表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/94


 ダメ押しとばかりににっこり笑ったアマンダを見て、オスカーは、頬を引き攣らせた。おおかた、妹の死を笑顔で語るか、というところだろう。

 だけど、仕方がない。アマンダにとって妹の死は、常に身近な問題だった。

 最も、ここ数年は、彼女にはひた隠しに隠されていたから、彼女が妹の発作を見ることはほとんどなかった。おそらく、アマンダはヴィアンカが健康になったと思い込んでいる、と周りは信じているはずだ。大丈夫、バレていない、と。


 本当のことを知っているのは、エレナと、目の前の彼(オスカー)だけ―――ということにしておこう。今のところはそれでいい。

 彼は、遠からず、全ての真実に気付く。その時、私たちは、どうするのだろう――――アマンダは、そう思った。

 考えていたら、オスカーと目が合った。胡乱そうに彼女を見ている。思わず、頬が緩みそうになって、アマンダは、気を引き締めた。

 彼には、知る権利があるし、告白するのは吝かではない―――アマンダは、慎重に口を開く。余計なことを言わないように、頭をフル回転させながら。


 あの日は、私の誕生日だったのよ。だから、二人で街に出ましょうってお願いしたの。()()()()二人だけのデートね。

 ランチ、お芝居見物、街歩き・・・ロンサール様は、素敵なレストランを予約してくれたけど――――――。


 ランチ後のティータイムに、ロンサール様に手紙が届いて。急用だって言って、慌てて出て行ってしまった。お使いの従僕を、護衛代わりにって私に付けて。

 うちの従僕だったのよ。新しく雇ったから、わからないと思ったみたいだけど、使用人を把握するのも、女主人の役目だって言われていたから、私は知っていた。



 あの日は、私にとって、最後の賭けだった。無事にデートができれば、あのまま婚約を続けて結婚する。ダメだったら、()()()()()()使()()()()()()()()婚約を解消する。

 だから、絶対に妹には知られないように出かけたのに、無駄だった。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()。 


 そうね、誰かがあの子に知らせたのかもしれないけれど・・・それは、あんまり関係ないわ。だって、あの日私が賭けたのは私たち三人の運命。少なくとも、私はそのつもりだった。

 ロンサール様と、私たち二人。どちらが運命の相手なのか、間が悪いのは、誰なのか。見事に負けてしまったから、潔く引くしかなかった。

 ロンサール様は、婚約解消なんて考えられない、結婚するのは私しかいないってお父様に言ったみたいだけど。


 だけど、ね、例えば、よ。私が大けがをして生死をさまよった時、ヴィアンカが発作を起こしたら―――ああ、出産のときでもいいわね―――ロンサール様は、どっちに付き添うと思う?

 私を優先して、あの子が死んでしまったら――――――?

 逆にあの子を優先するなら、あの子には両親とロンサール様がいるけど、誰が私と一緒にいてくれるの?それが最期の時だったら、私は、何を思うのかしら。

 そんな偶然、あるわけないって皆言うだろうけど、もしそうなったら、だれが責任を取ってくれるの?どうやって?


 強い眼で見つめられたオスカーは、何も返すことができない。こんな問いに、答えられる奴がいるのか、そう持った時、ふいに閃いた。

 アマンダは、()()()()()()使()()()()()()()()婚約を解消する、そう言った。

 なら、彼女は、どんな手段を使ったのか。

 そう思ったら、我ながら剣呑な声が出た。



「その頬の傷は、()()やったんだ」

 気づいたら、そう問い詰めていた。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ