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シュタイナー伯爵 幕引きの後に残るもの 4

少し間が空いてしまいましたが、やっと投稿できました。

伯爵夫妻も、侯爵夫妻ほどではありませんが、なかなかに意識のすれ違いがあります。

まあ、お互いに対するちょっとした誤解、といったところでしょうか。

初めはわずかなズレでも、先に進むにしたがって大きくズレていく・・・。現代でもよくある話ですね!

 

「初めまして。シアーシャ・クリサンスと申します。お目にかかれて光栄です」

「アーネスト・ノアル・シュタイナーです。こちらこそ、よろしくお願いします」

 腰を屈め、丁寧にお辞儀をする女性の、所作の美しさに一瞬目を奪われたアーネストは、内心の動揺を完璧に隠して、礼儀正しく挨拶に応えた。

 クリサンス子爵令嬢シアーシャは、なるほど、噂に違わず美しい女性だった。おまけに、金髪に緑の瞳という華やかな容姿ながら、若干淡目な色合いは、アーネストの豪奢でも硬質なアッシュブロンドと、冷たい印象のブルーグレーの瞳を柔らかく見せる効果もありそうで、要するに二人が並べば、相乗効果で更に美しさが際立つという具合。事実、紹介の労を執った男爵は、見惚れてしまって定型の口上もそこそこに、さっさと退散してしまったくらいだ。

 使用人がいるとはいえ、初対面の令嬢と二人きり、というシチュエーションに不慣れなアーネストは、共通の話題として、元婚約者への弔意を示し、当時彼に会うために、度々王都を訪れたことのあるシアーシャと、ひとしきり学生時代の思い出話をする。

 シアーシャにとって、元婚約者とシュタイナー伯爵家の令息が知り合いだったのは、全くの誤算だった。彼女はこの話を断る気で、意図的に間が持たないふりをするつもりだったのが、話し上手聞き上手のアーネスト相手では全くの空振り。会話が弾み、気が付くと、他愛のない話で盛り上がり、お互い笑いあっている始末。しかたなく、❝私には無理です❞作戦に切り替えた。



「ミドルネームも持たない下位貴族なので、高位の方とお話しするのは気が引けてしまって(ミドルネームが無いと、周囲にバカにされてしまいそうで、不安です)」

「ミドルネームなど、愛称のようなものです(お互い愛称で呼べば問題ありませんよ)」

「王都の方が、相応しい方がいらっしゃるのでは(私のような田舎者には無理です)」

「そんなことはありませんよ。なんでも王都の方が優れていると思うのは、間違いです。(僕には、貴女の方が好ましい)」

「ご両親のご意見を聞かれなくてよいのですか(反対されるに決まっています)」

「僕のことですから。心配はご無用です(両親は好きにしていいと言っています)」

「あまり父に負担をかけたくないのですが(相応しい持参金は用意できません)」

「もちろん。子爵が負担に思うことなど、何一つありませんとも。(持参金など不要です)」

「王都の社交界でうまく振舞える自信がないのです(上位貴族の礼儀は知りません)」

 断り切れず、仕方なく臨んだお茶会で、シアーシャは、あらゆるネガティヴキャンペーンを行ったのだが、それもアーネストの次の一言で水泡に帰した。

「貴女のマナーは、僕から見ても完璧ですよ。流石、エメライン侯爵家直伝ですね」


 シアーシャは、思わず瞠目する。何故()()を知っているのか。 

 そんな思いが出ていたのだろう、彼は、ほんの少し苦笑するような表情を浮かべると、口に出してはこう言った。

「仮にも、結婚を申し込もうと考えている女性の家族について、前もって知っておくのは当然の礼儀です」

 

 エメライン侯爵家。それは、シアーシャの祖母の実家だ。

 祖母は、あまり褒められた理由ではなく、地方の子爵家に嫁ぎ、当時ちょっとしたスキャンダルになった。

 彼女は結婚後、家庭内で侯爵家、つまり王都の高位貴族の礼法に拘り、娘と孫娘には厳しく作法を叩きこんだ。その甲斐あって、アーネストはその所作の美しさに目を留めたが、地方に於いてそれは、ただ無用な軋轢を生んだに過ぎなかった。結婚後、ほとんど社交界に出ることもなく過ごしたのもその一因だ。

 即ち、上位貴族からすれば、地方の社交界を見下している、たかが子爵のくせに気取っていると取られ、下位貴族からは、一目置かれると言えば聞こえはいいが、単に距離をとられる理由になったのだ。

 シアーシャが、伯爵家との縁組も可能なくらいの教養と美貌を持ちながら、嫡男とはいえ、態々男爵家を選んだのは、嫁ぎ先で余計な反感を買わないように、との意味合いが強かったのである。


 シアーシャにとって、幼い頃から祖母の厳しい指導に耐えて習得した教養が、初めて認められた瞬間だった。この時彼女は、自分を認めてくれたこの見目麗しい青年を初めて意識した。


 アーネストは、その後、往復三日の距離をものともせずに頻繁に子爵家を訪れた。学業と事業を両立させつつシアーシャとの関係を築き、乗り気でない子爵家の面々を説得するという実に八面六臂の活動を熟して、両家の承諾を取り付けるべく奔走する。

 意外なことに、アーネストの申し出に難色を示したのは、外ならぬシアーシャの祖母だった。

 中央社交界に良い思いのない彼女は、シュタイナー伯爵家のことも快く思ってはいなかった。その理由を熟知していたアーネストは、シアーシャを必ず守ること、彼女に決して()()()()()を悟らせないことを条件に、漸く両家の承諾を取り付けた。()()は、彼にとっても好都合と思われたから、以後約束を守るためあらゆる努力を惜しまなかった。


――――――それが、まさか二十年以上経ってから噴出してくるなどと、考えもしなかったのだ――――――。

 


結構重要、かつ表現がビミョウなパートなので、慎重に進めていますが、またあとで、改稿するかもしれません。

若干時間がかかってしまいますが、いよいよ最終段階なので、当初考えた結末に向かって頑張ります!


どうぞよろしくお願いします <m(__)m>


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