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シュタイナー伯爵 幕引きの後に残るもの 6


 ところが、夫は意外なことを言い出した。

「ロンサール侯爵夫妻は、決して同一意見というわけじゃない」

 なぜ、三人の本音を確認するのに候爵の意見が関係してくるのか、理解できない。もちろん、最終的には両家の当主の意見が絶対だが、まだそこまでの段階ではないはずだ。

 当事者の偽らざる気持ちを確認して、交代した方が良いとなったら持ち掛ける側の当主、つまりシュタイナー伯爵である夫に相談し、条件を提示して相手方との交渉に臨むというのが定石。何もかもを吹き飛ばす事件のせいで、いきなり結果が出てしまったが、本来ならばあり得ないことなのだ。

 ところが、夫は、ますますわからないことを言う。


「侯爵家の二人の弟は、侯爵によく似ていると言われている」

「・・・・ええ」

「だがそれは、夫人に似ていないということでもある」

「・・・・・・」

 そう、それは社交界でも有名な話だ。長男は夫人にそっくり、弟たちは侯爵そっくり。見事にわかれたものだ、と。だからといって、似ていないというのは、極論過ぎる。実際、夫人似と言われるセルマンは、笑った時の目元が侯爵そっくりだし、ふとしたところで類似する点が多い。そこまで考えて、侯爵家の次男、三男を思い浮かべた。


 ――――――なんだか、嫌な予感がする。この先は、聞きたくないような――――――


「彼らに関しては夫人に似ていない、という話しか聞かない」

 心臓が大きく跳ねた。

「カーライル卿は王都で生まれたが、弟二人は、夫人の年齢のこともあって、侯爵領に出産に詳しい医師がいるからそちらで産むと言って、一年ほど領地で過ごしていた。君も知っているだろう?」

 そう、当時社交界でも話題になった。

 当代一流の知識と技術は、首都に集まる。最新情報は言うに及ばず、だ。


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 もちろん、王国でも有数の権力者であるロンサール侯爵の耳に入ることは無かったが、社交界は愚か、医界でも実しやかに囁かれた噂が蘇る。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()―――――

 もし、あの噂が真実を突いていたのだとしたら、侯爵の、あまり優秀とは言えない弟二人に事業を分担させる、という言葉を―――事業に長けたアマンダとの婚姻を、侯爵夫人はどう捉えたのだろう―――――?


「アマンダがロンサール家に嫁いだ場合、侯爵家での立場が複雑になった可能性がある」

 己の行動の意味を悟ったシアーシャが、恐れ戦いていると、夫が冷静な声で指摘してくる。

 侯爵夫妻がまるで反対の思惑を持っていたのだとしたら、アマンダの行動がカギになる。間に挟まれたアマンダは、大変な気苦労を重ねることになったはずだ。


 夫は、自分を気遣ってくれている―――――それはわかった。でも、だからといって、とても万事元通りといくわけはないだろう。

 その意志は、ダドリー夫妻を解雇する、という言葉に端的に表れている。






 




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