シュタイナー伯爵 幕引きの後に残るもの 1
とうとう結の部分に来ました!
ここが纏まらないと、見事な駄作になってしまうから、頑張ります。
文章力が足りないような気もするのですが、無い知恵振り絞って果敢に挑戦!です。
シュタイナー伯爵夫人シアーシャは、本日最後の客人が帰ったという連絡を受けて、ほっと一息をついた。時刻は既に夕方に近く、初秋の傾き始めた陽が、室内に長くなりつつある影を落としている。来客は二人。一人は半年前、事件に巻き込まれた長女の恩人の青年。もう一人は長女の元婚約者で今は次女の婚約者、兼、夫であるシュタイナー伯爵の共同事業者。どちらも自分が直接関わりはしなかったが、正直言って屋敷に滞在しているだけでも、神経を擦り減らすに十分すぎる相手だった。
この半年間、気が休まることがなかった。その原因が自分の行動にあることはわかっているから、これは、自業自得だということも理解している。それでも、こんなことになるとは、思ってもみなかった。後悔先に立たず、とは正しくこのことだ――――――。
椅子の背にもたれ、何度目かの重い溜息を吐きだして、部屋を見回す。
伯爵家の邸は、古く由緒ある主棟を中心に、先代が増築した西翼と東翼が広がり、代々当主夫妻の主寝室に接がるこの部屋は、女主人の居間に相応しく主棟の一番眺めの良い位置にある。
華やかで、その分軽やかな流行とは違い、落ち着いた、磨きこまれて深い艶のあるマホガニーの良さを、生かした室内。今となっては手に入らない、名工が手掛けた作品に囲まれている。些か由緒が重く感じられるような部屋だが、彼女は、この部屋が好きだった。
思えば、この屋敷は、伯爵家そのものをよく現している。過剰な装飾を廃しながらも、質素ではなく、全体的にそれなりの威厳と気品を備えている主棟。近しい親族のために調えられた華やかな東翼と、客間を主とする、近代的な西翼。様々な要素が混在することなく、程よい間隔で配置され、そのバランスの良さは一種の様式美とさえ思えるほどだ。
よく手入れされた庭を眺めながら、そろそろこの部屋を出る頃合いかと漠然と考えていると、扉を叩く音が聞こえ、入室を許可する返事をした。
侍女が、晩餐の準備の時間を告げるために来たのかと思いきや、入ってきたのは、夫だった。
「今日の気分は、如何かな」
窓から差し込む陽を受けて、見事な銀色の髪が微かに朱みを帯びて輝いた。
いつものように穏やかに話しかけてくる夫の顔を見ながら、この夫は、どんな時でも変わらないのだな、と感心しながら応えた。
「ええ。今日は、ずいぶんいいようですわ」
嘘だった。もうずっと、眠れない日々が続き、頭痛が治まらない。特に今日は、来客のせいで気持ちも落ち着かず、動悸や眩暈がする始末。
それでも、いつまでも、体調不良等と言ってはいられない。夫ほど腹芸は得意ではないが、自分だって、シュタイナー伯爵夫人として、長年社交界を渡ってきた。少なくとも、夫は、底意地の悪い貴族夫人ほどたちが悪くはないはずだ。夫に負けず劣らずの穏やかな表情を作って微笑む。
「それはよかった。僕は、気分が優れない時に大切な話は避けるべきだと思っているんだよ」
伯爵は、妻をいたわる言葉を告げながら、さりげなく付け加えた。
「判断を誤ってしまうといけないからね」
その言葉を聞いた夫人は、やはり、この部屋から出るべき時が来たようだ――――そう思った。
思わせぶりなセリフが得意な伯爵、最愛の夫人にもあまり見せない一面を披露します。
可愛い子には旅させろ、は夫婦間でも有効だと遅ればせながら気づいたようです。
幕引きの後に何が残るのか、気になるところです。
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