りのない返事を返す。

「まあ!それでは、お姉さまの素敵なお話を聞かせていただけるのですね」

 少し怪訝な表情をした妹は、すぐに笑顔で話を合わせてくる。成長を感じて、嬉しくなった。

「まだ早いわ。どうなるかもわからないし」

「お姉さま。なんでも相談してください。私もセルマン様も、お姉さまのためなら何でもします」

「大げさね。でも、そうね。何かあったらお願いするわ、ありがとう」

 真剣なヴィアンカに、くすくす笑いながら答えた。


 実家の問題で、妹を煩わせるわけにはいかない。とりあえず、父が送ってくる釣書を見てからいろいろ考えよう。思わぬ発見があるかもしれないから。

 それにしても。妹夫婦の愛が対外的にも成就するのを心待ちにしていたけれど、結構いろいろ問題かも――――これからのことを考えると、若干、いや、かなり面倒くさい気持ちが湧き起こるのを抑えることが出来なかった。





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