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シュタイナー伯爵 幕引きの後に残るもの 2

シュタイナー伯爵夫妻の話に突入しました。

じつはこの回は、夫妻の馴れ初めに係る話で、本編には関係ありません。

こんな事情、というか背景があるんだよ~くらいな感じです。なので、❝ちんたらしとらんで、さっさと話を進めんかい!❞と思われる方は、飛ばしてしまうことをお勧めします。

逆に、何でこの二人こんなんなんだ!?と思う方は、読んでも無駄だった↓↓とならずに済むかも?です。


 人々の生活が便利になるにつれ、王国の身分制度はかなり緩和されてきている。

 昔は、貴族の爵位は上から順に、公候伯子男のほか、準貴族として一代限りの男爵、準男爵、騎士爵が存在したが、銃や大砲などの武器が発達するにつれ、戦闘での武功は個人の力量に頼るものでなくなり、騎士と呼ばれる者は姿を消した。それと同時に、一代限りの爵位を授与される者も久しくいなかったため、現在、準貴族と呼ばれる者は存在しない。それでも一定の縛りが残っていて、それは、名づけに顕著に表れる。

 昔から、上位貴族である伯爵家までの生まれの者はミドルネームをつけるが、子爵、男爵家においてはつけないという慣習があった。あくまでも慣習であり、法律で決められているわけではないが、依然廃れる気配もなく、厳然と存在している線引きである。人間とは、思いのほか、自分の優位性を確認したがる性質を持っているらしい。

 シュタイナー家は伯爵家であり、言うまでもなくミドルネームを持っていたが、地方の子爵家出身である伯爵夫人シアーシャは、ファーストネームとファミリーネームのみとなり、そういった意味では夫と娘達とは明らかに違った。

 伯爵夫妻の馴れ初めは、知り合いを介しての紹介、所謂見合いである。が、それは表向きのことで、実際には、伯爵自身がそれとなく水を向けて、仕組んだものだ。二人は、本来ならば出会うことの無い境遇だった。


 地方には、中央に及ばずともそれなりに教育機関が存在し、その地で収入が得られれば、態々中央まで出向かずとも事足りる。令息ならば箔付けと人脈づくりを兼ねて王都の学院へ通うこともあるが、王都に縁があるならいざ知らず、令嬢に大金をかけてそこまでするのは、裕福かつ、近隣で満足な結婚相手が望めない、または、婚約者が王都の学院に入学した場合などが大半だった。

 地方の、それなりに裕福な子爵家の令嬢だったシアーシャには、男爵家嫡男の婚約者がいた。彼は王都の学院に入学したが、彼女は地元に残った。ところが、卒業して領地に戻った矢先、婚約者が狩猟祭の流れ弾に当たり、落馬して死亡。射手は特定できず、彼女は婚約者を失ってしまった。

 

 一方、当時令息だった伯爵は、学院でシアーシャの婚約者と知り合いだった。選択する科が違ったため、あまり接点は無かったが、学院行事で協力することがあり、その際に故郷に婚約者がいることを聞いていた。

 親しい関係ではなかったが、卒業後まもなく、風の便りに訃報を聞き、ふと、妹しかいなかった男爵家の後継を思うと同時に、彼が愛おし気に話をしていた婚約者は、どうなったのか気になった。それというのも、結婚間近で貴族家嫡男との婚約が無くなったのでは、先が思いやられるからだ。おそらくこれから結婚相手を探すとなると、かなり難航する。地方では猶更。そこまで考えて、まあ、自分には関係ないことだと、結論づけた。


 それからわずか一年後、事業の関係で訪れた、地方の伯爵家で開催された夜会で、件の男爵令息と、その婚約者だった子爵令嬢の話を聞くまでは。





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